「右玉浪漫飛行」(その14)と将棋倶楽部24近況 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。羽生善治九段の王将リーグ4連勝に少しだけ興奮している雁木師でございます。今日は前半は「右玉浪漫飛行」の14回目、後半は将棋倶楽部24の近況報告を行いたいと思います。長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。

まずは、「右玉浪漫飛行」から。今回もDJ.ミギタマとアオテツと一緒に進めていきたいと思います。

2人についてはこちらから。

 

 

前回のおさらいをしたいという方は下記リブログ記事からご確認いただけます。

それでは「右玉浪漫飛行」のはじまりです。

 

※なお、このストーリーに出てくる人物、出来事などは一部を除き架空のものです。実際の人物、出来事などとは一切関係ありません。

DJ.ミギタマ(以下ミ)「DJ.ミギタマの右玉浪漫飛行~!!」

~♪(オープニングBGM)

ミ「将棋ファンのみんな、元気かい?DJ.ミギタマだ」

アオテツ(以下ア)「こんばんは。アシスタントのアオテツです。よろしくお願いします」

ミ「アオちゃん。食欲の秋だね~」

ア「そうですね。ミギタマさんのおススメの将棋めしはありますか?」

ミ「将棋めしか…。そうだね~、ミギタマのおススメは鳩やぐらの『納豆オムレツ丼』かな」

ア「『納豆オムレツ丼』ですか。たしか、プロ棋士の中には単品で『納豆オムレツ』を頼まれる方もいますね。ミギタマさんは卵料理ならなんでもイケるんですか?」

ミ「卵料理はなんでも好きだよ。ゆで卵だけじゃさすがに飽きるからね。球団関係者に誘われたのがきっかけで食べたんだけど、とてもおいしい。ボリュームもあってランチには大満足さ」

ア「ミギタマさんの元気の源はやはり卵料理なんですね」

ミ「アオちゃんはおススメの将棋めしはあるの?」

ア「私は千寿司さんの『鉄火丼』がおススメです」

ミ「千寿司というと『にぎり』や『ちらし』を頼む棋士が多いけど、あえての『鉄火丼』をおススメするとは…」

ア「私は魚が好きなんです。とりわけ、マグロが大好きで…」

ミ「お、アオちゃんはマグロ好きなのかい?初耳だぜ!!」

ア「以前、青森に取材で訪れた際に食べたマグロがとても美味しくて…。それ以来、何かの節目のときは必ずマグロを食べようと決めて人生を生きてきました」

ミ「へー。じゃあ、今回の番組が決まった時も?」

ア「はい。番組の担当を受け持つときとか、打ち上げのときとか…。プライベートでも、節目の日には千寿司さんの『鉄火丼』を食べています」

ミ「アオちゃんを魅了する『鉄火丼』か…。これは盲点だったね~」

(ぐー)

ミ「あらら。将棋めしの話をしたらお腹がすいてきちゃったよ」

ア「とりあえず将棋めしの話はここまでにして、今日も右玉の棋譜を見ていきましょう」

 

第14回「振り飛車相手の右玉 対四間飛車編」

ミ「というわけでアオちゃん。今日も四間飛車相手の右玉の将棋を見ていくんだよね」

ア「はい。前回は右玉に囲うまでの過程を見てきました。今回は右玉に囲ってからの戦い方を見ていきます。今回は前回ご紹介してきた3局の棋譜から、ラジオネーム『YANE』さんの棋譜の中盤から終局にかけて見ていきます。まずは前回の局面を見ていきましょう」

 

(前回のF図・本テーマ図)

 

解説:今回は、先手右玉後手四間飛車+腰掛け銀の戦いの中終盤の展開を見ていきます。この局面に至るまでの過程を知りたい方は、前述のリブログ記事をご確認ください。さて、一見するとどこから手を付けるべきか難しいところですが、次の一手から先手が動きます。

 

テーマ図以下の指し手

☖7四飛 ☗7九飛 

☖7三桂 ☗7五歩

☖同歩 ☗同飛

☖7四歩 ☗7九飛

 

(1図)

 

解説:☖7四歩~☖7三桂は狙いの1つで、理想はのちに☖4一飛から☖8一飛と転回して8筋を攻めていくのが一例。対する先手は☖7四歩に☗7九飛と回り☗7五歩から一歩を持ち駒にしました。次の狙いは☗5五歩~☗5六歩の銀バサミです。1図から後手は銀バサミを警戒して☖4三銀と引きました。以降は5筋の位取りをめぐる攻防が続いて迎えた2図の局面はこちら。

 

 

この☖4五歩の一手に先手はどう応じるべきでしょうか?

 

ミ「ここまでを振り返るとジリジリした戦いだね」

ア「5筋の攻防はお互いの生命線ですからね。☖4五歩は決断の一手と言えるでしょう」

ミ「うーむ。どっちで取るか迷う…」

ア「ではここで、実際にこの局面を指した『YANE』さんとお電話がつながっていますので聞いてみましょう」

ミ「お、久々にリスナーに聞いてみるんだね。『YANE』さん、ありがとうございます!!」

ア「もしもし…」

 

2図以下の指し手

☗4五同桂 ☖同銀

☗同歩 ☖5五桂

☗5六銀打 ☖6七桂成

☗同銀 ☖6五歩

☗5二歩 ☖4一飛

☗3五歩 ☖4五飛

☗3四歩 ☖2二角

☗5六銀 ☖4一飛

☗4二歩 ☖3一飛

 

 

(3図)

 

解説:2図から☗4五同桂と桂馬で歩を払ったことで☖4五同銀~☖5五桂が実現しました。ただこの両取りはソフトにかけてみると互角の評価。ここで先手の方針は

①☗4四銀(角狙いで反撃)

②☗5二歩(飛車角をいじめる形に持ち込む)

③☗5六銀左(節約して受ける)

④☗5六銀打(徹底して受ける)

⑤☗5六歩(④より最善の受けで最善手)

などが候補手。本譜は④の☗5六銀打と受けることにしました。せっかくの持ち駒の銀を受けに利かせるのはもったいないとはいえ、攻めを受けるにはこの手しかないと思っていました。ただ、ソフトで検証してみてもやはりもったいなかったという結論でした。

 

さて、本譜の進行は後手が銀桂交換から☖6五歩と決戦に持ち込みます。☗5二歩は取ってくれれば☗4四桂で両取りを狙います。その後は両取りを仕掛けたい先手とそれをかわす後手の攻防が続きます。

 

3図以下の指し手

☗2四歩 ☖同歩

☗2三歩 ☖同金

☗3五桂 ☖3四金

☗4三桂成

 

(4図)

 

解説:先手は細い攻めを強引につなごうとします。その手順は☗2四歩~☗2三歩なのですが、やや無理攻めでした。以下、手順で成桂はできたものの、角が使えない状況では後手陣に迫るのは厳しく、評価値も後手優勢と判断しています。やはり2図から3図に至る過程での☖5五桂に対する☗5六銀打がまずかったということになります。

 

これで勝負ありかと思っていたのですが、戦いはまだ終わりません。後手は4図から☖6六角と飛び出しました。まだ後手有利であることに変わりないですが、やや形勢がもつれ始めます。そして迎えた5図の局面がこちら。

 

 

形勢は後手有利を維持してきましたが、先手も粘って決め手を与えません。5図の☗5一歩成は後手玉にプレッシャーを与えているようですが、実は駒が当たってないので放っておいても大丈夫なのですが…。ここで次の一手から形勢が傾きます。

 

 

ミ「先手苦しいけどなんとか辛抱しているね」

ア「『YANE』さんは5図の局面から反撃できるとは思わなかったと話しています」

ミ「ということは、後手に失着があったということかな」

ア「失着というわけではありませんが、どうも踏み込んだほうがよかったみたいです」

ミ「ふむふむ。じゃあここからの展開を見ていこうか」

 

解説:5図から後手は☖5一同飛とと金を払いました。しかし、ここでは代えて☖5八銀成と踏み込んでいく手が優りました。右玉の要である玉の側の金を払えるのは大きいということです。将棋ウォーズでの右玉の説明には「一度手がつくと極めて脆い」とありますが、本譜の☖5八銀成はその一例とも言えるでしょう。

本譜は☖5一同飛に対して、先手が☗5二銀と打ち込んだことで先手が優勢になりました。しかし、この将棋はこれで終わりではありませんでした。☗5二銀以降、形勢は先手優勢で進んできましたが、先手の私は寄せを誤ってしまい、またしても形勢はもつれてしまいます。そして迎えた6図の局面がこちら。

 

 

後手が☖4八同桂成と守りの金をはがして寄せにかかった局面です。先手から見ると、取るのも地獄、逃げるのも地獄のように見えます。果たして、この成桂は取るべきか、逃げるべきか…。次の一手からの先手の方針が勝負を決することになります。

 

ミ「形勢逆転から先手有利で進んできたけど…」

ア「この将棋の最後の関門を迎えましたね」

ミ「ここの応手を間違えなければ先手の勝ちか」

ア「ミギタマさんはどう見ますか?」

ミ「ひと目は取りたい!!でも角が利いてくるのがなあ…」

ア「では、実際の進行を見ていきましょう」

 

6図以下の指し手

☗2八玉 ☖3八銀

☗1八玉 ☖2九銀不成

☗同馬 ☖3八銀

☗2八馬 ☖3九銀不成

☗2七馬 ☖2八金

☗同馬 ☖同銀成

☗同玉 ☖3九角

☗2七玉 ☖2九飛

☗3六玉 ☖2五飛成

☗4六玉 ☖5八成桂

☗4五銀

 

(7図)

 

 

解説:本譜、先手の私は6図から☗2八玉と逃げました。これでギリギリ後手の攻めを余していると思っていましたが、ここでは強く☗4八同玉と取るべきだったのがソフトの評価です。以下☖5八とと駒をはがして攻めるも、王手が途切れた瞬間に角を払う手があり、後手玉に詰めろをかけて先手優勢という評価です。

本譜は☗2八玉と逃げてしまったことで、後手の金銀を使った寄せに対して先手が受けに回る展開に。☖2九銀不成に☗同馬と馬を引いて受けたことで、☖3八銀と馬を封じ込められました。こうなると後手玉が安全になり、先手玉は逃げ切れるか否かということになりますが、7図以下は後手が☖5七角引成と馬を作って王手をかけてからは先手玉は詰み筋に入り、172手で後手の勝ちとなりました。

 

(投了図)

 

ミ「うーむ、方針間違いで形勢がガラリと変わるとは…」

ア「将棋の面白さと怖さを垣間見た一局でしたね」

ミ「マンモス先生の本ではないが、スリルのリスクを感じた一局だったよ」

ア「豊川先生の右玉本のタイトル『スリル&ロマン』を地で行く将棋でした」

ミ「じゃあ、アオちゃん。このコーナーにいってみよう~」

ア「はい。スリーポイントチェックのコーナーです」

 

ポイント①:一歩を持って銀バサミ

ミ「先手の狙いはまず一歩を持ち駒にして…」

ア「銀バサミを狙う手順でした。実際には実現しませんでしたが、後手の腰掛け銀を引かせて攻めを牽制する効果がありました」

ミ「そのあとは5筋の位をめぐる攻防だったけど」

ア「そこで次のポイントです」

 

ポイント②:攻めを見据えた受け

ミ「2図から流れの☖5五桂が最初の分岐点だったね」

ア「『YANE』さんはここで『☗5六銀打がよくなかった』と話していました」

ミ「守りたい気持ちは分かるけど、もう少し節約して受ければよかったという評価だったね」

ア「結果として、反撃の時に持ち駒が乏しくなり先手苦しくなりました。反撃を見据えた受けも大事ですね」

 

ポイント③:弱気は最大の敵

ミ「この将棋は長い長い終盤だったね」

ア「お互いに踏み込むべきところで決めきれなかったことがその要因だったと思います」

ミ「『YANE』さん、馬を自陣に引いた瞬間は悔しかっただろうな」

ア「強く行くところは強く踏み込む。判断力も将棋には欠かせません」

 

ーエンディング

ミ「というわけで今回は先手右玉と後手四間飛車+腰掛け銀の将棋を見てきたけど」

ア「技の掛け合い、終盤の攻め合い、そして、一手のミス、方針ミスが勝敗を分ける。長い将棋の要因が詰まった内容でしたね」

ミ「スリル満点の右玉将棋。結果は負けだったけどみんな、楽しんでくれたかな?」

ア「ミギタマさん、負け将棋もありますが勝ち将棋もあります」

ミ「お、そうなんだ。じゃあ見せてほしいな」

ア「それは次回の放送までお待ちください」

ミ「というわけで、今日はここまで。お相手はDJ.ミギタマと」

ア「アシスタントのアオテツでした」

ミ「それではみんな、また次回。Good Night!!」

 

~♪(エンディングBGM)

 

以上で「右玉浪漫飛行」を終わります。続いて将棋俱楽部24の近況報告を行いたいと思います。ルール詳細はこちらから。

 

 

 

 

では報告に入ります。

 
総合成績:35勝45敗中断無勝負局1。勝率.438
(中断無勝負は原則対局数にカウントしない)
現在レート:868点 最高レート:1,288点
手番別勝敗
手番別勝率:先手番勝率.477 後手番勝率.388
 
今月は大きく負け越しで終えました。星の流れを見ると、先週は前半は3連勝4連敗3連勝。後半は2連勝から2連勝2連敗で勝ち越し。今週は前半から2連勝を3度記録も、最終盤で5連敗を喫し負け越しです。内容は、少し変化していく感覚でして…。具体的には戦型別の勝敗で詳しく話しますが、今まで敬遠してきた戦法も試してまずまずという感覚です。中終盤は相変わらず受ける内容の将棋が目立ちます。では戦型別の勝敗です。
 
自分から見た戦型
 
相手から見た戦型
 
今月は右玉が多かったです。採用傾向は先週から回復。使用する相手の戦型によって右玉にするか否かを変えているという感覚でしょうか。「右玉浪漫飛行」で四間飛車相手の右玉を検証していくうちに、どうも四間飛車相手に苦戦するかもということで四間飛車相手に右玉をやめてしまった感覚です。四間飛車相手には穴熊を採用することも増えました。
その穴熊はここまで五分の成績。狙うは松尾流穴熊で、実現するか否かとその後の指し回しは受けの感覚を用いての戦いです。
右玉以外は全体的に低調。右玉以外に勝ち越したのは角換わりのみ。これは戦型選択自体を見直したほうがよいのかもと思います。
 
相手から見た戦型は、居飛車は矢倉。振り飛車は四間飛車が多かったです。矢倉は急戦策に苦戦し負け越し。じっくり指したい自分ですが、早めに仕掛けたい相手に苦戦を強いられているという感覚です。
四間飛車はオーソドックスな美濃囲いからの派生(主に高美濃)が目立ちます。対抗策は右玉から穴熊にシフトチェンジの感覚ですがまだしっくり来ていません。
 
今後の展望としては本格派の指し回しに切り替えるか、力戦派を維持していくかの戦い方の方針の問題点から洗い出したいところ。苦悩の日々は続きます。
 
 
 
雑記帳⑭「新規定②
以前、当ブログでは今年2月に将棋連盟が運用が始まった「マスク規定」に関する内容を書かせていただきました。
そしておととい、初めてマスク着用違反による反則負けが適用されたのです。今回反則負けと判定されたのは佐藤天彦九段。「貴族」の愛称でおなじみ、名人戦3連覇の実績もあるバリバリのA級棋士です。まずは、反則負けに至るまでの経緯を振り返ります。映像も残されていたので、こちらも併せてご覧いただければと思います
 

 

おととい行われたA級順位戦4回戦。佐藤天彦九段と永瀬拓矢王座対局中に「事件」は起きました。映像では局面は後手番の佐藤天彦九段が優位に進めて終盤戦を迎えます。その終盤のさなか、佐藤天彦九段は水分補給のためにマスクを外しました。その後の映像では、佐藤天彦九段がマスクを外して盤面を見つめる姿が長く映し出されます。やがて永瀬王座は終盤の持ち時間が切迫した状況の中で離席が増えていきます。そして局面が大詰めを迎えた中で、突然将棋連盟の理事を務める鈴木大介九段が入室。鈴木九段の指示で対局が一旦ストップとなり、対局者は別室に呼び出されます。
 
その後の報道によれば、112手目のところで永瀬王座から「反則負けではないか」との指摘があり、当時立会人が不在だったため連絡を受けた鈴木九段が急遽駆け付け、会長の佐藤康光九段と協議。その結果、佐藤天彦九段の反則負けが決まりました。
 
反則負けの内容は将棋連盟の「臨時対局規定」の第3条を適用したものであると推察されます。規定を簡単に説明しますと…。
 
第1条では対局中は「一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用しなければならない」とあります。但し書きでは、健康上やむを得ない理由があって、あらかじめ届け出て「常務会の承認を得た場合」は例外です。
第3条では前述の第1条規定に違反した場合は、「対局規定第3章第8条冒頭各号の違反行為に準じる反則負け」とみなされます。対局規定における「違反行為」とは二歩や連続王手の千日手などといった盤上の反則負けのことを意味するので、今回のマスク規定違反は将棋の反則と同じように負け扱いとなります。
 
前述の毎日新聞の記事によれば、反則負けを通達された佐藤天彦九段は以前はマスク着用の注意を受けていたとして「今回は注意も受けていない」として、反論するも判定は覆らなかったとのこと。常務会に提訴することも検討されているとのことです。
「臨時対局規定」の第4条では、判定に不服がある場合は「判定後1週間以内」に常務会に提訴することができます。なので今後の佐藤天彦九段の対応に注目が集まることは間違いないでしょう。
 
 
この「反則負け」の報道は、将棋界の枠を超えて様々な意見が上がりました。プロ棋士の間では若手棋士を中心にTwitterで意見が飛び交いました。
 

 

 

 

また、一部の著名人がこの「事件」に大きく反応。「対局中はマスクが必要なのか?」という論争に飛び火しました。

 

今回の報道を受けてTwitterは紛糾の状態。反則を指摘した永瀬王座を非難する意見や、「悪法もまた法なり」ということわざを用いて佐藤天彦九段を悪く言う意見。その一方で、今回の規定に「欠陥」があるとして「#佐藤天彦九段の反則負けの撤回を求めます」というツイートも数多く見かけます。また、今回の反則負けの裁定を下した経緯から将棋連盟の体質を批判する意見もあります。

とりわけ、鈴木九段と佐藤康光九段も非難の対象に。鈴木九段は永瀬王座の修業時代から知る間柄。「蜜月」という言葉を用いて、「永瀬と仲良しだから」という理由で永瀬王座に有利な裁定を下したのではないかというツイートもあります。

佐藤康光九段は会長職の立場でありながら、ご自身も現在順位戦A級に在籍されているという観点で利害関係にあたることから、「残留争いのライバルを蹴落とすためにこんな裁定をしたのではないか」というコメントも見かけます。ちなみにおとといのこの対局終了時でA級順位戦は全員4局消化。成績は永瀬王座(6位)は2勝2敗。佐藤康光九段(7位)は0勝4敗。佐藤天彦九段(3位)は1勝3敗です。

 

と、ここまで経緯と将棋界内外の反応を見てきました。やはり盤外の規定で反則負けになってしまったこと。しかもその現場がA順位戦という棋士にとって最も大切な対局(どの対局もプロ棋士にとっては大切ではありますが…)で起きてしまったことが、この報道をさらに大きくさせているのが分かります。

 

 

さて、私の今回の件についての意見を述べさせていただきます。まず結論からして言えば、佐藤天彦九段に対するペナルティー自体は致し方ないという意見です。しかし、反則負けの判定とそこに至る過程には問題があったのではないかということです。その理由は、規定の内容と実際の運用方法にあります。

 

もう一度「臨時対局規定」の第1条を読み返してみると…。「一時的な場合を除き」とあります。おそらく、対局中の水分補給を想定して作られた文言ですが、細かな規定がありません。例えば、順位戦なら何分間外していると反則の対象にするなど、あらかじめ設けていればこのような事態は起きなかったでしょう。

実際の運用方法の問題としては臨時規定の第4条において、反則負けの判定は立会人が行うとしたうえで、不在の場合は「立会人の任を代行するものが行う」とあります。タイトル戦でもおなじみの立会人ですが、通常の棋戦でも立会人が付きます。今回は立会人が不在ということで代行者として鈴木九段が協議のうえで裁定を下したということになります。

 

将棋会館で行われる対局に立会人がついたのは10年ほど前からとのこと。お仕事の内容については、田丸昇九段がブログで書かれておりましたので参考までに記事リンクを掲載いたします。(ただ、記事が8年前なのでやや古いかもしれません)

 

 

立会人が不在のこと自体は何とも言えません。しかし、立会人が不在の場合にどう対処するかは今後の課題と言えるでしょう。立会人を1日複数人制にするかなども今後の議論になるかもしれません。

 

せめて裁定を下す前に立会人が注意を促すべきだったという意見もありますが、この意見には同意します。とある記事によれば、囲碁界でもマスク着用の規定が設けられているとのこと。立会人の棋士はマスク着用を求めて警告を発し、従わなければ反則負けにするという措置を取っています。囲碁界では今のところ今回の将棋界で起きたマスク着用に関する反則負けは出ていません。

 

今回の佐藤天彦九段の言い分を読む限りでは、注意がなかったのにいきなり反則負けを宣告されるのはおかしいのではないかということで納得ができないのも理解はできます。私も正直、いきなり反則負けというのはどうなのだろうかというのが率直な意見です。せめて、柔道の「指導」みたいな感覚で立会人が注意喚起ができなかったものかと思っています。あるいは、今回の対局料の一部カットなどの処分が妥当かと言えます。

 

ただ、終わりが見えない中でのこの規定。今回のこの事件が規定の見直しのきっかけになってくれればとは思います。ツイートでも見かけたのが、もう少し柔軟に規定を適用できなかったものかという意見です。

 

 

そして気になるのは、お二人の今後です。渦中の永瀬王座、佐藤天彦九段ともに明日からの週は重要な対局を迎えます。

永瀬王座は明日、王将リーグで羽生善治九段と対局が予定されています。こちらは囲碁将棋プレミアムで中継があります。

 

 

冒頭でも触れましたが、羽生九段は現在王将リーグ4連勝中。羽生九段が勝てば、挑戦権争いに大きく前進することになります。おそらく、様々な意味で注目を集めるのは必至でしょう。

 

 

佐藤天彦九段は11/3(木・祝)に棋王戦挑戦者決定トーナメントで藤井聡太竜王との対局が予定されています。

 

 

棋王戦はここまで挑決トーナメントはベスト4が出そろっています。準決勝のもう1つは羽生九段と伊藤匠五段の対局です。

本来ならば楽しみにしたい中継のはずですが…。まずは佐藤天彦九段の精神面が心配されます。

佐藤天彦九段はTwitterもされており、対局の結果や内容を丁寧に解説されています。しかし、ご本人のツイートはNHK杯の三浦九段戦のツイートを最後に1週間近く更新がされていません。おとといの「事件」以降、心配するコメントがある一方で、批判のコメントが出ているのも事実。今はただ、無事に佐藤天彦九段が無事に対局できるよう祈るばかりです。

 

 

将棋界だけでなく、社会全体に投げかけられた「マスク」をめぐる反則負け。つらく、苦しく、悲しい出来事ではありますが、「この事件が将棋界のよりよい未来につないでいくために一石を投じた」と後から振り返られる未来であることを願うばかりです。

 

 

さて、いろいろと話してきましたが、今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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