弟弟子が見た米長邦雄 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんばんは。「詰めチャレ」にのめりこみすぎてしまい、絵が全く仕上がっていない雁木師でございます。今日は書籍のご紹介です。以前当ブログでは、米長邦雄永世棋聖の本をご紹介させていただきました。

今回は、弟弟子の田丸昇(たまる・のぼる)九段による米長邦雄永世棋聖の評伝の書籍のご紹介です。

名人を獲る
評伝 米長邦雄」

をご紹介します。

国書刊行会から3月に発売されました。本書の主役である米長永世棋聖については、冒頭のリブログ記事をご参照ください。

著者の田丸九段についてご紹介します。田丸九段は1972年に四段昇段。米長永世棋聖とは同じ佐瀬勇次名誉九段門下の同門の棋士に当たります。タイトル獲得・棋戦優勝の経験はありませんが、棋王戦の挑戦者決定戦に進出されたことがあります。竜王戦では最高2組に在籍、順位戦A級には1期在籍。2016年に引退されました。

1989~95年に日本将棋連盟の理事を務め、出版部門を担当。2001~03年には将棋世界の編集長も務められました。現在は将棋世界にて「昭和名棋士・次の一手 熟練の技の譜跡」を連載されています。

多くの著書を出版されており、藤井聡太三冠に関する書籍も出されています。

 

 

お弟子さんは、現役棋士では井出隼平五段、引退された棋士では櫛田陽一七段、女流棋士では小高佐季子女流初段がいらっしゃいます。

 

では書籍の内容に入ります。本書は「評伝」のタイトルの通り、米長永世棋聖の足跡をたどる構成となっています。全部で7章構成となっています。順に見ていきます。

第一章「米長の折々の名言」…米長永世棋聖が残した多くの名言の背景を端的に解説されています。のちの本書の流れを読み解くうえで欠かせない名言ばかりです。

第二章「生い立ちと棋士を目指した頃」…米長永世棋聖が生まれてから四段昇段に至るまでのエピソードが書かれています。師匠の佐瀬名誉九段との出会い、のちのライバルとなる中原誠十六世名人との初対局、升田幸三実力制第四代名人のお話などもここで登場します。

第三章「『さわやか流』の生き方で盤上盤外に活躍」…デビューから四冠を達成されたころのエピソードが書かれています。初タイトル獲得、中原十六世名人との熱闘と盤上の戦いの記録はもちろん、奥様のこともこの章ではよく書かれています。

第四章「奔放なエピソードと著名人との交流」…米長永世棋聖の破天荒な「伝説」にまつわる話と、多くの著名人との交流にまつわるお話が中心です。「三人の兄たちは頭が悪いから東大に行った」という発言の由来、現代では注目の的とされている「勝負めし」と「おやつ」についてもこの章で書かれています。

第五章「中原を破って五十歳で悲願の名人位に」…史上最年長で名人を獲得されてから翌年失冠されるまでのエピソードが書かれています。「米長道場」や「島研」といった、羽生世代に関係するキーワードが出てきます。

第六章「将棋連盟会長として財政再建と普及に尽力」…現役を引退されてから将棋連盟の会長としての活動についてのエピソードが書かれています。将棋界を揺るがす出来事として語られている「名人戦移管問題」についてはこの章で書かれています。

第七章「波乱万丈の人生を終える」…将棋連盟会長としての晩年からお亡くなりに至るまでの経緯が書かれています。叡王戦の原点ともいわれている「電王戦」の舞台裏とご病気からお亡くなりに至るまでのお話が中心です。

巻末には米長永世棋聖と当時の将棋界の年表が記されています。

 

構成としては、第一章で名言を紹介しながら人となりをお話しされてから各章で詳しく紐解いていくという感覚です。また、文章の途中では将棋の局面が出てくる章もあります。ところどころに当時の写真も掲載されているのも特徴で、かなり貴重とも言えます。

 

 

実際に読んでみた感想はというと…。私の知る米長永世棋聖は、動画を見てきた限りでは現在の加藤一二三九段と立ち位置が似ている気がします。好々爺という感じでしょうか。NHKBSでかつて放送された「大逆転将棋」でのはさみ将棋対局の企画では、貫禄のある和装姿でじゃんけんする姿には思わず笑ってしまいました。

※「大逆転将棋」の企画で往年の名棋士による「はさみ将棋名人戦」を実施。米長永世棋聖はこの企画ではさみ将棋名人3連覇を達成。相手は内藤國雄九段、谷川浩司九段、加藤一二三九段。

またNHK杯で伝説と呼ばれている羽生ー加藤戦の☗5二銀の解説も米長永世棋聖。名調子で伝説を彩りました。

盤上に目を向けると、現代矢倉の定跡に一石を投じた急戦矢倉が印象的です。また「泥沼流」と呼ばれる玉さばきのうまさも多くの棋士がうなったと話します。当時若手だった羽生世代の才能を見出し、迎え撃つや倒すといった姿勢ではなく「教えていただいて吸収する」という姿勢は勇気のいることだったと思います。一度築き上げた自分の将棋観をいったんリセットするわけですからなかなかできないことだと思います。

 

本書で私が初めて知ったのは、「名人戦移管問題」でした。今でこそ毎日新聞社様と朝日新聞社様の共催体制で棋戦が進行されてきていますが、そこに至るまでの経緯が私は本書を読むまでよく知りませんでした。米長永世棋聖の発案があって今日の体制に至るのは凄いとしか言いようがありません。もちろん、その発案を見事に実現させたことにも。

他にもJT杯将棋日本シリーズの公開対局、「ネット将棋・最強戦」の開催、「電王戦」でのボンクラーズとの対局など現代の将棋ブームの礎を築くうえで欠かせない企画を実施されてきました。

その一方で、批判される部分があったのも本書では取り上げられています。本書ではLPSA(日本女子プロ将棋協会)が誕生した経緯も少しだけ書かれているのですが、女流棋士の独立問題をめぐる「負の遺産」として取り上げられています。今でこそ女流棋戦のタイトルは男性棋戦と同じく8つ。最近できた白玲戦は、女流棋界初めての七番勝負制で賞金も女流棋界最多の1,500万円と最近の女流棋士の環境も待遇も以前と比べて改善されてきました。

しかし、米長永世棋聖が会長に就任されたころはまだ4つ(女流名人、女流王位、女流王将、倉敷藤花)でした。女流棋界から将棋連盟の理事は長らく存在しなかったことも事実。清水市代市代女流七段が2017年に常務理事に就任されるまでは、将棋連盟の理事は男性棋士ばかりで構成されたのです。今でこそ女流棋士の実力も向上し、史上初の「女性棋士」の誕生成るかまで注目を集めてきましたが、その過去や背景に女流棋士の独立問題があったということは忘れたくないと思いました。

こうした負の観点も含めて、客観的に大棋士を評価されているのはさすが弟弟子の田丸九段としか言いようがありません。こうした昔の将棋界を話せる「語り部」のような棋士の先生にはいつまでも元気でいてほしいと願うばかりです。

 

 

さて本書は、米長永世棋聖を客観的な視点で評価した評伝です。米長ファンの方もそうでない方も、ぜひ読んでいただきたい一冊です。オールドファンの方には懐かしいお写真も出てきます。ライトな将棋ファンの方にも当時の歴史背景が分かる内容です。将棋を指さない方でもわかりやすく書かれていること、一節の内容が短いのでスラスラ入ると思います。昨今の将棋ブームの原点を築かれた米長永世棋聖。その足跡をたどりながら将棋中継を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

 

この本を読んで将棋に興味を持った、将棋が好きになったというお声をいただければ、これほどうれしいことはありません。読者の皆様が将棋本を読んで将棋に興味を持つ、将棋が好きになることを祈念いたします。なお次回の書籍紹介は11/5(金)を予定しています。

 

今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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