「永世乙女の戦い方」第6巻と女流棋士の師匠 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。結婚についてはぼんやり考えている気もしている雁木師でございます。さて、今月に入り将棋界では結婚のニュースが相次いでいます。

プロ棋士では都成竜馬(となり・りゅうま)七段がご結婚を発表されました。

 

くしくも、発表当日の1/17(月)は都成七段の32回目のお誕生日。日曜日の「将棋フォーカス」ですっかりおなじみの都成七段。Twitterでも多くの方から祝福のツイートが相次ぎました。お相手は一般の方とのことです。都成七段、おめでとうございます。

 

女流棋士では室谷由紀(むろや・ゆき)女流三段がご結婚を発表されました。

 

ご結婚の発表は1/11(火)。1が3つ並ぶこと、ご自身もお相手の方も犬が大好きということから一部では「ワンワン婚」とも呼ばれました。こちらもお相手は一般の方とのことです。室谷女流三段、おめでとうございます。

さて今回はコミックのご紹介です。室谷女流三段のお仕事の世界、女流棋界に関するコミックのご紹介です。

永世乙女の戦い方⑥

のご紹介です。

原作はくずしろさん。監修は香川愛生女流四段です。ビックコミックスペリオールより2019年10号より連載開始。今回紹介する第6巻は昨年11月に発売されました。

原作のくずしろさんについてはこちら。

 

監修の香川女流四段についてはこちら。

 

なお付記事項として、香川女流四段は今期から本格始動した女流順位戦はB級に在籍され現在2勝2敗の成績。今期の女流名人リーグは5勝4敗の成績で女流名人挑戦はならず。女流王位戦では挑戦者決定リーグの紅組に入り2勝0敗の成績です。

また昨年行われた第2回女流ABEMAトーナメントでは、ドラフト会議で加藤桃子清麗に指名され、同じく指名された野原未蘭女流初段と3人で「チーム加藤 野生の桃」を結成。監督棋士に渡辺明名人を迎え、チームの優勝に貢献されました。

ではコミックの内容に入ります。前回のおさらいがしたいという方は第5巻の記事をリブログしたので下記リンクからご参照ください。

ではコミックの内容に入ります。この物語の主人公は女流棋士にして現役女子高生の早乙女香(さおとめ・こう)。女流棋界の絶対王者である天野香織(あまの・かおり)とタイトル戦で戦うことを目標に奮闘する日常を描いたストーリーです。

第6巻はマイナビ女子オープンの準決勝の残り一局の模様から始まります。対局者は女流三段で香のトラウマになっている角館塔子(かくのだて・とうこ)と現役中学生にして奨励会二段、女流棋士に敵意を抱く須賀田空(すがた・うつろ)との対局で、勝ったほうが香との挑戦者決定戦に進出する大一番です。香と香織、香に敗れた天才アマ女流棋士アナスタシアも別室で検討する中、対局は大熱戦に…。そして決着の時、塔子の目からは涙が。果たして対局の行方は?そして、別室で見ていた香織は香に意味深な言葉を残して去っていきます。

後半は香が塔子の誘いで、塔子が通う大学の将棋部に呼ばれた話です。その将棋部はプロ棋士や「元奨」と呼ばれるかつて奨励会に籍を置いていた者も含めて強豪揃い。香は彼らとの練習将棋を通して自分の実力の弱さを痛感することになります。そんな折、プロ棋士の墨田からアドバイスをもらった香。はじめは理解できませんでしたが、練習将棋を重ねていくうちに徐々に意味を理解していきます。その中で、空に兄がいたことを知る香。そこから徐々に空の過去も明かされていくことになります。

コミックの締めくくりは4コママンガと、香織の日常がコミカルに描かれています。また、今回も紙媒体のカバーを外すと詰将棋が掲載されています。腕試しにぜひお試しください。

 

 

実際に読んでみた感想はというと…。対局の緊張感から醸し出されるシリアス感と対局以外のコミカルな表現のギャップは相変わらずという感じです。対局の描写は、題材の局面が「穴熊」ということで籠城している王様を倒しにかかる姿を塔子と空の姿で表現されています。まさに、穴熊の「潰せる」か否かの攻防がよくわかる描写です。

コミカルな部分は、香の将棋以外の無頓着さがよくわかるキャラの描写だと思います。そして、それを冷静に見抜くキャラクターがいることもストーリーを支えるひとつ。コミカルなキャラの中にも香の特徴を的確にとらえる描写があります。

また、本書の後半は大学将棋の特徴が描かれています。これは監修の香川女流四段が、将棋の強豪校で知られる立命館大学に在籍されていたことも大きいのではないかという面もあります。大学将棋を知りたい方も参考になるかもしれません。

 

 

さてここからは、女流棋士の「師匠」についてお話したいと思います。先日、豊島将之(とよしま・まさゆき)九段が女流棋士の師匠になることが報道されました。

 

東海研修会に所属する岩佐美帆子(いわさ・みほこ)さんが研修会のC1クラスにて既定の成績(12勝4敗)を収め、B2クラスに昇級。同時に女流棋士の資格を得ることになり、2/1(火)付で女流棋士デビューする流れとなりました。これにより、豊島九段は「現役最年少」で女流棋士の師匠になることが報じられたというわけです。「序盤、中盤、終盤、隙が無い」と言われてから今年でちょうど10年。桐山清澄(きりやま・きよずみ)九段にとっては初めての孫弟子が女流棋士ということにもなります。なぜ豊島九段が師匠となったのかについては前述のリンクに記載がございますのでそちらをご参照ください。

さて、今回はABEMAでも話題の将棋界の「師弟」の女流版特集ということで現役女流棋士(LPSA・フリー棋士も含む)のプロフィールをチェックしたうえで、女流棋士における一門の特徴を見ていきたいと思います。まずはこちらをご覧ください。

こちらは本日時点での現役女流棋士の「師匠早見表」というもの作成した表です。これを見れば、この女流棋士は誰の門下なのかが一目でわかるように作成しました。輩出している女流棋士が多い順に並べています。ではこの表を基に解説していきます。

現役女流棋士を最も多く輩出しているのは森信雄(もり・のぶお)七段です。森信雄七段はプロ棋士も数多く輩出していることでも知られています。昨年は2人も女流棋士が誕生(大島綾華女流1級、佐々木海法女流2級)し、最多の5人を抱える大所帯となりました。そのうち3人は大阪府出身(室谷女流三段、石本さくら女流二段、佐々木女流2級)。残りの2人も広島(大島女流1級)、宮崎(山口絵美菜女流1級)と全員西日本出身の女流棋士です。森信雄七段は愛媛県のご出身。一門から輩出されたプロ棋士も東海地区から西側の府県に集中していること(特に関西と広島)を考えるとすっかり関西きっての「名伯楽」とも言えます。

2番目に多いのは4人を輩出している森雞二(もり・けいじ)九段所司和晴(しょし・かずはる)七段です。森雞二九段の一門はなんといっても里見香奈(さとみ・かな)女流五冠と里見咲紀(さとみ・さき)女流初段姉妹が有名ですが、LPSAからも2人を輩出されています。島井咲緒里(しまい・さおり)女流二段と堀彩乃(ほり・あやの)女流1級はどちらも高知県のご出身。島井女流二段は連盟からLPSAに移籍された女流棋士、堀女流1級はLPSAから誕生した女流棋士で、森雞二九段も高知県のご出身ということで「クニモン」のお弟子さんです。一方、里見姉妹は島根県のご出身。中国・四国地区に出身女流棋士が集中しています。

所司七段は現役棋士では最多の4人の女流棋士を輩出。プロ棋士でも、渡辺明名人や松尾歩八段といった実力派棋士を輩出している東の名門と呼ばれる門下です。お弟子さんの女流棋士を見てみると、「インテリ」と呼ばれる高学歴の方が多いのが特徴です。伊奈川愛菓(いながわ・まなか)女流二段はなんと医師免許を持つ女流棋士。一時期は医師研修のために休場を続けられました。渡辺弥生(わたなべ・みお)女流初段は東京大学経済学部経済学科をご卒業された後で東大理科Ⅰ類に入学し直されたというインテリ。東大卒業者としては初めての女流棋士です。LPSA所属の上川香織(うえかわ・かおり)女流二段は広島県のご出身ですが、埼玉大学在学時に将棋部の主将を務められた方です。

 

関東の一門に目を向けますと…。多くの名棋士を輩出した故・高柳敏夫(たかやなぎ・としお)名誉九段門下は女流棋界のレジェンド、清水市代(しみず・いちよ)女流七段と教員免許を持つ早水千紗(はやみず・ちさ)女流三段、LPSAでは数多くの資格を所持している船戸陽子(ふなと・ようこ)女流三段と気品あふれる女流棋士ばかり。

プロ棋士でも研究家肌の棋士が多い西村一義(にしむら・かずよし)九段の門下は、ニコニコ生放送では「姐さん」の愛称で親しまれる山田久美(やまだ・くみ)女流四段。株式会社ねこまどの社長を務め、海外普及にもご尽力されている北尾まどか(きたお・まどか)女流二段。現在NHK杯の司会を務められており、「画伯」の異名をもつ藤田綾(ふじた・あや)女流二段といずれも将棋界の普及に貢献されています。

「将棋博士」の名で知られる堀口弘治(ほりぐち・こうじ)七段門下からは、Youtuberとしても活躍の場を広げている「攻める大和撫子」山口恵梨子(やまぐち・えりこ)女流二段。インターネットメディアのご出演に引っ張りだこで、安定した司会で知られる貞升南(さだます・みなみ)女流二段。LPSAの3代目代表でかつてNHK杯の司会を務められた中倉宏美(なかくら・ひろみ)女流二段とメディア露出の多い女流棋士が目立ちます。

 

東海圏に目を向けますと、どうしても杉本昌隆(すぎもと・まさたか)八段の門下に目がいきますが、2人の女流棋士を輩出。藤井聡太竜王の姉弟子としても知られ、「女帝」の愛称でも知られる室田伊緒(むろた・いお)女流二段とYAMADA女流チャレンジ杯優勝の実績がある中澤沙耶(なかざわ・さや)女流初段です。どちらも杉本昌隆八段と同じく愛知県のご出身です。

東海圏で最も多いのは、東海研修会の幹事を務める中田章道(なかだ・しょうどう)七段門下で3人。愛知県出身の脇田菜々子(わきた・ななこ)女流初段と岐阜県出身の山口稀良莉(やまぐち・きらり)女流1級と山口仁子梨(やまぐち・にこり)女流2級姉妹です。お姉さまが山口仁子梨女流2級、妹さんが山口稀良莉女流1級と妹さんが昇級ペースで先行しています。

東海圏は藤井聡太竜王ブームからか女流棋士が近年相次いで誕生。前述の岩佐さんも岐阜市の高校に在学されています。

 

九州圏からはABEMA師弟トーナメントでもご活躍されている中田功(なかた・いさお)八段の門下から1人。武富礼衣(たけとみ・れい)女流初段が唯一の女流棋士です。中田功八段は福岡県、武富女流初段は佐賀県のご出身ということで、生粋の九州系統の門下と言えます。ちなみに佐賀県出身の女流棋士は武富女流初段が初めてとのことです。

九州出身の女流棋士では水町みゆ(みずまち・みゆ)女流初段も福岡県のご出身。こちらは島朗九段が師匠です。

 

 

とここまで地方別に見てきましたが、傾向としてはやはり師匠の出身地から女流棋士が誕生する傾向が多いです。また、地方出身の女流棋士でも進学先が関東地方の場合は関東の一門の師匠門下に入るケースもあることが分かりました。広島県出身の上川女流二段や鳥取県出身の山口恵梨子女流二段がその例と言えます。

 

あと当たり前と言えば当たり前ですが、姉妹は必ずと言っていいほど同じ一門に入るというケースです。ここでもう1つ表を見ていただくことにします。

これは先ほどの女流棋士師匠早見表の引退女流棋士版です。この表と先ほどの現役女流棋士版の表を見ながら進行していきます。姉妹で活動されている女流棋士は引退された方を含めて5組。誕生順から以下の5組です

・中倉姉妹(姉・彰子女流二段、妹・宏美女流二段)→堀口弘治七段門下

・大庭姉妹(姉・美夏女流初段、妹・美樹女流初段)→故・佐瀬勇次名誉九段門下

・里見姉妹(姉・香奈女流五冠、妹・咲紀女流初段)→森雞二九段門下

・和田姉妹(姉・あき女流初段、妹・はな女流1級)→藤倉勇樹五段門下

・山口姉妹(姉・仁子梨女流2級、妹・稀良莉女流1級)→中田章道七段門下

このように、お姉さまがこの師匠だから妹さんも同じ師匠に面倒を見てもらうというケースがあるようです。ちなみにこれは兄妹棋士でも同じ傾向です。

兄が棋士で妹が女流棋士という組み合わせは2組。

・村田兄妹(兄・智弘七段、妹・智穂女流二段)→淡路仁茂九段門下

・中村兄妹(兄・亮介六段、妹・桃子女流二段)→高橋道雄九段門下

 

また、これも当たり前と言えばそれまでですが父親がプロ棋士の場合、娘さんが父親の門下になるというケースもあります。この組み合わせは引退された方も含めて3組

・伊藤親子(父・果八段、娘・明日香女流初段)

・飯野親子(父・健二八段、娘・愛女流初段)

・塚田親子(父・泰明九段、娘・恵梨花女流初段)

最も、塚田泰明九段の奥様は女流棋士の高群佐知子(たかむれ・さちこ)女流四段ですので両親がプロ棋士で娘が女流棋士という実例は塚田恵梨花(つかだ・えりか)女流初段が初めてのことです

このように親族にプロ棋士がいらっしゃる場合はその一門に入るのが自然な流れと言えます。

 

 

そのほかにもこの早見表を見てみると、いろいろと触れたい部分も多いですが文字数の関係で今回はここまでとさせていただきたいと思います。もし、早見表をご覧になられて気になる点がございましたら、コメント欄にお寄せいただけると幸いです。

 

 

 

さてここからは余談です。女流棋士の師匠に興味を持ってくださった方、男性棋士の「師弟」の戦いも楽しまれてはいかがでしょうか?現在、ABEMAでは「師弟トーナメント」が開催されています。明日はこちらの試合がペイパービューにて放送されます。

で、この放送を視聴するなら。断然ABEMAプレミアムへの登録がおススメです。

 

観る将のお供 ABEMAプレミアム

明日のペイパービュー放送はABEMAプレミアムに登録されていればなんと追加料金が発生しないで視聴できるのです。登録について不安があるという方はこちらの記事をご参照ください。

 

そして、登録したくなったらぜひ「観る将のお供 ABEMAプレミアム」のバナーをクリックしてください。きっとあなたの「観る将」ライフが変わることは間違いありません。

 

 

さて、宣伝(?)も終わったところでコミックに話を戻します。本書は女流棋士と女流棋界を題材にしたコミックです。女流棋界に興味を持たれている方はぜひ読んでいただきたい内容になっています。この機会にぜひ、本書のシリーズを読んでいただいて女流棋士、ひいては女流棋界の世界を学んでみてはいかがでしょうか。

 

このコミックを読んで将棋に興味を持った、将棋が好きになったというお声をいただければこれほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋に興味を持つ、将棋が好きになることを祈念いたします。なお、次回の書籍紹介は2/4(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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