読者の皆様こんばんは。将棋世界2月号のA級順位戦予想クイズの存在をすっかり忘れていた雁木師でございます。
今日は「角頭歩の大冒険」の19回目と将棋倶楽部24の近況報告を行いたいと思います。長文となりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
まずは「角頭歩の大冒険」から。今回も前回同様、ストーリーは格闘歩(かくとうふ)君と一緒に、将棋の解説は角豆腐(つの・とーふー)君と一緒に進めていきたいと思います。
格闘歩君についてはこちらから。
前回のシリーズをおさらいしたい方は下記リブログ記事をご参照ください。
それでは「角頭歩の大冒険」の19回目「先手番角頭歩~居飛車の戦い(2)」の始まりです。
※なお、このストーリーに出てくる人物、団体、出来事などは一部を除き架空のものです。実際の人物、団体などとは一切関係ありません。
ー帝王日報の山田記者が雁木師を取材中のこと。
山田(以下山)「そういえば気になることがありまして…」
雁木師(以下雁)「なんでしょうか?」
山「えっと…さっきあなたのお部屋にいた『彼』のことですが」
雁「『彼』…。格闘歩君のことでしょうか?」
山「そうそう、格闘歩さん。あなたのことを『雁木師』と呼ばれていましたね」
雁「ああ、あのことですか」
山「あなたは雁田(がんだ)という本名がありますが、なぜ彼に『雁木師』と呼ばれているのか気になりましてね」
雁「…これは、さきほど話した私の自殺未遂と関係しています」
山「ほお…。それは興味深いですね。詳しくお話しいただけますか?」
ー話は雁木師の異世界転生に移る。雁木師の記憶では取り調べを受けていた警察署のトイレから格闘歩君の世界にやってきた。しかし、彼は詳しい記憶は覚えていなかった。その時!!
?「雁木師。我のことを話す気か?」
雁「!!あなたは…『ポンケイ』ですか?」
山「?雁田さん、どうされました?」
雁「!!あ、失礼。ちょっとすみません」
山「?」
ー雁木師は自室に移動した。そして…
雁「いい加減、姿を示したらいかがですか?舟囲井本桂(ふなかこい・ほんけい)さん」
舟囲井本桂(以下舟)「…そうか、すっかり気づいたか」
雁「さすがに気づきますよ。もう私はあなたの策略の道具にされるのは…」
舟「なぜ我が其方に『雁木師』と名付けたか分かるか?」
雁「…考えたこともありませんでした。今後も考えるつもりもありませんが」
舟「あの組織は『将棋』に由来がある名の持ち主が多い」
雁「『将棋』ですか…」
ーそのころ、格闘歩君は雁木師の元上司・御多福(おたふく)と接触していた。
御多福(以下御)「格闘歩君、まずはどうやってこの世界へ来たんだ?」
格闘歩君(以下格)「え?えっと…雁木師の旦那のパソコンから来たぜ」
御「パソコン?」
格「ああ。全身写真を撮らされて、そのメールを使って来た」
御「それだけ?」
格「そういえば…。旦那が意味深なメール内容にしたんだよ」
御「意味深?」
格「確か件名に『ポンケイ』、本文に『ボナンザ』と書いて送るようにと言われたんだ」
御「『ポンケイ』!?」
格「で、こっちの世界に来る直前に『ポンケイ』という奴の声を聴いた気がするんだよな」
御「…『ポンケイ』の声を聞いたのはどこかな?」
格「確か、旦那が引きずり込まれたというトイレからだった。旦那はそのトイレの便器から引きずり込まれて元の世界に来たと言ってたぜ」
御「たしか『雁木師』は警察のトイレで見つかったと聞いた。ところで、君は『ポンケイ』のことは知っているか?」
格「知らねえな。あ、でも」
御「?」
格「俺、『ポンケイ』ってやつに『戦えることを楽しみにしている』と言われたんだ」
御「戦う?」
格「ああ、意味が分かんないまま奴は消えちまったから…」
御「(もしかしたら…)格闘歩君、すぐに雁木師の家に向かおう!!私も一緒に行かなくてはならない」
格「え、いいけど」
御「万が一にも、二の舞になる可能性がある事態は避けたい。さあ、私の車に乗るんだ」
格「あ、ああ。すまねえ(なんで慌ててるんだこのオッサン)」
ーこうして格闘歩君と御多福は雁木師の家に向かうことになった。御多福の予感は的中することになる。
解説:さて、ストーリーも気になるところですがここからは将棋の解説をしていきたいと思います。今回も角豆腐(つの・とーふー)君と一緒に進行していきます。
角豆腐君についてはこちら。
角豆腐君(以下角):「よろしくねー」
解説:今回のテーマ図はこちら。
角「あれー。今日も中飛車相手の角頭歩かな?」
解説:今回も先手番角頭歩と後手の中飛車の戦いを解説していきたいと思います。前回は後手の相手が左穴熊に囲う持久戦での戦いでした。今回は後手が中飛車から仕掛けた将棋を見ていきます。題材の局面は今月の私の将棋倶楽部24の実戦から。持ち時間設定は「早指」。先手番が私です。
テーマ図からの指し手
☗9六歩 ☖9四歩
☗6八玉 ☖5五歩
☗4八銀 ☖1四歩
☗5八金 ☖1三角
(1図)
角「後手の攻めが厳しそうだねー」
解説:ゴキゲン中飛車は角道を開けるのが基本ですが、本譜の後手は1筋の歩を突いて☖1三角と端角で先手の6八の玉をにらむ狙いと☖5六歩から殺到する狙いがあります。先手は1図から☗7八玉と指し、☖5六歩に☗同歩と取りました。以下
☖5六同飛 ☗8七玉
☖6二玉 ☗7八銀
と進行します。
(2図)
途中の☖5六同飛には☗8七玉と玉で☖7六飛を防ぎました。☗7八玉と早逃げしたのは☗8七玉を実現させ、天守閣美濃を完成させる狙いがあったからです。☗7八銀と上がって天守閣美濃は完成しました。
角「後手は玉を右にいかせたねー。片美濃狙いかなー」
解説:2図以下の指し手は
☖7二玉 ☗2六歩
☖8二玉 ☗2五歩
☖7二銀
と進行し、後手は浮き飛車のまま片美濃囲いを完成させました。
角「結局持久戦になったねー。後手は右辺の金銀が全く動いてないけどー」
解説:☖7二銀以下は先手が後手の浮き飛車に狙いをつけて追い回し、後手は右辺の金銀を中央に繰り出します。そして迎えた3図の局面がこちら。
先手は飛車を浮かせて活用を図りましたが後手の金銀に押さえ込まれてやや窮屈な展開に。角も桂馬が邪魔で活用が難しく、大駒の働きでは後手に分があるように見えます。ソフトの評価は互角もやや先手より。3手1組で☖5三金を咎める手順を推奨していましたが…。
角「咎めるって言われてもー、ボークは分かんないや」
解説:ソフトが示した3手1組の手順は
☗6六歩 ☖5四歩
☗6五桂
でした。
(変化図)
変化図の局面で
☖5五歩の飛車取りは☗5三桂不成と桂馬の不成で踏み込み…
①☖5六歩と飛車を取れば☗6一桂成で守りの金もはがして先手有利。
②☖5三同銀と桂馬を払うのは☖5五飛と飛車取りを解除して☖5四銀に☗8五飛と逃げて互角。
また、変化図で☖5二金引とアタリをかわすのは☗5四歩と取り込んで先手優勢です。
角「うひゃー。①の変化はー、飛車を取られてもー、後手の守りの金がはがせるからー、先手よしというわけだねー」
解説:本譜に戻ります。本譜は3図から
☗6六歩 ☖5四歩
☗同歩
と進行して後手が指せる展開になりました。
以下
☖5四同金 ☗6五歩
☖5五銀
と進行して4図。
この局面では先手の飛車が助からず、後手が有利です。途中の☗6五歩の一手が☖5五銀を呼び込んだ形となりました。代えて☗3五歩なら次に☗4六飛と飛車交換を誘って先手で飛車を打ち込む狙いでまだ戦えるのがソフトの見解です。
角「ありゃりゃのりゃー。先手がかなり悪くなっちゃったー」
解説:4図以下は
☗5七飛 ☖同角成
と飛車角交換から後手が5筋から殺到。先手は自陣に角を打って粘るも後手の攻めが速く、一気に寄せきって88手で後手の勝ちとなりました。
(投了図)
投了図は合い利かずの詰みです。
角「角頭歩の完敗だったねー。あの☗6五桂が実現したら違ってたかもねー」
ー角豆腐君が雁木師の棋譜を見つめているとき、雁木師の世界では…
ードンドン!!
御「雁田君、いるのか?」
格「旦那~!!」
ーガチャ
山「あ、あ…」
御「あなたは…、記者の方ですか?」
山「た、た、た、助けてください…。雁田さんが…」
格「旦那に何があったんだ?」
山「ひ、ひ、ひ、豹変して取材ができないんです」
御「豹変?彼はどこに?」
山「そこのお部屋にこもったままです」
格「!!オッサン、俺が行ってみる」
御「格闘歩君、頼む。私は記者の方を避難させる」
ードンドン!!
格「おーい!!旦那~!!いるなら返事してくれ!!旦那~!!」
ーガチャ
?「我に何の用か?」
格「!?(これは…旦那ではない)あんた、何者だ?」
?「我の名は舟囲井本桂。雁木師の体を借りている。すべては英銘堂への復讐のために…」
格「あんた、もしかして…。『ポンケイ』か?」
舟「…いかにも。雁木師の体をしばらく借りる。復讐が終われば体は返す」
格「復讐って…。あんた、何をする気だ?」
舟「英銘堂を破壊する…」
格「お、おい…やめろよ。旦那を犯罪者にする気か!!」
舟「雁木師に罪はない。しかし、現状の英銘堂には納得ができぬ!!それに…」
格「それに?」
舟「破壊するのは、英銘堂の建屋ではない。建屋を運営する組織を壊す」
格「どういうことだ?」
ー雁木師は舟囲井本桂に体を乗っ取られてしまった。本桂は英銘堂の組織破壊を企んでいた。果たして、格闘歩君は本桂のたくらみを食い止めることができるのか?そして、雁木師の運命はいかに?次回へ続く
雁「(格闘歩君…頼む。君しか暴走を食い止めることは…)」
では、今回のまとめです。
・すぐの仕掛けには早逃げで対処
・取られてはいけない7六の歩
・歩のぶつけには応じる前に考える
今回検証した対局を振り返ると、序盤は先手角頭歩~居飛車と後手中飛車からの早仕掛けの攻防となりました。特に端角もあって☖5六歩を狙われていたので早めに玉を7八に逃がしました。この一手はとても大きく、のちの☗8七玉から天守閣美濃に囲う上で欠かせない一手となりました。
本譜の☗8七玉では、代えて☗6六角が最善手に浮上しました。これも☖7六飛と7六の歩を取られるのを防ぐ一手です。本譜はのちに角が全く働かなかったので、☗6六角も検討に入れてもよかったかなと思います。とにかく、☖7六飛を許すと後手が一歩得になるだけでなく、先手の駒組みも若干の制限がかかってしまい、天守閣美濃ができなくなる可能性があります。
本譜の敗着は3図の☖5四歩に対する応手でした。実戦は平凡に☗5四同歩と取ってから後手有利となりましたが、代えて☗6五桂と☗6六歩を生かす手が指せなかったのが痛かったです。「ぶつかった駒は取るのが基本」とはよく教えられましたが、駒がぶつかった場合は素直に指す前に考える癖を身につけたいものです。
今回で、先手番角頭歩~居飛車と後手中飛車の攻防の棋譜はこれで終わりたいと思います。次回も先手番角頭歩~居飛車の戦いを取り上げますが、相手の戦型については再度棋譜を調べ直して検証していきたいと思います。角頭歩を試したい方は、今回取り上げた棋譜や局面が参考(または反面教師)になると幸いです。
以上で「角頭歩の大冒険」の19回目を終わります。続いて将棋倶楽部24の近況報告を行います。ルールについては「角頭歩の大冒険」の記事内にあるシリーズ18回目のリブログ記事をチェックしてください。
では、報告に入ります。
北野新太/報知新聞社@kitano_arata将棋連盟が対局者のマスク着用を義務化 マスクなしは反則負けに : スポーツ報知 https://t.co/DZfF7vZ9Uv
2022年01月28日 17:28
将棋連盟からの正式な発表はまだありませんが、2/1(火)からの対局において、対局者は対局中にマスクの着用を義務付けるという規定が設けられることになりそうです。
スポーツ報知の記事によると、規則内容は以下の通りです
・対局中は一時的なケースを除いてマスクを着用しなくてはならない
・着用するのは原則として不織布マスク
・着用しない場合は違反行為として反則負け
・反則負けの判定については立会人が行い、不在の対局の場合は代行者が判定する
・2/1~当面の間実施し、期限については連盟理事会が判断する
ただし、健康上やむを得ない理由があり、事前に届け出て連盟理事会の承認を得る場合は例外となります。
今回の規定は臨時規定とのことですが、設けられた理由はやはり新型コロナウイルスのオミクロン株による感染拡大が影響していることが推察できます。先日も将棋連盟では、藤森哲也五段のコロナ感染を発表されました。
そもそも、これまでの規定はどうだったのかと言いますと…。マスクの着用は「義務」ではなく「推奨」でした。その背景は、棋士の在り方にあります。
記事によれば「推奨」にとどまった背景としては
・棋士は長時間にわたって試行し続ける
・マスク着用のままでは呼吸がしにくくなり、パフォーマンスに影響が出る
・対局中は基本的に言葉を発する機会がなく、飛沫感染の懸念は極めて少ない
というものでした。
この報道を受けた一部の棋士のツイートをご紹介します。まずは高田明浩四段。
高田明浩@akihiroShogi私の場合だと地方の棋士のため、感染リスクが高い都市部での対局で、マスクを外されるのが、かなり気になっていたのでとても嬉しく思います。自分がなるとかより家族に移したくないのです,,, 棋士は、アスリートだからパフォーマンスも大事で、… https://t.co/S3BL565nr0
2022年01月29日 08:20
高田明浩四段は岐阜県出身・在住の棋士。やはり地方在住ということもあって、今回の規定には賛成の一方、棋士の「アスリート」性の観点から複雑な思いがうかがえます。
続いて畠山鎮八段(棋士会のアカウントでのツイートで前述の高田明浩四段のツイートを引用ツイート)
将棋 棋士会@shogi_kishikai個人的にマスク対局はしんどく、なかなか慣れませんが囲碁界や受験会場ではとっくに義務付けている、とお叱りの声を何度もファンの方にいただきました。棋士だけでなく棋士の身内や未成年の保護者からも大賛成のようですね!私はマスク対局本当にキ… https://t.co/JO0QcODklj
2022年01月29日 09:25
個人的にはマスク対局はつらいという思いは変わらないものの、周辺の環境が許してくれない事情もあり、「辛抱」という言葉でしのぎたい思いが伝わります。
私が大会に参加しない理由は、職場柄が大きな理由です。私は現在介護施設に勤務し、清掃作業を中心として働いています。現在の施設は言うまでもなく、感染症対策は厳しい状況です。以前は実施していた施設内での面会は窓越し。私も含めたスタッフさんと外部業者は必ず体温チェックと手指消毒の徹底。食事の際は介助のスタッフさんを除いて、スタッフさんと利用者様は別テーブルで食事をとるなど上げたらきりがないほどの対策が徹底されています。環境整備が業務の中心の私としても、感染者を何としても出してはいけないという思いで日々の業務をこなす毎日です。
そんな中でのオミクロン株の流行。近隣の地域でもクラスターが発生したという報道があり、油断ができない状況が続きます。
当然、不要不急の外出は自粛。私が大会に参加しない理由には、将棋大会の参加が「不要不急」にあたるか否かというところです。1年ほど前、私は先輩のスタッフさんに
「将棋大会に参加していいものか」
と相談したことがありました。実は昨年開催予定だった地元の新春大会(結局は中止)に参加しようか否か迷っていました。先輩の返答は
「感染対策を万全にしているならいいよ」
というものでした。当時は第2波の状況で私が住む富山でも徐々に感染者が出てきていた時期でした。それ以降、私は職場で将棋大会に関する話は全くしなくなりました。
将棋大会は、状況が落ち着いたら参加したいなとは思います。今はまだ辛抱の時期かもしれません。怖いのは私に限らず、職員が原因で施設内でクラスターが発生することです。幸い、報道されるような事態は私が所属する組織内では発生していません。とはいえ、様々な要素が原因でスタッフさんが勤務できないケースが出てくるかは心配しています。
とにかく今は、将棋大会が開催されたとしても参加するのは仕事の状況からして困難である。それが私の現在です。今はまだ、力を蓄える時期であると信じて今日も将棋の勉強と実戦の日々です。
さて、いろいろと話してきましたが今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。