大人気「会議」シリーズから | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。藤井聡太竜王の棋王初挑戦が実現したら、とある絵を描いてみたい雁木師でございます。今日は書籍のご紹介です。今回は、大人気の「会議」シリーズからこちらの書籍をご紹介します。

 

 

 

 

「将棋『観る将になれるかな』会議」

をご紹介します。

プロ棋士の高野秀行(たかの・ひでゆき)六段、ライターの岡部敬史(おかべ・たかし)さん、漫画家のさくらはな。さんの共著で、扶桑社より2019年6月に発売された新書です。ここで、著者の御三方をそれぞれご紹介します。

高野秀行六段(将棋界には高野姓が2人いらっしゃるのでフルネームでご紹介させていただきます)は1998年に四段昇段。主な実績は、竜王戦6組優勝、棋王戦、NHK杯、朝日杯の前身の朝日オープン選手権にて本戦出場などです。

普及活動に熱心で2008年に東京都世田谷区経堂にて、「経堂こども将棋教室」を主宰。現在は、これに加えて「ちとふなこども将棋教室」やオンラインの指導対局の講師としても活動中です(詳細は下記リンクをご参照ください)。

 

 

また、大学で将棋に関する講座の講師も務められています。著書も、お子様向けの将棋入門書や親御さん向けの将棋に関する本など普及に重点を置いた内容が多いです。

 

 

 

 

 

現在は、竜王戦は6組。順位戦はC級1組で1勝4敗の成績です。また、竜王戦では観戦記の執筆も担当されています。

 

 

ライターの岡部さんは、1972年、京都市のお生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業され、出版社勤務を経て、ライターや著述家、編集者としてご活躍されています。主な著書に「ことばシリーズ(東京書籍)」などがあります(おかべたかし名義)。

 

 

 

 

 

漫画家のさくらはな。さんは、千葉県のご出身。将棋を始めたのは2013年5月から。将棋のフリーペーパー「駒doc.」にて「将棋好きに成りました!」を連載。

 

 

 

また、2019年1月より、竹書房「本当にあった愉快な話」にて「えりりんと女流棋士の日々」を連載されています。こちらは単行本も発売されています。

 

 

 

 

 

では書籍の内容に入ります。本書は「会議」シリーズの1つで「観る将」を楽しむうえで欠かせない将棋用語や知識を学んでいく内容です。全部で5章構成となっています。

なおご注意いただきたいのは、本書の発売が3年前ということで、情報がやや古いという点です。当たり前と言えばそれまでですが、そのころと現在では将棋界が大幅に変化している部分があります。過去の歴史を振り返りたいという方におススメと言える書籍と言えます。

では改めて、各章の内容を見ていきます。まずは岡部さんのまえがきで本書の概要を簡単にご紹介。

 

第1章「『棋風』って何?~将棋番組のわからないことば その1~

将棋番組をご覧になられるという方は、一度でも「棋風」という言葉を耳にしたことがあると思います。では、

「棋風」とは何か?

そう質問されて、スラスラ答えることはできるでしょうか?かく言う私も、「棋風」を言葉で分かりやすく説明する自信がありません(本当はそれではダメなんですが…)。この章では、「棋風」の意味を解説することから始まって、実際の局面を使って「攻め」「受け」の棋風を解説されています。また、他にも「居飛車党の本格派」とはどういうことか、棋士のニックネーム、東西の所属や地方出身棋士など棋士の性質についても書かれています。

 

第2章「『味がいい』ってどういう意味?~将棋番組のわからないことば その2~

この章も将棋番組でよく出てくる言葉について解説していく内容です。ここでは、将棋の局面や内容に関する言葉の解説です。この章で出てくる将棋用語は…

「さばく」「格調が高い」「ねじりあい」

「手厚い」「嫌味をつける」「余す」「味がいい」

どれも将棋番組では、必ずと言っていいほど頻出する用語です。さて、皆様はこれらの将棋用語の意味を正確に理解できていますか?私はと言いますと…、ちょっと理解しているか怪しい用語もあります(これも本当はダメなんですが…)。特に、「格調が高い」は何をもってそう表現されているのかを正確に理解していません。本書では、そうした理解しにくい将棋用語をプロの将棋の実戦を交えて解説されています。

 

第3章「なぜ『竜王戦』と『名人戦』は特別か?~タイトル戦について~

将棋界には八大タイトルが存在しますが、各棋戦によって、勝ち上がり方や持ち時間などで違いがあります。本書ではその八大タイトル戦でも最も格上とされる竜王戦と名人戦を中心に、各棋戦の特徴などが解説されています。ご注意いただきたいのが、前述したように本書は3年前に発売されたものですので情報が古いケースがあります。具体的に言えば、タイトル戦の冠名が変更されたことやスポンサーの交代、持ち時間の変更などです。

 

第4章「『棋士』と『女流棋士』はどう違う?~安食総子女流初段インタビュー~

最近では里見香奈女流六冠(本日行われた白玲戦第7局で勝利し白玲のタイトルを獲得。3年ぶりに女流六冠に復帰されました)がプロ棋士編入試験を受験され、史上初の「女性棋士」の誕生なるかが注目されました。この章では「女流棋士」を中心にした解説です。今年引退された人気女流棋士のひとり、安食女流初段の将棋人生から、女流棋士や女流棋戦の特徴、お仕事のひとつである「聞き手」に至るまで、女流棋士の全容を明らかにしていく流れです。章のしめくくりではさくらさんのマンガ「あじあじを味わってきた」をまとめとして掲載されています。

 

第5章「対局に遅れたらどうなるの?~気になるあれこれ~

この章では、将棋中継を見ていて気になることを解説していく内容です。この章で取り上げられているのは…。

・対局中、盤から離れているときは何をしているのか?

・対局時に持っていくものは何か?

・対局に遅れたらどうなるのか?

・駒の並べ方に作法はあるのか?

など、どれも気になる内容ばかりです。

 

そして、あとがきにはさくらさんのマンガ「あとがき~竜王戦の控室を味わってきた~」と高野秀行六段のあとがきが掲載されています。

 

 

以上、各章の特徴を見てきましたが、実際に読んでみた感想は以下の通りです。

 

Q&A方式の進行

本書の進行は、各章共通で岡部さんとさくらさんが質問し、高野秀行六段が(第4章では安食女流初段も)答えていくという仕組みです。高野秀行六段が的確に解説をしてくださりますが、岡部さんとさくらさんの鋭い(?)質問にうまく答えられないことも。はたして、高野秀行六段が答えに窮した質問とは?ぜひ、本書で確かめることをおススメします。

 

「そんなの知らなかった」

これは第4章の安食女流初段のインタビューで多く出てきますが、安食女流初段の将棋人生は読んでて衝撃でした。詳しくは本書をお読みいただければわかるのですが、そんな過去があったのかと思うくらいに知らないことが多かったです。裏側を聞けた瞬間は、ためになることも多いです。安食女流初段はその語り口はゆったりとされていますが、それがかえってダメになるというケースもあったり、聞き手のお仕事をされているからこそわかる、棋士のすごさといったものもこの章から感じ取れます。

 

マンガのタッチ

本書の特徴の1つにさくらさんのマンガがちょくちょく出てくることがあります。さくらさんのマンガについては、恥ずかしながら本書で初めて読んでみました。4コママンガは棋士の特徴を的確に捉えており、締めくくりに出てくる4ページほどのマンガはほのぼのとしていて、読んでてクスッと笑える内容です。全体としては棋士のすごさと意外性に焦点を当てているといった感じでしょうか。おそらく本書でさくらさんのマンガを触れたら、他の作品も買いたくなる。そう思わせるマンガです。

 

 

以上、本書の感想を簡単にまとめてみました。観る将の方はぜひ読んでいただきたい一冊と言えるでしょう。繰り返しになりますが、3年前ということで情報が古いという面は否めません。過去の歴史を本書で振り返るもよし、将棋観戦のお供にもよし、はたまた「会議」シリーズの復習にもよし、という内容です。

この「会議」シリーズですが、また次の機会に続編の紹介をしたいと思います。どの書籍にするかはまだ決めていませんが、このシリーズは評判になっている書籍とのことなので、ぜひ続編も紹介したいと検討しています。ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。

 

この本を読んで将棋に興味を持った、将棋が好きになったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋に興味を持つ、将棋が好きになることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は11/4(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 
 

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