向かい飛車 ダイレクト向かい飛車 ▲6五角型 一歩得VS持ち駒金01 | 将棋・序盤のStrategy ~ 矢倉 角換わり 横歩取り 相掛かり 中飛車 四間飛車 三間飛車 向かい飛車 相振り飛車 ~

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オールラウンドプレイヤーを目指す序盤研究ブログです。最近は棋書 感想・レビューのコーナーで、棋書の評価付けもしています。

初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △8八角成 ▲同 銀 △2二銀(下図)

上図で先手が考えなくてはいけないのは、
1.一手損角換わりとダイレクト向かい飛車の可能性がある事。
2.ダイレクト向かい飛車に▲6五角と打つなら、以後どの変化を選ぶか。
という二点である。

例えば、上図から▲7八金型にすると、
一手損角換わり にシフトされて▲7八玉型が組めなくなるので、
1の条件を満たす事が出来なくなる。

では2についてはどうだろう?

そのためにはまず、「一歩得VS持ち駒金」について考える必要がある。

△2二銀からの進行1.
▲4八銀 △3三銀 ▲6八玉 △2二飛 ▲6五角 △7四角
▲4三角成 △5二金左 ▲同 馬 △同 玉 ▲7五金 △8四歩
▲7四金 △同 歩 ▲4六歩 △6二玉 ▲4七銀 △7二銀
▲7七銀 △7一玉 ▲5六銀 △8二玉 ▲4五歩 △4二飛
▲4八飛
(下図)

この進行は、木村-渡辺明戦 (△2二銀のところで△4二銀としている)。

△7四角と打ち、わざと▲4三角成と成らせての△5二金左が、
もはや常識となった切り返し(△5二金左のところは△5二金右・△4二金もある)。

これに対し、▲同 馬▲7五金と角を殺し返すのが今回の主題。
一歩得した先手と、持ち駒に金を手にした後手、という珍しい構図になる。

「歩の無い所に歩を伸ばせ」は、将棋の基本的考え方。
上図▲4八飛は、そういった意味で非常に理に適っている。

本譜は△5四金!と辛抱したが、
金を手放してしまっては歩損だけ残り、先手快勝となった。

参考サイト:
王位リーグ1回戦、木村八段戦、明日朝日杯。 (渡辺明ブログ )

ここから分かるのは、
「先手が4筋を伸ばす手が間に合うと、後手苦しい」という事だ。

そこで、後手の対策の一つとして、
▲7五金
の瞬間に△4二飛と回る手が考えられる(下図)。

この局面でのポイントは、
「△4二飛と回られても、先手は▲4六歩と突けるかどうか」である。

もし▲4六歩を諦めると、上図以下
▲5八金右 △6四歩 ▲7四金 △同 歩 ▲7八玉 △6二玉
▲2五歩 △7二銀 ▲7七銀 △7一玉 ▲3六歩 △8二玉
▲3七銀 △5四角(下図)

「一歩得VS持ち駒金」では、△5四角が好点になる。
良いタイミングでこの角が打てれば、後手ペースだ。

上図は次に△3五歩▲同 歩△2七金を狙っており、
先手が上手く対処できるかどうかの勝負になる。

参考棋譜:森内-伊藤真戦豊島-澤田戦

上記のように進んでも、後手玉が薄いので難解な形勢だけど、
後手に主導権がある戦いにはなる。

▲4六歩と突く将棋にしたければ、
△4二飛の瞬間に▲7四金△同 歩▲4六歩とする必要がある(下図)。

▲4六歩に△同 飛は▲5五角で先手良し。
▲5八金右と△6四歩の交換を入れてしまうと、
▲5五角が消滅してしまうのだ。

▲4七銀型を作られてしまうと、
上記のように▲4八飛から4筋を攻め込まれるので、
後手としては何とか反発していきたい。

上図からは、
1.△5五金
2.△5五角
の二手段が考えられる。順に見ていこう。

1-1.△5五金

△5五金はゴツい一手だが、有力な手段の一つ。
▲4七銀△4六金▲同 銀△同 飛▲5五角には△4九飛成がある。

片上-脇戦 では上図以下
▲5八金右△4六飛▲2五歩△4二飛と進行(下図)。

ここで▲4七歩と打つのはありえない。
ここに歩を打つなら最初から▲4六歩と突くな、という手だ。

問題は、上図から▲2四歩△同 歩▲2五歩の継ぎ歩が利くかどうかだが、
△4四角が好点の角打ちだ(下図)

上図から▲2四歩と取ると、
△2七歩▲同 飛△2六歩▲2八飛△2二飛で、後手もやれそうな局面だ。
ただ、先手も悪いわけではなく、以下▲4七銀△2四飛▲7八玉で激戦だと思う。
▲2五歩と打つ手があるので、2筋は無条件で破れない。

片上-脇戦 は上図から▲7八玉と自重し、
△2二飛▲5六歩△同 金▲6五角と進行。
これも難しいと思うが、少しずつ後手が良くなっていく印象だった。

また、▲5八金右には△4六金もある(下図)

先ほど「▲4七歩と打つのはありえない」と書いたが、
△4六金は「▲4七歩を打て!」という手で、
ハッキリした良さを求めにいった印象だ。

先崎-杉本戦 では、▲7八玉を選択。以下△4七歩で下図。

後手玉は薄いので、▲4三歩も気にしなくてはいけない。
△同 金▲4七銀△同 金▲同 金△5四金▲4六歩はやや後手自信無しなので、
△同 飛▲3二角△4八歩成▲同 飛の進行だろうか。以下△4五飛か△4七歩でどうか。

先崎-杉本戦 は▲5九銀(下図)。

4筋をへこませて後手好調を思わせるが、
攻めが無いと自陣のまとめ方に困る。
先手は金銀4枚のスクラムを組みやすく、
▲7五歩の攻めも見ているので方針は分かりやすい。

という訳で、杉本先生は上図から△7三桂。以下
▲7五歩△同 歩▲7四歩△6五桂▲7三歩成(下図)

ここまで来ると、感覚的には藤井システムに近い。
形勢は非常に難しく、互角に近いのではないかとは思うが、
と金が大きいので先手の方針は分かりやすい。
△5七桂成と成ると▲7七銀が生じるので、後手は気をつけなくてはならない。

1-2.△5五角


1.△5五金も有力だったが、非常に激しい変化になる事が分かった。
形勢は良い勝負ながら、居玉が祟りそうな進行も多かった。

2.△5五角は局面を緩やかにする狙いを含んでいる。
金と違って4筋を突破する事は出来ないが、
自陣角で先手陣を牽制できれば、というところだ。

上図からは▲7八玉△4六角▲5八金右まではこう進むかな、という感じ(下図)

ここからは構想勝負で、何とも言えない局面。
プロの実戦を2例紹介しておく。

参考棋譜:行方-片上戦船江-福崎戦


▲4六歩と突いて△5五金・△5五角を誘う指し方は有力で、
個人的には先手を持ってみたいと考えている。
プロ間でもこの形は引き続き指されていくと予想されるが、
突いた歩が取られるのを不本意と考える事も一応出来る。

そこで考えられたのが次の順。

△2二銀からの進行2.
▲3八銀 △3三銀 ▲7七銀 △2二飛 ▲6五角 △7四角
▲4三角成 △5二金左 ▲同 馬 △同 金 ▲7五金 △4二飛
▲7四金 △同 歩 ▲4六歩
(下図)

▲3八銀・▲7七銀型が、上図▲4六歩を主体にした駒組みだ。

▲7七銀と上がる事で△5五角が消滅しているし、
△5五金と打つのも、▲4七銀△4六金▲同 銀△同 飛▲5五角の時に、
居玉にしている事で△4九飛成を受けている。

▲3八銀型にしているのも巧みな点で、
▲4八銀型だと△7五歩▲同 歩△5四角とされて、
△8七角成と△2七金が両天秤になる。

ここまで用心されると後手から手を出す事は出来ず、
△6二玉から駒組になっていくが、
▲4七銀型に組めれば先手十分だろう。

参考棋譜:村山慈-宮本戦

しかし、良い事ばかりという訳にはいかない。
△5二金左のところでは△4二金が有力な手法だ(下図)

▲4二同馬としてしまうと△同 飛が幸便なので、
▲6一馬△同 玉▲7五金と進める(下図)

上図からの後手の狙いは、
4筋の歩が伸びてくる前に2筋から動く事。
そのような進行の時、▲7七銀が気の利かない手になっている。

よって、進行1.のように、
▲4六歩を取らせる進行が主流になるだろうと予想している。


次回は、後手が△4二金から2筋を狙う指し方を考察してみる。

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