「民間では考えられない」という目線から行政のあり方が盛んに批判されています。財政危機に瀕していた大阪府では橋下知事のもと予算に大鉈が振るわれています。名古屋市の河村新市長も市民税の10%減税を掲げて改革へ意気盛んです。

 それぞれ手法は異なりますが、選挙で得た高い支持率をバックに財政の無駄遣いをなくす観点から強力に行政改革を推進しようとしています。


 既存の体制や過去の慣例をうち破るには強力なリーダーシップが必要です。また改革を達成するためには痛みがつきものです。このことは十分理解できますが、聖域を設けずに一律に民間的経営手法を取り入れ、経済合理性最優先の改革姿勢に疑問を感じます。


 行政分野によっては民間的経営手法の導入が組織を蘇らせ、大きな改善につながることが期待されますが、そのような手法に馴染まない分野があることも事実です。そのような分野では、競争原理を導入して経済合理性求めることが結果的にこれまで大切にしてきたものを駄目にてしまう恐れもあります。教育では特にそのことが心配です。

 そもそも教育は経済合理性とは相容れない分野であるはずです。教育において最も大切にされるべきは経済性ではなく人間的成長であったはずです。教育に競争原理が導入され、経済合理性が優先されることによって人間教育という大切な視点がブレてしまわないか心配です。


 学校選択制が導入された地域では学校と地域の関係の希薄化が問題となっています。学校を支えるべき地域の機能低下が、学校教育力の低下につながらないか気になります。

 また、学校評価制度の導入がデータ重視の傾向を生みだし、教育本来の人間的な温もりや心の成長の側面を見えにくくしています。職場への業績評価の導入も職員の結束力を弱める結果となるならば本末転倒です。

 教育を行う上で最も重要なのは人の和です。教育改革は学校と地域の人の和、学校内の人の和を強める方向でぜひ進めてほしいと願っています。