「会議」シリーズ第3弾 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。最近のマイブームは遊戯王の一番くじの雁木師でございます(正直、相当使っています)。今日は書籍のご紹介をさせていただきます。今回は、久しぶりに「会議」シリーズの書籍をご紹介します。第3弾となる今回はこちらです。

 

 

「将棋

初段になれるかな

大会議

でございます。

高野秀行六段、岡部敬史さん、さくらはな。さんによる共著で、扶桑社より2020年9月に発売されました。著者の御三方についてはこのシリーズの「将棋『観る将になれるかな』会議」の書籍紹介記事のリンクをご参照ください。書籍の内容もリンクからご確認いただけます。

 

また、前回の「会議」シリーズの書籍(「将棋『初段になれるかな』会議」)について知りたい方は下記リブログ記事からご確認いただけます。

なお、付記事項として高野秀行六段は現在竜王戦は6組、順位戦はC級1組で2勝7敗の成績です。

 

では、書籍の内容に入ります。本書は、前回のシリーズ書籍でご紹介した「将棋『初段になれるかな』会議」の続編です。内容は前回と同じく、級位者の方が初段になるために欠かせないメソッドを学ぶものとなっています。構成自体はこれまでの会議シリーズ同様、岡部さん、さくらさんの質問に高野秀行六段が回答していくのが基本ですが、高野秀行六段からの問題も提示され、岡部さん、さくらさんが解答していくパターンもあります。全6章構成となっています。

まずは岡部さんによる「まえがき」と題して、本書の概要や級位者あるあるなどを紹介。

 

【第一章】いきなりの攻めと見慣れない戦法にどう対処するのか?

「指す将」の方でこんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

・囲いの完成前にいきなり相手が攻めてきた

・自分の全く知らない定跡を使ってきた

かく言う私も自称「力戦派」なのですが、嬉野流の対処法には苦戦することもあります。そんな話はともかく、この章では章題の通り、相手が序盤早々で攻め込んできた場合と相手が自分の知らない戦法で戦ってきた場合の対処法を学ぶ内容です。

本書で登場する戦法は「いきなり棒銀」「矢倉崩し」「筋違い角」…。どれも級位者の方には、相手に指されると嫌な戦法とされています。これらの戦法に対する対策法をポイントを押さえて解説していきます。

 

【第二章】「受け」が強くなる考え方

「指す将」の方で、「『攻め』は得意だけど『受け』はちょっと苦手(もしくはかなり苦手)」という方も多いかと思います。

将棋ウォーズには棋力チャートに「守備力」というパラメータがあります。私は「守備力」が「攻撃力」より高い傾向なのですが、受けの力に自信はありません(自分で「粘る将棋」と言っているのですが…)。

そんな話はともかく、この章では「受け」に特化した内容で、どうすれば受けの力が強くなるかを解説していきます。「詰めろ」の解除の仕方、「玉の位置の法則」、「歩を下げる」手筋など、受けのメソッドが学べるキーワードが多いです。

 

【第三章】銀交換はどれくらいお得?~知っておくと強くなる考え方~

章題の「銀交換」とは「攻めの銀と守りの銀を交換できたら成功」という言葉からきています。将棋では「銀交換」は攻めの基本とされています。みんな大好き棒銀戦法も攻めと守りの銀を交換するのがセオリーとされています。

ただし、銀交換に成功したからと言って必ずしも局面が有利になるかというと、実はそうでもないということもあります。この章では銀交換はもちろん、それ以外の局面の考え方も解説していきます。銀交換以外では、「種駒を残す」と「すっきりさせる」の違い、駒を取るか取らないかの考え方、攻めと受けの見極めなど、どれも知っておくだけで強くなれる考え方です。

 

【第四章】持ち駒は小さいほうから使う~初段になった人へのアンケートから~

この章では、さくらさんがご自身の身近で初段になられた方々へのアンケートを基に、初段になるために必要なことを学んでいく内容です。「なぜ将棋を強くなろうと思ったのか」という内容から、「初段になるうえで大切にしていた信条や格言」、「おすすめの棋書」に至るまで、初段になる上で欠かせない過程を学べる内容です。この章の締めくくりには、実際にアンケートにお答えされた方の中から、3名の方の回答の詳細が掲載されています。

 

【第五章】「詰みより詰めろ」と「必至筋」

将棋を指していると、最終盤でこんなことはありませんか?

「自分のほうが勝てる将棋だ。でも、詰ましに行くか必至をかけるべきか…。分からない」

そうして考えているうちに持ち時間が切迫して

「やばい!!とりあえず王手だ!!」

慌てて王手をかけて、結局相手玉を逃がしてしまった…。

というパターンです。

将棋で勝つうえでは王手をかけることは大事です。しかし、「王手は追う手」という格言があるように、やたらと王手をかけたからと言って相手玉が必ず詰むとは限りません。

この章で学べるのは、「詰めろ」のかけ方を軸に、どうすれば「詰めろ」をかけることができるのか。そこからステップアップして「必至」のかけ方も学べます。「詰みより詰めろを考える」、「腹銀」と呼ばれる手筋などが学べます。

 

【第六章】級位者が覚えておきたい格言

「将棋『初段になれるかな』会議」の書籍でも、覚えておきたい格言として10個を提言されました。本書ではこの10の格言に加えて、「級位者が覚えるべき新しい8つの格言」と題して、覚えておきたい考え方などを学びます。「駒台は自分のお財布」「有利な時こそ『普通預金』のような手を」といった、お金を絡めた解説もあり、分かりやすく考え方を学べます。

 

そして、締めくくりはさくらさんのマンガ「アトガキ~行け!扶桑社将棋部の巻~」と高野秀行六段による「あとがき」が掲載されています。

 

 

以上、各章の内容を見てきました。ここからは実際に読んでみた感想をまとめてみたいと思います。

 

徹底した級位者向け…本書は「初心者ではないけれど決して強くない人」のための書籍です。まえがきでも触れられていますが、級位者の方向けの書籍というのは意外と多くはありません。本書で学ぶのは級位者の方が陥りやすいつまずきなどを解説されています。これは、高野秀行六段と「級位者代表」の岡部さん、5年かけて初段になられたさくらさんとの対談形式で進行していくことでそのつまずきのメカニズムを学び、どうすればステップアップして初段になれるのかを学んでいく内容ですので、級位でつまずいている方は一度読んだほうが良いかもしれません。

 

さくらさんのマンガ…この「会議」シリーズの大きな特徴の1つに、さくらさんのマンガが合間に出てくることがあります。もちろん本書でも、合間合間にさくらさんの4コママンガが描かれています。級位者あるあるをほのぼのとしたタッチで描かれており、楽しく共感できることは間違いないでしょう。実体験に基づく内容がベースですので、

「あ、これ分かる」

というエピソードもあるかと思います。

 

双方向の感覚…本書の【第四章】は、実際に有段者の方に聞いてみたアンケートから内容が構成されています。これは一種の双方向の感覚かもしれません。実際、アンケートを基に対話を進めてますが、こうしてみると御三方による対話だけではなく、様々な方の本音や過程を知ることで本書をより深いものにしていこうという意図が見えます。答えの数だけなりたい初段の道はある。そう感じさせる【第四章】でした。

 

 

さて、本書は初段を目指している方向けの書籍です。今回の書籍は中終盤の感覚を軸に、バランスよく考え方を学べる内容です。居飛車党、振り飛車党問わず大切なエッセンスが詰まっていますので、ぜひ一度お手に取ってみて楽しく学んでみてください。

 

 

この本を読んで将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は3/3(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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