羽生流「現代将棋」の読み解き方 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様、新年あけましておめでとうございます。今年の正月も仕事に追われた雁木師でございます。本年も当ブログをどうぞよろしくお願いいたします。さて、新年初投稿の今回は書籍のご紹介です。今回は羽生善治九段がコロナ禍の中で書かれた「定跡本」をご紹介します。

「最強将棋21
現代調の将棋の研究

のご紹介です。

浅川書房より昨年5月に発売されました。著者の羽生九段については(といっても説明は不要ですが…)以前ご紹介した書籍にてプロフィールを紹介しています。下記記事をご参照ください。

 

 

当ブログで紹介した羽生九段の書籍については下記記事リンクをご参照ください。

 

 

 

なお現在は、竜王戦は1組、順位戦はA級に在籍。今期の順位戦は本日の対局前の時点で2勝4敗の成績です。昨年は王位戦の挑戦者決定戦に進出もタイトル挑戦はなりませんでした。

一方、第4回ABEMAトーナメントではドラフトで中村太地七段、佐藤紳哉七段(指名順)を指名され「チーム羽生 in the zone」を結成。予選リーグでの中村太地七段の3連投3連勝が話題を集めました。

 

では、書籍の内容に入ります。本書は浅川書房の「最強将棋21シリーズ」における羽生九段の最新の書籍です。「最強将棋21シリーズ」では羽生九段の書籍が何冊も出ています。

 

 

 

 

さて、肝心の本書「現代調の将棋の研究」は、羽生九段の視点で現代将棋のテーマとなっている局面を解説する内容です。解説だけでなく、プロ間における結論や傾向なども評価されています。

構成はプロローグ+居飛車と振り飛車に分かれての2部構成でどの戦型・局面からでも読むことができる仕組みです。

まずはプロローグ「各戦型の現状について」と題して今回紹介する現代将棋を戦型別に簡潔に紹介。どんな戦法が流行しているか、どんな局面がテーマなのかをこれで簡単に押さえることができます。

第1部は「居飛車編」。矢倉、角換わり、横歩取り、相掛かりの順に掲載されています。全部で24テーマ掲載されており、内訳は矢倉に5テーマ、角換わりに10テーマ、一手損角換わりに1テーマ、雁木に1テーマ(角換わり拒否として紹介)、横歩取りに3テーマ、相掛かりに4テーマとなっています。

さらに詳しく見ていきますと、矢倉は急戦矢倉に3テーマ、脇システムをめぐる攻防に2テーマです。最も多い角換わりは、腰掛け銀に6テーマ、早繰り銀に3テーマ、桂跳ね速攻に1テーマとなっています。一手損角換わりは棒銀をめぐる攻防、角換わり拒否の雁木は右四間飛車との攻防が掲載されています。横歩取りは青野流に2テーマ、ひねり飛車模様の変化に1テーマ掲載。締めくくりの相掛かりは、4テーマすべて「新型」と呼ばれる飛車先をいきなり交換しない局面が基本となっています(「新型」相掛かりに関しては下記記事リンクをご参照ください)。

 

第2部は「振り飛車編」。四間飛車、三間飛車、中飛車、石田流、ゴキゲン中飛車、角交換向かい飛車の順に掲載されています。全部で12テーマ掲載されており、内訳は四間飛車に5テーマ、三間飛車に1テーマ、中飛車に2テーマ、石田流に2テーマ、ゴキゲン中飛車に1テーマ、角交換向かい飛車に1テーマ掲載されています。

さらに詳しく見ていきますと、最も多い四間飛車はエルモ囲いをめぐる攻防に2テーマ、急戦の新構想に1テーマ、ミレニアムに1テーマ、振り飛車ミレニアムに1テーマとなっています。三間飛車は居飛車穴熊の新対策「トマホーク」が掲載。中飛車は2テーマとも先手中飛車で、相穴熊に1テーマ、角道を開けない指し回しに1テーマとなっています。石田流は居飛車が1筋の位を早々と取る攻防に1テーマ、お互いに石田流を目指す「相石田」に1テーマ掲載されています。ゴキゲン中飛車は超速との攻防、締めくくりの角交換向かい飛車は「☗6五角問題」をめぐる攻防が掲載されています。

 

 

特徴としては、文章を見る限りでは「工夫が必要」、「回避する傾向」、「適切に対応できれば」という文言が結論で目立ちます。

「工夫が必要」というのは形勢をよくするには本書で示した変化より、さらに何か手を加える、もしくは省くということだと考えます。将棋では「この手が余計だった」とか「代えてこの手がよかった」と感想戦で言葉を交わすのはよくある話で(囲碁でも同じだと思いますが…)、従来の定跡に工夫した手順を披露して「新定跡」を創るという歴史の開拓を感じさせます。

「回避する傾向」というのは、この変化で指せないのならその変化は指さないという意味と考えます。たとえどれだけ手を加えたり省いたりして工夫したとしても勝てないのなら、その変化の局面に持ち込むのはやめようということです。どんなに優秀な戦法でも勝てなくなれば淘汰されていきます。また、どちらかに優劣がつく局面は劣勢側が回避していくことで消えていきます。悲しい現実ではありますが、戦型の流行り廃りを経て現代将棋が形成されていくことを感じさせます。

「適切に対応できれば」というのは、指し手に対する応手を誤ってしまうと一気に形勢に差がつくが、正しく応手すれば大丈夫ということと考えます。これは仕掛けの応手に対してよく使われるもので、主にぶつかった駒を取るか否か、あるいは複数の駒がぶつかったときに何をどの駒で取るかで局面の優劣が変化するということです。また、ここは踏み込むか手待ちをするかといった迷う局面やどこから仕掛けるかといった「選択」という局面の時にも使われます。将棋は選択の連続。特に攻めを受けるときはどうすればしのげるかは常に考えさせられます。そしてよく考えずに指して自滅というケースに泣かされることいくばくか…。

 

角換わりの戦法にテーマが集中しているのは、角換わりの研究がプロ間ではある程度飽和状態を迎えたことが影響しているのではないかと考えます。以前も話したことがありますが、最近のプロの流行は相掛かりにシフトしている感が否めず、まだまだ「新型」定跡の整備が進んでいないことも本書における相掛かりのテーマが少ない要因と言えます。とはいえ、相掛かりでも短いサイクルで細かいテーマ局面の流行の流行り廃りがあるようです。

振り飛車のテーマが少ないのは、やはり振り飛車党がプロ棋士に少ないことが要因なのですが、流行自体がゴキゲン中飛車や石田流と言った角道を止めない「オープン振り飛車」から昔ながらの角道を止めた「ノーマル振り飛車」に回帰したことも要因ではないかと推察できます。あとは穴熊に「絶対に組ませないで勝つ」から「あえて組ませて勝つ」と意識への変化も大きいでしょうか。

最近の対抗形においては居飛車は急戦と持久戦の両狙いの戦い方に変化しました。ゆえに振り飛車の戦い方も進化を遂げ、急戦・持久戦のどちらにも対応できる戦型が脚光を浴びました。本書ではエルモ囲いや振り飛車ミレニアムといった新時代の戦型も登場しますので、ぜひ最新の対抗形の戦い方を本書でチェックしてみてください。

 

実際に並べてみた感想はというと…。全体としては結果図はすぐに優劣がつく変化が少ないという印象でした。「いい勝負」と評価されている局面が多かったです。1テーマのページは少ないですが、分岐は多めの印象です。

相居飛車の将棋では千日手模様になる変化も多く、先手に「工夫が必要」という変化が目立ちます。対抗形の将棋はどちらかといえば、やや居飛車が指せるという展開が多かったです。とはいえ、振り飛車はまだまだ未開拓の余地も残しているのも事実。今後は銀河戦優勝の菅井竜也八段の新構想や女流棋戦に注目したいところです。

ソフト発祥や若手棋士の手を取り上げられているのも大きいところ。藤井聡太竜王の初タイトルのシリーズの将棋も変化図で登場します。ぜひ、本書を読んでご確認ください。

 

さて、本書は現代将棋を読み解くうえで欠かせない内容となっています。基本的にはどの戦型も網羅していますが、構成を見た限りでは居飛車党の方、とりわけ角換わりを指される方はぜひ読んでいただきたい一冊かと思います。振り飛車党の方も四間飛車党の方は読んでいただきたい内容が目立ちます。もちろん、主だった戦型はすべて入っていますのでどこからでも読める構成です。得意戦型から読んでもよし、苦手な戦型から読んでもよし、未開の局面を研究してもよしとなっています。

ただ、難易度としては少し高めかと思います。「現代将棋」を取り上げていますので、ある程度の基本が備わってないとなかなか指しこなすのは難しいかと思います。とはいえ、読んでみると丁寧な解説ですので、ぜひご購入を検討いただければと思います。

 

 

この本を読んで、将棋が好きになった、将棋が強くなったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋が好きになる、将棋の力が強くなることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は1/21(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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