矢倉 第88期棋聖戦決勝トーナメント 広瀬章人-糸谷哲郎 棋譜検討(△急戦矢倉) | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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【棋譜DB】
第88期棋聖戦決勝トーナメント 広瀬章人-糸谷哲郎

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先手:広瀬章人 八段
後手:糸谷哲郎 八段

▲7六歩    △8四歩    ▲6八銀    △3四歩    ▲6六歩    △6二銀
▲5六歩    △8五歩    ▲7七銀    △3二金    ▲5八金右  △6四歩
▲6七金    △6三銀    ▲2六歩    △4一玉    ▲2五歩    △7四歩
▲7八金    △7三桂    ▲4八銀    △6二金    ▲2四歩    △同 歩
▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛    △4二銀    ▲6九玉    △8一飛
(下図)

矢倉には急戦左美濃が流行している昨今だが、
左美濃を良く思わなければ、上図のように進むのも一案だろう。

左美濃は攻められる前の一瞬の堅さが素晴らしいし、
カニ囲いは逃げるという要素が加わる点が捨てがたい。
将来的には分からないが、今のところは甲乙付けがたい。

△6二金△8一飛は、▲4六角の筋を警戒した意味と、
将来の△6一歩を作ったものと推察される。

上図以下
▲9六歩    △1四歩    ▲1六歩    △9四歩    ▲3六歩    △5四銀(下図)

ここで▲3七銀なら△6五歩に▲同 歩と取る選択肢も生まれるが、以下
△7五歩▲同 歩△6五桂▲6六銀△8六歩▲同 歩の局面が怖い(下図)

△6六角▲同 金△5七桂成や、
△8六飛▲8七歩△6六飛▲同 金△7七歩など、
嫌な筋が盛り沢山である。

△6五歩に▲4六銀ならこうはならないけど、
それは本譜に合流してるので(笑)

△5四銀以下
▲5七銀    △6五歩    ▲4六銀    △4四歩(下図)

▲4六銀には△4四歩が習いある形という感じ。
次に△4五歩として、銀を追いながら角筋を通す意味。

▲5五銀とぶつける手はあるけど、△6六歩▲同 銀上△4三銀引で、
先手の駒が前のめりになるのかな。

他の手としては▲3七桂もあるけど、剛直流ですか。
上手く行けば駒が前進していけそうだけど、
リスクも大きそうな手なので、余程準備が無いと指しにくい。

上図以下
▲5五歩    △4五歩    ▲5四歩    △4六歩    ▲同 歩(下図)

色々書いたけど、▲5五歩が部分的な定跡で、
銀の取り合いは自然な進行である。

上図ではジッと△5四歩も有力。
△5五銀と△8六歩▲同 歩△8五歩の両狙いだ。
ただ、6筋を伸ばされて▲6三歩成△同 金▲7二銀が見えている事と、
5筋の歩を取らせた方が△5一歩が生じる事があって、
本譜の進行になったと思われる。

上図以下
△5五銀    ▲6五歩    △8六歩    ▲同 歩    △6五桂    ▲6三歩(下図)

ただし、▲6三歩と叩けるのが大きく、
上図は少し先手がやれていると思う。
飛車金の形を咎められている他、
△4一玉に近いところを攻められているので。

「これなら左美濃の方が良かったかなー」
と、糸谷先生が思ったかどうかは定かではないが。

上図以下
△5二金    ▲7三銀    △6一飛(下図)

▲7三銀のところで▲2四歩△同 歩▲2五歩は、
△6六歩と打たれて先手が危険。
▲7三銀は△6一歩と打ってくれないかな、という意味もある。

そこで本譜は△6一飛と頑張ったんだけど、
ここは何か先手に良い手が無いんですかねぇ。

2筋にこだわるのなら、
▲7二銀不成△5一飛▲2四歩△同 歩▲2五歩△同 歩
▲2四歩(下図)

しかし、△5四歩と戻されるくらいでも大変ですか。
何故か分からないけど1筋の突き合いが入っているので、
▲2五飛に△1三桂▲2八飛△2六歩で受かっちゃいますね。

歩を大量に渡すと△6六歩と△8七歩が来るに決まっているし、
7二の銀もイマイチ利いていないので、指しきれないかー。

本譜は△6一飛以下
▲6二歩成  △同 金    ▲同銀成    △同 飛    ▲5三歩成  △同 銀
▲5四歩    △4二銀    ▲5三金    △9二飛    ▲6六歩
(下図)

でも、ここまで進むと先手があまり自信が無いですね。
▲5三金よりも△5七歩が厳しくなる恐れもあるし、
△5二歩と受ける余地もあるわけで、
後手の5筋の歩が捌けた点が大きく見えます。

ただ、玉の安全度は先手なので、
勝負の面では勝ちやすいという判断も下せそう。

上図から、筋だけで追えば△8七歩と叩くんですが、
▲9七角~▲8五歩で活用されてしまうかもしれない。
また、△7七桂成▲同 角△8八歩も有力ですが、
▲7九玉△8九歩成▲同 玉で、却って深くなってしまうかもしれない。

色んな「かもしれない」がある内は安心は出来ない訳で。
そんな時、先手の玉が堅く見えたら焦る訳で。

上図以下
△7七桂成    ▲同 角    △5七歩    ▲7九玉    △8七歩    ▲同 金
△5八歩成    ▲同 飛    △4七銀    ▲2八飛    △1三角
(下図)

まぁ、実際に糸谷先生が焦ったかどうかは兎も角、
△8七歩と形を乱して、壁角を活用する△1三角には、
玉形を互角以上にしようという発想が感じ取れる。

上図以下
▲2四歩    △同 角    ▲5七金(下図)

しかし、その瞬間に「来い!」とやるのが勝負術ですか。

△5六銀成は▲同 金△同 銀▲2四飛△同 歩▲4四桂で、
先手玉の方が安全なタイミングで決戦になる。
それは、後手の意図する展開ではないと見ているのだろう。

上図以下
△3六銀不成▲6五歩    △6六歩    ▲8八玉    △5六歩    ▲6六金
△4六角    ▲3七歩
(下図)

△3六銀不成と後退させて▲8八玉
先手玉は小康を得た。

▲6六金▲3七歩と強く戦えては、
先手良しと思うがー・・・

上図以下
△2七銀不成▲同 飛    △6八銀(下図)

△7九角打を作り、数ある未来から「▲9七玉」を消す。
しかし、△2七銀不成の代償も大きく、先手に勝ちがあるはず・・・

上図以下
▲5五金    △7七銀成  ▲同 桂    △7九角打  ▲8九玉    △8八歩(下図)

ここで▲同 金とは取れなかったのだろうか?
△6八角成に▲8七銀と受けてさ。

しかし、5三に金が落ちてるからなぁ。

上図以下
▲9八玉    △5五角    ▲5二銀    △同 飛    ▲同 金    △同 玉
▲6四桂    △4三玉    ▲4九飛    △3三玉
(下図)

△8八歩に▲同 金と取るよりも、
▲9八玉と逃げた方がハッキリ安全だから、
実戦ならこう指すよね。

でも、後手に△5五角と取られたのが大きかったのかも。
手順を尽くして王手角取りをかけたけど、
上図で▲7九飛と取る余裕は無さそうだ。

上図以下
▲4一銀    △4六角上    ▲5二桂成  △8九歩成  ▲3二銀成  △4四玉(下図)

際どいけど、後手勝ちですか。

こういう将棋を勝つって、尋常じゃなく腕力があるよね。

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