「角頭歩の大冒険」(その7)と将棋倶楽部24近況 | 将棋大好き雁木師の新将棋文化創造研究所

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「将棋大好き雁木師の将棋本探究」をリニューアルしたブログです。
主に将棋に関する詩などの作品紹介と、自分の将棋の近況報告を行います。

読者の皆様こんにちは。物持ちの良さが災いしている雁木師でございます。今日は「角頭歩の大冒険」の7回目と将棋倶楽部24の近況報告を行いたいと思います。長文となりますが最後までお読みいただけると幸いです。

 

まずは「角頭歩の大冒険」から。今回も格闘歩君と一緒に進めていきたいと思います。

 

格闘歩君についてはこのシリーズの1回目の記事に詳しく書いていますので下記リンクをご確認ください。

 

 

前回の内容は下記リブログにてご確認いただけます。

それでは「角頭歩の大冒険」の7回目、「角頭歩成立の条件(3)」の始まりです。

ーある日の夕方

格闘歩君(以下格)「はぁ…はぁ…はぁ…(腹減った…)」

雁木師(以下雁)「さてと、買い物も済んだしあとは…ん?あれは、格闘歩君か」

格「はぁ…はぁ…はぁ…」

雁「格闘歩君、どうした?息を切らせてるということはトレーニングかい?」

格「はぁ…はぁ…はぁ…あ、雁木師の旦那…俺、俺…」

雁「とりあえず、近くのベンチで休まないか?飲み物あげるから」

数分後ー

格「ふぅ…生き返った…」

雁「一体何をしていたんだ?トレーニングかい?」

格「旦那、俺は考えた。『将棋は体力』って」

雁「まあ将棋を指すうえでは体力も大事だよね。私も経験はある。しかし…」

格「俺、初めて勝ったあの日の興奮が忘れられねーんだ!!だから、動きまくってたんだ」

雁「う、うん。運動とかで動き回るのは大事だね。将棋でも動き回るのが大切になることもある」

格「だろ?だろ?だから俺…」

雁「ひたすら動いて駒の動きになりきると」

格「そうそう…って、ちがーう!!運動で体力強化してタフな将棋に備えてたんだよ!!」

雁「そうだったんだね。もうトレーニングは切り上げたらどうかな?運動して怪我したら元も子もないし」

格「旦那はこれからどうするんだ?」

雁「帰ってご飯食べたら角頭歩の研究をするよ。よかったら格闘歩君も一緒に食べないか?」

格「マジか!?おごってくれるのか?(ぶっちゃけ金欠で今日は朝から水だけでしのいでたんだよな)」

雁「ただし、角頭歩の研究に付き合ってくれるならという条件付きだけど」

格「おう!!付き合うぜ!!」

 

 

解説:今回も角頭歩の成立条件を検証していきます。これまで角頭歩定跡の成立を阻止する4つのパターンのうち

①相手が☖2四歩を許してくれない

②相手から角交換を封じられた

③相手から角交換をしてきた

この3つを検証してきました。ここまでの共通としては相手から積極的に動いて角頭歩定跡を止めたということです。ただし②の場合はやや消極的な向きもありますが…。今回は最後のパターン

④相手がいきなり☗2五歩と突っ込んでくれない

というパターンを検証していきたいと思います。今回のテーマとなる局面はこちらです。

 

角頭歩定跡の4手目☖2四歩の局面からのスタートです。今回の「いきなり突っ込んでくれない」というパターンは

1.☗2五歩と突っ込まない

2.角道を止めない(☗6六歩)

3.角交換もしない(☗2二角成)

という変化です。純粋に分岐だけを調べるとたくさん変化が出てきます。その理由は5手目の先手の選択肢が広いからです。上記3つの手以外で有力なのは

1.☗4八銀

2.☗6八玉

3.☗1六歩

などでしょうか。私の実戦では☗7八金という変化もありました。今回は1.☗4八銀と2.☗6八玉を中心に検証していきます。3.☗1六歩については補足的に検証していきます。

1.☗4八銀

☗4八銀は居飛車を指すなら自然な進行と言えます。主な狙いは☗3六歩~☗3七銀や☗4六歩~☗4七銀などが考えられます。対して角頭歩側も選択肢が広いですが、☖2四歩を突いた以上は向かい飛車に振って居飛車を迎撃したいというのは考えたいところです。そこで☖3三角と指してみます。

ここで居飛車が隙ありとみて3手1組で動く手順がありそうですが、果たして成立するのか?

 

雁「格闘歩君、ここから先手が指してみたい3手1組は分かるかな?」

格「え?えっと…やっぱり角交換はしたいよな。ただ…角交換からその先が分からん!!」

雁「ヒントは☖2四歩を突いたから生じるスキかな?」

格「もしかして…

☗3三同角成 ☖同桂

☗2三角

かいな?」

雁「正解。☖2四歩を突いたことで歩の裏側に角を打ち込むスキができた。これで馬を作ることができれば先手有利だけど…」

格「けど…なんなんだよ!!」

雁「☗4八銀を咎めた返し技がある」

格「なんだよ、その合気道的な言い回しは…」

 

 

解説:ストーリーの☖3三角の局面から

☗3三同角成 ☖同桂

☗2三角

と進行した局面を見ていきます。

この局面、実は角頭歩側が互角からやや指せそうというのがソフトの評価。その理由は☗4八銀と☗2三角の相性が悪いからではないかと推察できます。その相性の悪さにつけこむ一手は…☖5五角

この一手で角頭歩側も馬を作ることができ、かつ桂香に当たるのが先手の痛いところ。先手が角を2三に手放したことでこの手順が成立しました。

 

 

格「馬作りには馬作りで返すのか」

雁「相手が先に角を手放してくれたから、角合わせの返し技は気にしなくていい。これは☗4八銀と指してくれたことで成立している」

格「どういうことだよ?」

雁「☗4八銀と指したことで相手は飛車の横利きを自ら遮ってしまった。これによって☗8八銀の受けが成立しなくなる。もし5手目☗4八銀に代えて☗1六歩と指してみたらどうなるかやってみよう」

 

格「同じ手は通用しないって言いたいのか?」

雁「結論から言えばその通り。だけどなぜ通用しないのか、別の攻め筋がないかは考えたい」

 

 

解説:5手目☗4八銀に代えて☗1六歩と指した場合に☖3三角と指したらどうなるかですが…。以下

☗3三同角成 ☖同桂

☗2三角 ☖5五角

と進行すると、今度は☗8八銀で受かっています。

 

その理由は先手の右銀を保留したことで飛車の横利きが生きているからです。この局面は先手有利の評価。以下、角頭歩側がが暴れるなら☖4五桂ですが☗5六歩と反撃を催促されて

☖8八角成 ☗同飛

☖5七桂不成 

と両取りはかかりますが、受けずに☗3四角成で大丈夫。角頭歩側は金銀は入手できるも攻めの起点が作れず、苦戦を強いられる結果となりました。

 

少し戻って☗2三角に対しては☖4五角が面白い反撃の一手。

 

☗5八金右と受ける手に☖3二銀で2三の角を殺すことができます。以下は角を取り合う変化となって形勢は互角の評価。先手としては☗2三角と打ったものの思った以上の戦果を挙げることはできませんでした。

 

 

格「要するに、5手目が☗4八銀か☗1六歩かで角打ちの場所が変わるということか?」

雁「試しに5手目☗4八銀の変化で☖5五角に代えて☖4五角と打ったらどうなるかもソフトにかけてみた。☗7八銀と受けられてから角をめぐる指し手が続くけど、先手が手得で陣形を整備できるので角頭歩側は選びにくい変化だったね。だから、☗4八銀の変化は☖5五角☗1六歩の変化は☖4五角と覚えておくといいかもね」

格「飛車の横利きに気をつけろってわけか。勉強になるぜ!!」

雁「ところが、5手目に☗6八玉と指されると事情がかなり変わってくる」

格「どういうことだ?」

雁「☗6八玉と指されると☖3三角からの変化は角頭歩側が不利になる結論が出た」

格「なんだって!!」

 

 

解説:2.☗6八玉

 

5手目に☗6八玉と指されると、前述の☖3三角から☖4五角や☖5五角の変化は角頭歩側が不利になるという結論でした。☗6八玉に☖3三角と指すと

☗3三同角成 ☖同桂

☗2三角

の際に切り返しが成立しません。☗2三角に対して

1.☖4五角だと…

☗4六歩 ☖5四角

☗3四角成

で先手だけ馬ができる変化

2.☖5五角だと…

☗7七桂 ☖2二飛

☗3四角成 ☖4二銀

☗5六馬

でやはり先手だけ馬ができる変化です。ポイントは☗6八玉と上がったことで

・6七の地点のカバー(☖4五角に対して)

・☗7七桂の下準備(☖5五角に対して)

の2点が先手の主張点。対する角頭歩側の選択肢も広いですが…。私の実戦なら☖4二飛が多いです。

 

☖4二飛の狙いは基本としては「手待ち」や「途中下車」の意味合いです。また「玉飛接近すべからず」の格言を地でいくために美濃囲いを狙う一歩にもなります。

 

格「で、この手のソフト大先生の評価はどうなんだ?」

雁「角頭歩側やや不利という結論だね」

格「じゃあダメだろと言いたいが…。そうなると角頭歩自体が否定されるしなあ…」

雁「ソフトは振り飛車にマイナスイメージがある。ただ人間的には咎めきれるかというと難しい」

格「このあとはどうなるんだ?」

雁「☗7八玉 ☖6二玉

からお互いに囲う感じが自然かな。☗2五歩と突っ込んでくれたらおなじみのパターンで勝負と行きたいが…」

格「旦那、どうした?歯切れが悪いぞ」

雁「桂馬を跳ねていく変化は角頭歩側が指しにくいという結論が出た」

格「なにぃ!?」

 

 

解説:上図から

☗2五歩 ☖同歩

☗同飛 ☖3三桂

☗2三飛成 ☖2二飛

☗2四歩 ☖2三飛

☗同歩成

と進行した場合、勢い☖4五桂と跳ねるのは☗2五飛や☗2一飛が厳しく角頭歩側が劣勢という結論でした。☗6八玉が入ったことにより桂馬が跳ねても先手陣は簡単に崩れなくなっているという仕組みです。これは角頭歩側の☖4二飛の一手が「損」になってしまった形です。

途中の☖2三飛に代えて☖3二金と指す手が粘る一手。

 

以下は☗3四龍なら☖4五角で龍をいじめる展開も難解。

☗2二龍 ☖同銀

☗2三角

から先手が金銀をはがして飛車の打ち込みを狙う筋。角頭歩側は辛抱の展開が続きます。

 

格「相手から居玉を避けてきただけでこんなに陣形に差が出るのか…」

雁「居飛車先手の利をうまく生かした5手目☗6八玉だったね。対して☖4二飛以外に端歩を突く手でも解説の変化と同じ結論だった」

格「でも…いきなり突っ込むのは勇気がいるんじゃねえのか?」

雁「ソフトに最善手を導き出してもらったから、こうして突っ込んでも先手やや有利という結論だった。実戦においても☖2四歩を見た時点で慎重になる相手も多いと聞く」

格「だから☗6八玉などで一手様子を見ていく作戦も有力というわけか」

雁「今回は向かい飛車狙いの☖3三角で対抗してみたけど、全体的には難解な変化が多かったね」

格「乱戦や力戦が好きな人間にはもってこいかな」

雁「角頭歩を指すならこれもあるよ的な感じだと思う。さて、定跡封じの研究はここまでかな」

格「お、研究が終わりか?」

雁「いや、まだ研究は続くよ。格闘歩君には今後も引き続き協力してほしい」

格「どこを研究するんだよ!」

雁「格闘歩君。これまでの研究を通して気づいたことはあるかな?」

格「え?(いきなり言われても困るな…)えーっと…あっ!!まさか…」

雁「何か気づいたことは?」

格「えっと…旦那がこれまで研究してきた変化は角頭歩から振り飛車っぽい指し方を考えた気がするんだ。ただ、飛車ぶつけが定跡だから振り飛車と言っていいのかわからんが…」

雁「格闘歩君、気づいてくれてありがとう。確かにこれまでは、角頭歩から振り飛車の流れを見てきた。しかし、角頭歩から居飛車の変化はまだ見ていない。次回からはその研究を進めていきたい」

格「そもそも角頭歩から居飛車って成立するのか?」

雁「私の実戦では何度か出てるね。成否も検証していきたい」

格「旦那の研究、奥深いじゃねーか。まるで…」

ー(ぐぅ…)

雁「あ…そういえばまだご飯食べてなかったね。格闘歩君、今日はありがとね。晩御飯はカレーでいいかな?」

格「おう!!もう腹ペコだぜ!!」

雁「陣屋カレーじゃなくてインスタントでもいいかな?」

格「今時は関西のココイチだろうよ!!って反論したら余計に腹が減ったぜ!!」

ーこうして2人はインスタントのカレーを食べながら角頭歩の話で盛り上がった。格闘歩君は相当お腹が減っていたのか、白飯をお代わりして雁木師を少し困らせた

雁「(格闘歩君、君はご飯を食べに来ただけなのか?ま、腹が減っては戦はできぬというがせめて配慮はしてほしいな…)」

 

 

では、今回のまとめです。

・5手目の選択肢は広い

・☗4八銀、☗1六歩は☖3三角が成立する

・☗6八玉に対しては☖3三角ではなく☖4二飛などの手待ちから辛抱の手順の覚悟を

今回取り上げた変化はごく一部です。今回紹介した変化は実戦で出てくる可能性は分かりませんが、十分出てくると思います。特に☗6八玉の変化は角頭歩側がややつらい評価をソフトが示したのですが、人間的には咎めにくい部分もあります。角頭歩を試したい方は乱戦も覚悟した指し回しも出てくるということで、覚えていただけると幸いです。

さてストーリーでも触れましたが、今回で角頭歩の定跡成立をめぐる条件の検証はここで一区切りとしたいと思います。次回からの「角頭歩の大冒険」は角頭歩から居飛車の変化を検証していきたいと思います。次回もどうか楽しみにお待ちいただければと思います。

 

以上で「角頭歩の大冒険」の7回目を終わります。続いて将棋倶楽部24の近況報告を行います。ルール詳細は下記記事リンクをご参照ください。

 

 

では報告に入ります。

 
総合成績:22勝18敗。勝率.550
手番別勝敗
手番別勝率:先手番勝率.640 後手番勝率.400
現在レート:754点 最高レート:1,106点
ここまでは勝ち越しできています。星の流れを見ると先週は前半に2連敗も4連勝。後半も連勝と連敗はあるものの勝ち越し。今週は前半に2連敗を2度喫しましたが後半に2連勝で盛り返し最終盤に4連勝を決めて勝ち越しです。内容は戦型別によって勝てる戦型と勝てない戦型の差が激しいのが現状です。それを踏まえたうえで戦型別の勝敗です。
自分から見た戦型
相手から見た戦型
今月もここまでは四間飛車を最も多く指しています。相変わらずの耀龍四間飛車と角頭歩からの四間飛車の2パターンです。耀龍四間飛車は好調。角頭歩自体は悪くないという感じです。
居飛車に目を転じますと、角換わりの調子が上がってきました。角換わりは先手番で受けて立つという感覚の将棋で軸は腰掛け銀です。一方で相掛かりはやや不調。その他の戦型には相掛かりの出だしからノーガードの戦いに持ち込まれるというパターンもありました。最新形の形に挑戦していますが、上手く対応できていない感じです。右玉は対振り飛車専用で指しています。組まれる前に攻め込まれた時が課題と言えます。
相手から見た戦型は、居飛車は角換わりと相掛かり、振り飛車は四間飛車が最も多いです。角換わりは腰掛け銀や早繰り銀、筋違い角など多彩な攻め筋です。相掛かりは旧型が多いですが新型も徐々に出てきています。
四間飛車は王道の高美濃~銀冠を狙う作戦が中心ですが、穴熊や低い美濃から攻め込む将棋も多いです。右玉を使う私としては王道は正直ありがたく、急戦の将棋になると苦戦するという傾向です。そのほかの傾向としては右四間飛車から相振り飛車にもちこむ駆け引きもあり、相掛かり狙いから矢倉といった変化をつける将棋が多いです。
 
 
 
雁木師コラム⑦「角頭歩との出会い
私が角頭歩戦法の存在を初めて知ったのは今から4年ほど前にさかのぼります。NHKEテレの「将棋フォーカス」の特集で「B級戦法」の代表として角頭歩の存在を知りました。今泉健司五段がとても楽しく角頭歩を解説されたのを見て試してみようかと将棋ウォーズで試していました。当時はよく覚えていませんが見様見真似だったのでそんなに勝率は高くなかったような気がします。現在の私の角頭歩の将棋ウォーズでの勝率は5割強。レベルでいえば初段クラスほどです。
私が角頭歩に出会った頃、NHK杯でも角頭歩が登場したのです。採用されたのは佐藤康光九段。準決勝の佐藤天彦九段(当時名人)との一局で先手番で角頭歩を採用されました。その内容はまたいずれ「角頭歩の大冒険」で触れたいと思いますが、豪腕を発揮して勝利。この年度のNHK杯優勝につながったと記憶しています。
私自身はそれから角頭歩はしばらく指していませんでしたが、今年3月にご紹介した「イメージと読みの将棋観」で角頭歩の定跡が紹介されているのを読んでから24やウォーズで試していくうちに感覚がよくなったという感じです。角頭歩歴は長くないですが、最近の採用率は1割台なので、3月~4月と比較すると安定してきたという感じです。一時は連投しすぎて24のレートが大きく下がったので、自戒の念を込めて採用数をコントロールしている感じでしょうか。何事もやりすぎはよくないですね。
 

 

さて、いろいろと話してきましたが、今日はここまでとさせていただきます。本日も長文となりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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