「振りミレ」の世界を学ぶ | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。久しぶりに将棋世界にイラストが掲載された雁木師でございます。ちなみに今回掲載されたイラストはこちら。

先月惜しまれながら閉店した更科食堂さんの「塩サバ定食」を掲載させていただきました。将棋世界さん、いつも本当にありがとうございます。この絵が掲載されているのは昨日発売の将棋世界の4月号です。

 

 

 

 

もちろん、ほかの方の作品もどれも素敵なものばかりです。ぜひ、将棋世界4月号をお手に取って「あつまれ!描く将」をチェックしてみてください。当ブログや、将棋世界を見て描く将に挑戦したい方が出てくださったら嬉しいです。

 

それでは本題に入ります。今日は書籍のご紹介です。今回ご紹介するのはこちら。

振り飛車の書籍のご紹介ですが、先手の陣形にご注目ください。美濃囲いのように見えますが金銀の位置が1マスずれていますし、銀の下に玉がいます。穴熊とも言えないけど玉が遠くて捕まりにくく見えるでしょうか。

この戦型は「振り飛車ミレニアム」。通称「振りミレ」と呼ばれる戦型です。今回はこの戦法の書籍のご紹介です。

 

 

「マイナビ将棋BOOKS

将棋革命!

振り飛車ミレニアム戦法

でございます。

著者は村田顕弘(むらた・あきひろ)六段。マイナビ出版より2年前の3月に発売されました。著者の村田顕弘六段については以前ご紹介した書籍の記事を掲載いたしますのでこちらからご参照ください。

 

現在は竜王戦は4組、順位戦はC級1組で4勝5敗の成績です。今期の叡王戦では段位別予選の六段戦を勝ち上がり本戦トーナメント進出を果たしました。その本戦トーナメントでは1回戦で出口若武五段に敗れました。

 

ここで書籍の内容に入る前に「振り飛車ミレニアム」の「ミレニアム」とは何かをお話しします。実は「ミレニアム」というのは居飛車の囲いの一つです。下図の局面をご覧ください。

こちらは本書の序章で取り上げられている居飛車のミレニアム囲いの将棋の局面です。先手の囲いはその名の通り2000年あたりから指されはじめ、三浦弘行九段がこの時代によく採用されました。「ミレニアム」という名称の他にも「三浦囲い」「トーチカ」「かまぼこ囲い」などとも呼ばれています。

この囲いが採用された背景には当時猛威を振るった藤井システムの存在があったと言われており、システム対策で用いられたとされています。居飛車ミレニアムの特徴は主に2つ。

・玉の遠さ

・穴熊にも劣らない堅さ

冒頭の局面の居飛車穴熊は完成すれば堅いものの、角のラインに玉が入っており、端攻めや角と桂馬のコンビで攻め込まれる一気に崩壊するリスクがあります。

一方、ミレニアムは玉が角のラインに入ってなく、守りも金銀の連結がよいことから穴熊に代わる藤井システム対策として有力視されたのも理解できます。

弱点としては、守りが堅くなる分攻め駒が不足する懸念があること。先ほどの局面は右銀も守りに使っているため攻めが細くなるリスクがあります。

 

そして今回紹介する「振り飛車ミレニアム」は、ミレニアムの誕生からおよそ20年の歳月を経た数年前に登場。特徴としては穴熊とほぼ同じ堅さと遠さであることは居飛車ミレニアムとよく似ています。

弱点としては、居飛車が持久戦狙いでのみしか囲えないこと。ゆえに、囲う段階での急戦策への対応が課題となります。

 

本書では、その対応策も含めて居飛車の様々な囲いに対応した「振りミレ」の戦い方を学べる内容です。では、その構成を見ていきます。

序章「振り飛車版ミレニアム囲い概要」…前述した内容を踏まえて、「振りミレ」の戦い方と本書の重要となる局面を簡単にご紹介されています。

第1章「VS左美濃囲い

先手の左美濃に対して後手が「振りミレ」狙いで対抗する場合のポイントを解説されています。章の前半は先手が急戦策を狙う場合、後半は銀冠穴熊などへの派生を狙う持久戦策の場合が書かれています。上図はまだ「振りミレ」は未完成ですが早くも分岐となる局面です。ここから「振りミレ」に囲う過程については、ぜひ本書を読んでご確認ください。

 

第2章「手広く構える☗3六歩型

この局面は先手が☗3六歩を突いて急戦と持久戦の両狙いを見せたところです。ここで先手が急戦策に出れば、後手は「振りミレ」はあきらめて美濃囲いに組んで一局ですが…。本書ではここから持久戦に進行した場合を3節に分けて解説されています。

第1節「VS天守閣美濃

先手が天守閣美濃に囲った場合、後手の「振りミレ」はどう戦うかの解説です。この局面は後手が☖6三金と上がったところです。「振りミレ」の理想は☖6二金寄が理想なのですが、この一手にはある狙いが隠されています。本書では「秘策」と紹介されているこの狙い。ぜひ本書を読んでチェックしてみてください。

第2節「相ミレニアム

お互いにミレニアムを目指すとどうなるかの解説です。先手が地下鉄飛車を目指す変化も登場します。

第3節「穴熊含み

先手が☗5七銀と上がって持久戦を匂わせる作戦を狙ってきた場合の解説です。「穴熊含み」とありますが、この節では先手は実際に穴熊に組むのではなく、穴熊と見せかけて後手が「振りミレ」を目指したら仕掛けていくという高等戦術なパターンの解説です。変化によっては「振りミレ」をあきらめるケースもあります。

 

第3章「VS居飛車穴熊

本書の「メイン」とされている先手の居飛車穴熊に対し、後手が「振りミレ」で対抗した場合の解説です。本書の中でもかなり分岐が深い局面となっています。

この章のポイントは先手の穴熊の囲い方。手順や形が変わることで後手「振りミレ」の戦い方も変化していきます。

 

第4章「端歩突き越し型振りミレ

後手が9筋の端の位を取ってから「振りミレ」を目指す作戦に先手が穴熊で対抗した場合の解説です。穴熊相手に端の位を取るのは有効とは言われています。しかし端に手をかけた分、立ち遅れてしまうと攻め駒が働かなくなるリスクがあります。先手穴熊はそれをどう咎めるか、そして後手はどう対応すべきか?その攻防の変化は本書を読んでお確かめください。

 

第5章「先手振りミレ

これまでの章とは違い、先手が「振りミレ」を目指し、後手が穴熊に囲う場合の戦い方の解説です。この章でも、「振りミレ」は守備側の1筋の端の位を取っています。なぜ、先手番で端の位を取ったほうがいいのかについては本書を読んでお確かめいただければと思います。後手が穴熊を完成させる途中で仕掛けてきた場合や、千日手に誘導する展開も書かれています。

 

第6章「復習 次の1手」…本書で出てきた局面を次の一手問題形式で出題。全部で20題出題されています。

また、コラムでは細川大市郎さんと変則将棋について書かれています。

 

 

各章の構成は、まずは基本図までの駒組みを紹介。そこから変化をいくつかの分岐に分けて解説(補足を交えて解説する変化もあり)。そして、すべての変化の検証が終わったら「まとめ」として要点を整理してポイントを解説されています。

第6章の次の1手問題は、まず2ページにわたって4題出題。次の2ページで解答と解説。という形式を20問まで繰り返すという構成です。

 

結果図を見てみると、全体的には互角と評価する局面が多かったです。今回は後手番目線が基本ですので、互角の評価なら後手は戦えるという評価です。著者の村田顕弘六段は、本書の形勢判断にAIを用いられたと述べられています。AIは振り飛車不利の傾向が多いので少しのマイナスはそこまで意識しなくてもよいという評価の姿勢です。

分岐の変化はとても深いと言えます。一歩でも指し手や方針を間違えると危ない変化も書かれています。また「振りミレ」一辺倒ではなく、美濃囲いや銀冠への変化のススメもあります。ベースは美濃や銀冠への派生も覚えなくてはいけないというところです。

 

 

実際に盤に並べた感想はというと…。私も一時期「振りミレ」をやってみた時期はありましたが、知識が不足した状態で指していたのでどうりで勝てないわけだと納得できました。その理由は形に固執する自分の将棋の悪い癖です。

前述しましたが、「振りミレ」は居飛車が持久戦を目指した時に力を発揮する戦法です。となると急戦策への対応や、攻めの仕掛け方、タイミングなどがカギを握ります。私が勝てなかった要因は柔軟性と積極性に欠けていた点でしょうか。

居飛車の攻めに耐えてカウンターで返すのはいかにも振り飛車らしい戦い方でした。戦いへの備え方なども学べます。

実戦譜の紹介もありがたいポイントです。プロ棋士がどう「振りミレ」を生かすのか、ぜひ本書を読んでご確認いただきたいところです。

 

さて、本書は新時代の振り飛車を告げる戦法の書籍です。将棋情報局のサイトによれば、難易度は初級~中級者向けとあります。振り飛車党、特に四間飛車を指される方はぜひおすすめしたい一冊です。居飛車党の方も特に穴熊などの持久戦を好まれる方は有利になる変化も書かれていますので読んで損はない一冊かと思います。昨年は升田幸三賞候補にもノミネートされた「振りミレ」。新時代の対抗形の攻防をぜひ本書を読んで、実際に指して体感してみてください。

 

 

この本を読んで将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければこれほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は3/18(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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