「右玉浪漫飛行」(その23・最終回)と将棋倶楽部24近況 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。藤井聡太竜王の棋王奪取と六冠達成の日にこんなイラストを描いてみた雁木師でございます。

今日は前半は「右玉浪漫飛行」の最終回。後半は将棋俱楽部24の近況報告を行いたいと思います。長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

 

まずは「右玉浪漫飛行」から。今回もDJ.ミギタマとアオテツと一緒に進めていきたいと思います。

2人についてはこちらから。

前回のおさらいをしたいという方は下記リブログ記事からご確認いただけます。

それでは、「右玉浪漫飛行」の始まりです。

 

※なお、このストーリーに出てくる人物、出来事などは一部を除き架空のものです。実際の人物、出来事などとは一切関係ありません。

DJ.ミギタマ(以下ミ)「DJ.ミギタマの右玉浪漫飛行~!!」

~♪(オープニングBGM)

ミ「将棋ファンのみんな、元気かい?DJ.ミギタマだ」

アオテツ(以下ア)「こんばんは。アシスタントのアオテツです。よろしくお願いします」

ミ「アオちゃん…。この番組も今日で終わりなんだよね。ミギタマはさみしいよ」

ア「そうですね。この1年間、右玉を楽しくかつがっつりと学んできましたので、ここで終わるのは私もさみしい限りです」

ミ「本当につらいよね。せっかく、リスナーのみんなと楽しく学べたのにここで終わるなんてね」

ア「ミギタマさん、前を向きましょう。最後の放送です」

ミ「そうだね。じゃあ早速、本題にいってみよう」

 

最終回「角交換振り飛車との戦い 阪田流向かい飛車」

ミ「で、アオちゃん。最終回のテーマは何だい?」

ア「はい。角交換振り飛車と右玉の戦いを見ていきたいと思います」

ミ「角交換振り飛車…。10年近く前に流行した記憶があるね」

ア「従来の振り飛車は角道を止めてから飛車を振って、穏やかに囲うのが常識とされてきました。その常識を覆したのが角交換振り飛車です」

ミ「昔は『振り飛車には角交換』と呼ばれていたけど、その格言が通用しないのかと言わせた戦法だよね」

ア「今回は、一風変わった角交換振り飛車と右玉の戦いを見ていきたいと思います」

ミ「一風変わった?どんな将棋なのかワクワクするぜ!!」

ア「なお、今回の棋譜はラジオネーム『ハヤトパパ』さんから送られた棋譜です。なんでも、ミギタマさんをよく知る方だそうですよ」

ミ「『ハヤトパパ』さん?どんな人なんだろう?とにかくありがとうございます!!」

ア「心当たりはありますか?」

ミ「いやー、ラジオネームだけでは分からないな。『パパ』ってネームが付くということは、今回はお子さんの将棋なのかな?」

ア「どうもそうみたいですね。いただいたメッセージを抜粋したいと思います」

 

ー(前略)いつも息子とポッドキャストで聴いています。息子はこの番組が始まったころに将棋を始めました。最近、息子が将棋センターで『変なおじいさんに負けた』と言って泣きじゃくりました。その将棋は私も見たことがない戦型で、どう対応していいのか分かりませんでした。そこで、この番組で息子の将棋を見ていただきたいのです。幸い、お相手の方は棋譜を取ってくださったので、その棋譜を送ります。(後略)

 

ミ「『変なおじいさん』に負けたか…。そのおじいさん、どんな戦法を使ったんだろう?」

ア「ミギタマさん、それよりも1年近く前に将棋を始めたお子さんが右玉を使うと思いますか?」

ミ「うーん。ふつうは棒銀や四間飛車から入る子が多いと聞くけど、1年経たないうちに右玉をマスターしたということなのかな?」

ア「というわけで、その将棋を検証していきます。今回は、初手から指し手を見ていきます」

 

※今回の題材の将棋は先週の私の将棋ウォーズの内容から。持ち時間設定は「10分切れ負け」。先手番が私です。

 

初手からの指し手

☗7六歩 ☖3四歩

☗2六歩 ☖3二金

☗2五歩 ☖3三角

☗4八銀 ☖6二銀

☗3六歩 ☖7四歩

☗1六歩 ☖7三銀

☗7八金

 

(1図)

 

解説:結論から言えばこの将棋は、後手が陽動振り飛車の要領で阪田流向かい飛車に振ったのに対し、先手が右玉に囲ったらどうなるかという内容です。まずは初手からの流れを見てきましたが、1図は一見すると相居飛車の将棋に見えます。

先手は相居飛車用の陣形。角換わりに備えた形です。狙いとすれば右銀を☗3七銀と上がって棒銀か早繰り銀を目指すパターンと、☗4六歩と突いて☗4七銀から腰掛け銀を狙うパターンがあります。もちろん、ここから右玉に囲うケースも可能です。

一方の後手は飛車先を突いていない状態で☖3二金・☖3三角型を形成。右銀は7三に配置しています。このとき、私は相手が「サザンハヤクリ」を目指すのではないかと予想していました。「サザンハヤクリ」とは☖3三金型早繰り金のこと。以前、当ブログでも書籍をご紹介させていただきました。

 

 

ただ、「サザンハヤクリ」を目指すのなら先手から角を交換してくれないと後手の手得にならないと判断し、あえて角交換をしませんでした。先手の狙いとしては、☗3三角成を避けて、角道を止めて雁木もしくは右玉を狙っていく構想でした。おそらく、角交換は後手の手損なのでしないだろうと読んでいたのですが、飛車先の歩を突いてない時点でもっと深く読むべきだったのかと反省しています。

 

ミ「あれれ?角交換振り飛車の将棋だよね」

ア「そうですよ。それが何か?」

ミ「何かって、アオちゃん。後手は飛車を振ってないよ。しかも☖3二金と☖3三角の形はいかにも居飛車しますよって形に見える」

ア「ミギタマさん、後手の飛車先の歩をよーく見てください」

ミ「ん?そういえば飛車先の歩を突いてないね。これはわざとなのかウッカリなのか、それとも…」

ア「あえて態度を保留にしていると思いますが…。とにかくここからの指し手を見ていきましょう」

 

1図以下の指し手

☖8八角成 ☗同銀

☖3三金 ☗7七銀

☖2二飛

 

(2図)

解説:1図から後手から角交換。その後、☖3三金~☖2二飛と振って阪田流向かい飛車の完成です。先手の私は意表を突かれた格好になりましたが、まだ右銀の態度を保留しているのでそこを生かして右玉を決行します。

 

ミ「うひゃー!!阪田流か」

ア「一風変わった向かい飛車、阪田流向かい飛車です」

ミ「確かに覚えたての子供に阪田流は『変』に見えるだろうね」

ア「逆に対局相手の方が子供相手に阪田流で対抗するのはいかがかと思いますが…」

ミ「それだけ『ハヤトパパ』さんのお子さんの右玉を警戒していたのかな?」

ア「さて、この力戦の将棋はどうなっていくのでしょうか?その後の進行を見ていきましょう」

 

2図以下の指し手

☗3七桂 ☖4二銀

☗4六歩 ☖6四角

☗4七銀 ☖4四歩

☗3八金 ☖5四歩

☗4八玉 ☖6二銀

☗2九飛

 

(3図)

 

解説:後手の阪田流向かい飛車に対して、先手は着々と右玉に囲います。後手もこのまま攻めるのはリスクが高いと判断したのか、3図以降も駒組みを進めます。

 

3図以下の指し手

☖7二玉 ☗9六歩

☖9四歩 ☗6六銀

☖4三銀 ☗7七桂

☖4二角 ☗5六歩

☖6二金

 

(4図)

 

解説:先手の☗7七桂に対する☖4二角は☗6五桂の両取りを防いだ一手。後手も囲いを完成させましたが、一見すると相振り飛車で見かける「右矢倉」と似ている囲いです。金銀の連結はよさそうですが左辺の金を攻めに活用する狙いの中で、かなり有力な陣形だと思います。

さて、戦いはここから先手が仕掛けます。

 

ミ「また長い戦いになりそうだね」

ア「実戦はここから先手が仕掛けたということですが…」

ミ「仕掛けると言っても糸口が見えない。手持ちの角を生かすにはどうすればいいんだろう?」

ア「では実際の進行を見ていきましょう」

 

4図以下の指し手

☗5五歩 ☖同歩

☗同銀 ☖5四歩

☗6六銀 ☖6四銀

☗5九飛

 

(5図)

 

解説:先手の仕掛けは4図から☗5五歩。以下は歩交換から一歩を手持ちにしてから、☗5九飛と5筋に飛車を転回します。一方の後手は先手の銀を撤退させた後で☖6四銀と守りに使うと思われた銀を前進させました。狙いとしては5筋の制空権争いで対抗すること、☖7五歩からの銀交換などが考えられます。

実戦は5図から今度は後手が動きます。そのための起点の攻めは?

 

ミ「先手は仕掛けたのはいいけど…。一歩を持って何がしたいのかが見えない」

ア「5図の局面は実はやや先手よしとの評価がD分析で出ています」

ミ「とはいえ、後手も一見攻めが分かりにくく見える。なんか左の金の使い方が難しいと思うんだ」

ア「実は後手の攻めは左の金を前進させることでした」

ミ「ほう。じゃあ進行を見て確かめようか」

 

5図以下の指し手

☖3五歩 ☗同歩

☖2四歩 ☗同歩

☖同金 ☗2五歩

☖3五金 ☗3六歩

☖3四金 ☗5五歩

☖3三桂

 

(6図)

解説:後手の仕掛けは☖3五歩の突き捨てを入れてからの☖2四歩。ここで先手は素直に☗2四同歩~☗2五歩と応手したのですが、この手順は後手の攻めを呼び込んでしまう形になりました。

戻って☖2四歩のところでは☗2四同歩に代えて☗2九飛と飛車を振り直す手や☗9五歩と端歩の突き捨てから踏み込む順が有力との評価です。後手は☗2四同歩に同金と応じて「棒金」の要領で踏み込んでいきます。

6図の☖3三桂は振り飛車の命でもある左桂を活用。ソフトの局面の評価は互角も、振り飛車党の方は分かりやすい攻めなのでおそらく後手を持って指しやすいかと思います。

 

ミ「よく級位者は『ぶつかった駒は取りなさい』と教えられるらしいけど…」

ア「この場合は、ぶつかった駒を取ったことで相手の攻めが速くなってしまった典型のパターンですね」

ミ「えっと、『ハヤト』くんかな?まあ、これも経験と思えばいい。負けも将棋においては欠かせない要素さ。あの世間をにぎわす大天才だって、少年時代は負けて泣きじゃくっていたと言うし」

ア「やはり攻めの駒が五段目まで踏み込んでくると、受けきるのは容易ではないですね」

ミ「というわけで先手は☗5五歩から反撃か。だけど手抜いて☖3三桂が辛い指し回しだね」

ア「飛車先が通りましたし、桂馬も活用できましたし後手好調に見えますね。ソフトは互角の評価のようですが」

ミ「いや~、これは右玉自信ない…」

ア「では、その後の指し手を見ていきましょう」

 

6図以下の指し手

☗5四歩 ☖5二歩

☗5五銀 ☖同銀

☗同飛 ☖6四角

☗5九飛 ☖2五桂

☗同桂 ☖同飛

 

(7図)

 

解説:先手は6図から勢い☗5四歩と取りこみ、後手は☖5二歩と受けました。ここで先手が☗5五銀とぶつけた一手がまずく、以下銀交換から☖6四角と角を転回されて後手ペースになりました。

☗5五銀では☗7五歩や☗9五歩などの手が優りました。☗7五歩からは☖7五同銀と取らせてから☗6五桂と跳ねて、攻めと守りの桂馬を交換するのが一例。☗9五歩からは☖4五歩から攻め合い志向の将棋になります。

 

ミ「これは…。駒だ、駒たちが躍動する将棋だね」

ア「ミギタマさん、他局で生まれたネタは真似しないほうがいいですよ。いくら序盤、中盤、終盤、隙が無い先生が今度の講師だからって…」

ミ「アオちゃんこそ、他局ネタを真似してるじゃん。まあそれはともかく、局面は人間なら後手を持ちたいよね

ア「右玉は一度手がつくと脆いですから、好調に攻めている後手を持ちたいという方の気持ちも理解できます」

ミ「で、7図のD分析の結果はどうなの?」

ア「まだ互角との評価とのことです」

ミ「まあ、ソフト様はどんな妙手をひねり出すかは分からないけども。でもここをしのげば先手にも可能性はあるんじゃないかな?」

ア「本譜は次の一手から後手が優勢となりました」

ミ「ほうほう。じゃあ早速見ていこう」

 

7図以下の指し手

☗2七歩 ☖4五歩

☗3七桂 ☖2一飛

☗6五銀 ☖4六歩

☗6四銀 ☖4七歩成

☗同金 ☖6四歩

☗3八玉

 

(8図)

 

解説:7図から先手は☗2七歩と後手の飛車先を止めますが、貴重な一歩を使って駒アタリでない受けをしたことが災いしたのか、ここから形勢が後手優勢になりました。代えて☗2五桂と飛車に当てる手なら、先手まだ戦えたとの評価です。

その後の展開は、お互いに角と銀を取り攻め合う状況に。その中で8図の☗3八玉がかなり危険な一手となりました。形勢は後手勝勢との評価。玉形の差は後手に分があり、飛車の利きも後手が使いやすいことが評価に影響されていると言えます。後手はここからどう攻めをつないで勝ちを手繰り寄せるのか。

 

ミ「いやいや、これは右玉崩壊か…」

ア「終始後手の攻めに押され気味ですからね。先手の攻めも後手玉から遠いですし」

ミ「で、ここから後手が決め手級の攻めを披露したということなんだけど…」

ア「では8図からからの流れを見ていきましょう」

 

8図以下の指し手

☖4六歩 ☗同金

☖4五歩 ☗同桂

☖同金 ☗同金

☖4七銀 ☗同玉

☖2七飛成 ☗3七角

☖2五桂

 

(9図)

 

解説:後手は8図から、☖4六歩~☖4五歩と連打の歩で先手の金に当ててから、☖4七銀の王手で迫ります。☗4七同玉と取らせてから☖2七飛成が「一間龍」と呼ばれる詰み筋の基本形の1つに持ち込む一手。☗3七角に☖2五桂が継続の攻めで、局面は完全に後手の勝ち形となりました。

 

その後は先手は玉を逃がして懸命に粘り、後手は時間をかけながらも寄せを目指します。最後は先手が将棋ウォーズの切れ負けならではの荒業である「王手攻撃」で後手の時間切れを誘うも、後手は冷静に受け止めて先手玉を詰まし、148手で後手の勝ちとなりました。(消費時間☗6分15秒、☖9分55秒)

 

(投了図)

 

ミ「最後まで先手は抵抗した投了図だね」

ア「『ハヤトパパ』さんによれば、お子さんは『最後泣きじゃくりながら懸命に王手をかけ続けた』とのことです」

ミ「負けを認めるのは悔しいけど、強くなるためには欠かせない第一歩だから、これも経験だ。でも中盤まではいい勝負だったし、悲観する必要はないと思う」

ア「『ハヤトパパ』さんはその後、対局相手の方に謝りましたが、相手の方は『気にするな、これも経験だから。負けて泣く子は強くなれると思うよ。あの子の将棋は強くなる。このまま勉強を怠らなければ強くなれるよ』と励ましてくださったそうです」

ミ「いい話じゃないか…(涙)」

ア「ミギタマさん、生放送中ですよ!!とにかく、スリーポイントチェックのコーナーにいきましょう!!」

 

ポイント①:駆け引きの末の阪田流

ミ「今回の角交換振り飛車は普通とは違って阪田流だったね」

ア「しかも、相居飛車の将棋と見せかけての陽動振り飛車の要素を絡めた進行でした」

ミ「ちなみに普通の角交換振り飛車と右玉の相性はどうなの?」

ア「あくまでDの個人的意見ですが、どうも角交換四間飛車相手の右玉は相性が良くないらしいです」

ミ「じゃあ、角交換振り飛車相手の右玉は厳しいのかな?」

ア「どうも角道が開いた状態では厳しいらしいですね。四間飛車というのが1つのミソで、右玉の囲いにダイレクトに攻め筋が当たる感覚だそうです」

ミ「じゃあ、どう対抗すればいいんだろう?」

ア「Dは角交換振り飛車相手には、ミレニアムを試しているそうです。実戦的な戦果は未知数だと話していました」

ミ「これは、右玉党の永遠の課題として残すことになるのか…」

 

ポイント②:お手伝いの受け

ミ「この将棋はたしか、中盤で先手にミスが出たんだよね」

ア「そのきっかけは後手の☖3五歩~☖2四歩の突き捨てでした」

ミ「さっきも言ったけど、よく『ぶつかった駒は取りましょう』って級位者の頃に教えられたけど…。今回はそれが仇になったね」

ア「本譜の☖2四歩に対する応手ですね。実戦は先手が素直に☗2四同歩と応じてしまったことで後手の攻めが速くなりました

ミ「専門用語でいう『お手伝い』かな?」

ア「素直な受けでは相手の攻めを手伝ってしまうことになります。相手の攻めに反発する受けを考えたいものです」

 

ポイント③:強く受けるには?

ミ「本譜の流れが大きく変わったのは7図だったね」

ア「☖2五同飛の局面で先手が☗2七歩と受けたことで流れが後手優勢に大きく傾きました」

ミ「☗2七歩は駒が当たってなかったから後手に攻める余裕を与えてしまったね

ア「代えて☗3七桂と飛車に当てれば、いったん飛車は撤退をしないといけません」

ミ「強気に受けるなら駒アタリの受けか

ア「もちろん、駒アタリの受けのケースがすべて有効とは限りません。しかし、駒にプレッシャーをかける一手は強く戦うには必須と言えます」

 

ーエンディング

ミ「さてと、今日は角交換振り飛車…。といっても阪田流と右玉の将棋だったね」

ア「序盤から面白い将棋だったと思いますが、ミギタマさん、いかがでしたか?」

ミ「アオちゃんの言う通り、エキサイティングな将棋だったね。中盤以降は右玉苦しかったけど」

ア「さて、ミギタマさん。今日でこの放送は最後となります。この1年間どうでしたか?」

ミ「とにかく楽しかった。将棋ってこんなに奥が深くて、右玉ってこんなに楽しい戦法なんだと思わなかった」

ア「はじめは『右玉なんて地味』と語ってましたからね」

ミ「でもそれは、思い込みということだ。実際に触れてみないと楽しさは分からないね

ア「ところでミギタマさん、今回の棋譜を送ってくださった、ラジオネーム『ハヤトパパ』さんのことは思い出しましたか?」

ミ「ああ、すっかり忘れてた。心当たりだろう?全然浮かばなくてね」

ア「実は『ハヤトパパ』さんのメッセージには続きがありまして…」

ミ「え、そうなの?」

ア「Dからは『ミギタマさんには放送まで秘密』ということで、進めてきました」

ミ「ホントかよ、右田さん…。教えてくれれば…」

ア「では、早速メッセージの続きを読みたいと思います」

 

ー(前略)ミギタマさん、私の息子を覚えていますか?以前、野球場を訪れた際に迷子になった息子を助けてくれたミギタマさんにお礼も言いたくて、今回の棋譜を送りました。

息子のハヤトは現在小学3年生です。ちょうどこの番組が始まったころに将棋を始めて、みるみるうちに今でいう「沼」にハマってしまいました。今ではこの番組で紹介されている右玉を熱心に勉強しています。

息子は将棋を始めたきっかけを直接は話してくれませんでした。しかし、叡王戦で藤井聡太先生に負けた先生(名前をド忘れして申し訳ありません)が泣いている姿を見てから、急に将棋の本を読みたくなったと言って、私に将棋の本をねだるようになりました。

その時に「右玉浪漫飛行」の番組を聴いていたら、息子が突然

「この人は僕を助けたミギタマさんだ!!」

と言って、この番組を毎回聞くようになりました。放送時間帯が遅く、生放送を聴かせるのはさすがに息子の体に良くないのでポッドキャストで親子一緒に聴いています。

最後になりますが、息子がミギタマさんに言いたいことがあると言っていたのでメッセージを見てください。

 

ア「いかがですか?ミギタマさん」

ミ「…思い出した。この子だ」

ア「?何か思い出したんですか?」

ミ「前に、迷子の子供からお礼の手紙をもらった話をしたよね」

ア「ええ。確か初めてのお手紙だったとか」

 

※詳しくはこちらの記事をご確認ください。

 

 

 

 

 

ミ「そのお手紙をくれた少年が『ハヤトくん』だった」

ア「まさか、その子が…」

ミ「どうやら、この番組を聴いてくれたんだね。ミギタマはうれしいよ…(涙)」

ア「ミギタマさん、生放送中ですよ!!気持ちは分かりますけど…。とにかく『ハヤトくん』のメッセージ、読みますよ」

 

ーミギタマさん、こんにちは。お久しぶりです。だいぶまえに、たすけてくださったハヤトです。あの時は本当にありがとうございました。

ぼくはいま、しょうぎをべんきょうしています。そんなときに、お父さんのスマホからミギタマさんのこえがきこえました。ミギタマさんが右玉のことをはなしていたので、いまは右玉のおべんきょうをしています。きょうのきふは、ぼくが右玉のしょうぎで初めて負けたしょうぎです。

ぼくはこのしょうぎに負けてくやしくて泣きました。でも、相手のおじいさんから「これからつよくなるからがんばれ」と言われて、もっとしょうぎをべんきょうします。ミギタマさん、ぼくのしょうぎのどこがわるいのかおしえてください。

さいごに、ミギタマさん。このばんぐみがおわるのはさみしいです。でも、学んだことをおぼえてがんばりたいです。ありがとうございました。

ハヤト

 

ミ「うう…。『ハヤト』くん…」

ア「ミギタマさん、ミギタマさん!!まだ放送は終わってませんよ」

ミ「ああ、そうだったね。『ハヤト』くん、本当にありがとう!!。もちろん、すべてのリスナーにもありがとう!!」

ア「いや~、この番組をやってて本当によかったですね」

ミ「うん、本当によかった。今回はとにかく右玉にこだわって取り上げたけど、もちろん、右玉以外にも将棋の戦法はたくさんある。この番組をきっかけに将棋を深く好きになってくれればうれしいな」

ア「そうですね。私もこの番組を1年間担当して、本当によかったです。ありがとうございました」

ミ「というわけで…、今日はここまでお相手はDJ.ミギタマと」

ア「アシスタントのアオテツでした」

ミ「みんな~!!今まで本当にありがとう!!」

 

ーエピローグ

ーこの放送から数日後、1人の少年のもとにある手紙が届いた。

父「ハヤト、お前に手紙だ」

ハヤト(以下ハ)「てがみ?」

父「『右玉浪漫飛行』からだ。あの人からかもしれないぞ」

ハ「ちょっと読んでいい?」

父「ああ、よく読みなさい」

ハ「うん!!」

 

ハヤト少年は手紙の封を開けた。

ーハヤトくん、こんにちは。「右玉浪漫飛行」のMCのDJ.ミギタマです。番組をお父さんと聴いてくれたんだね。本当にありがとう。ミギタマももちろんうれしいけど、アシスタントを務めたアオテツさんをはじめ、他の番組スタッフも君には本当に感謝しています。

君の将棋の棋譜を見ました。最後の最後まであきらめない姿、そして泣きながら王手をかけ続けた君の気持ちが分かる内容でした。ディレクターがほめていました。

「小学3年生で右玉が指せるのもすごいけど、中盤まで大崩れしていないのがすごい」

と言って、なんとかハヤトくんがどうすれば勝てたのかみんなで考えました。とても楽し時間でした。本当に負けて悔しかった棋譜を番組に送ってくれてありがとう。

ハヤトくんは昔、アナウンサーになるって言ってたね。その夢は今も変わらないのかな?それとも、学校生活や将棋の勉強をしていく中で変わったのかな?負けて悔しい思いを知った君はあの時よりさらに成長していると思うよ。人の悲しみも理解できるハヤトくんは、きっと素晴らしい大人になる。ミギタマはそう信じています。

最後になりますが、今後のハヤトくんの成長を陰ながら楽しみにしています。将棋の勉強も大事だけど、学校の勉強も大事にしてね。また会える日を楽しみにしています。

DJ.ミギタマ

 

ハ「ミギタマさん…。ありがとう!!」

 

ーこうして、「右玉浪漫飛行」の番組は幕を閉じた。しかし、この番組がきっかけでハヤト少年は将棋の道を邁進することになる。少年は父にこう誓った。

 

ハ「お父さん、ぼくはプロ棋士になる!!そのためにまずは研修会に入りたいんだ!!お願いします!!」

 

ーハヤト少年は大きな決断を下した。少年が見据える未来へむけて、彼の将棋の道は続く。

 

 

 

 

以上で、「右玉浪漫飛行」を終わります。このシリーズの振り返りは後ほどのコラムコーナーで行うとして、続いて将棋倶楽部24の近況報告を行いたいと思います。ルール詳細はこちらから。

 

 

 

 

では報告に入ります。

総合成績:43勝37敗1千日手。勝率.538
※千日手局は原則カウントしない
現在レート:1,003点 最高レート:1,288点
手番別勝敗
手番別勝率:先手番勝率.418 後手番勝率.675
 
今月は勝ち越しで終えました。星の流れを見ると、先週は4連勝スタートで始まり、中盤も3連勝を2度マーク。終盤は3連敗を喫するも勝ち越し。今週は、前半に3連敗。しかし後半に2連勝2連敗から7連勝で勝ち越しです。内容は、全体としては負けていた内容が多く、入玉も辞さない粘りで勝ちを拾っていく将棋が多かったです。では戦型別の勝敗です。
 
自分から見た戦型
 
相手から見た戦型
 
今月は右玉を多く指しました。内容は右玉特有と言っては何ですが、とにかく攻撃をかわしてしのいで逆転勝ちするというものが多いです。骨格は崩れても逃げ道を広く生かし、相手のミスに乗じて脱出して逃げ切るという感覚です。
次いで多いのが角換わり。腰掛け銀は相腰掛け銀での戦いが多いですが不調。右玉も採用しますが、こちらはまずまずといった感覚です。全体的にはやや苦戦気味と言えるところでしょうか。
それ以外の戦型は、三間飛車はまずまず。矢倉と横歩取りは苦戦の格好です。
 

相手から見た戦型は、居飛車は矢倉。振り飛車は四間飛車が多かったです。

矢倉は全体としては金矢倉が多く、対抗策は左美濃や右玉を用いることが多いです。左美濃は攻めが切れると苦戦。右玉は攻めの遠さを武器に対抗しています。

四間飛車は基本としては美濃囲いからの派生で高美濃が多いです。対抗策は右玉が多いですが、右玉に囲う前に戦いを起こされる点もあり、駒組みは慎重にしなくてはいけない部分もあります。

そのほかでは居飛車は棒銀は振り飛車相手の将棋で目立つこと。三間飛車は早い段階で宣言してきます。中飛車は減少傾向。また、振り飛車穴熊の将棋も多く、相手の攻め、自分の受けの戦いが続きます。

 
 
雑記帳㉓「『右玉浪漫飛行』を振り返る」
「右玉浪漫飛行」の連載は本日で終了となりました。今回も無事に1年間連載を完走できたのは、読んでくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
今回のストーリー設定はラジオ番組風ということで進行していきました。ストーリー自体は、基本として1話完結型を目指しましたが、局面によっては2度に分けて解説したほうがいいのかなというところでうまくかみ合わせたつもりでしたがいかがだったでしょうか?
ストーリーで意識したのは、ラジオ番組のオープニングトークの構成です。上手く季節感を出しながら、ミギタマとアオテツの掛け合いをどう進めていいのかは意識してきました。最終回はこのラジオ番組を聴いた少年が、将棋界へ踏み出す勇気をもって未来へ向かうというシナリオにしましたが、「右玉浪漫飛行」が明るいラジオ番組だったということで明るい未来へ向かうという形で締めるという構成は少し無理があったかと思います。
局面の解説は前半の対居飛車編は、角換わりと右四間飛車に重きを置いたのがどうだったのかという面はありました。後半の対振り飛車編は四間飛車、三間飛車、中飛車を軸に解説してきましたが、自分の将棋が振り飛車相手の右玉が多かったこともあって題材の局面に困ることはなかったのが救いでした。
前回の「角頭歩の大冒険」と比べると、自分の好きな右玉が題材ということでやりやすかったという面は大きかったです。私もこの連載を通して、将棋の奥深さを知り、右玉の強さと弱さをしり、苦しくも楽しい連載だったと思います。
 
さて、自戦譜検証企画ですが、この「右玉浪漫飛行」の連載をもちましてひとまず終了したいと思います。2年間ではありますが、私の拙い棋譜とその分析にお付き合いいただきありがとうございました。今後の近況報告のあり方については、今月末に改めて当ブログでご説明させていただきます。なお、将棋倶楽部24の実施は今後も継続してまいります。
 
 

さて、長々と話してきましたが今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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