「寺子屋師匠の教育力」というタイトルに惹かれ、地元街起こし行事で行われた歴史文化講座に参加しました。寺子屋は江戸時代にさかんにつくられ、庶民の教育施設としての役割を果たしてきました。寺子屋教育のお陰で庶民の識字率は高く、当時、来日した外国人の多くがそのレベルの高さに驚いたことは有名な話です。


 講義では地元に残る筆子塚が取り上げられ、その碑文を読みながら建立の動機や経緯について報告されました。

 筆子塚とは寺子屋の弟子である筆子達が師匠が死んだ時にその遺徳を偲び、お金を出し合って建てた墓や供養塔のことを言います。墓石の多くが筆の穂先の形をしているのが特徴です。

 私がまず驚いたのはずい分身近なところに数多くの筆小塚が建てられていたことでした。これは師弟関係に厚い関わりが一般的にみられたことの表れでした。当時の寺子屋では「師弟は三世の契り」と言われ、特に師弟関係が重視されていたのだそうです。現代とは時代背景が異なり理想とする人間関係のあり方も違う時代だったとは言え、このように師弟関係に見られたその厚さや濃さは、長年教育に関わってきた私にとってとても羨ましいことでした。


 今日の教育現場を見ると、師弟関係が年々薄くなっていくような気がして残念でなりません。学校や教員に対する冷めた目線や、時として、保護者が学校を敵と勘違いしているかの振る舞いを聞くにつけ大変な寂しさを感じます。

 「私情を挟まず平等に」、「プライバシーや人権に配慮して」、「無駄を省いて合理的に」等々、良かれと思って一生懸命努力してきた学校の取り組みが、結果として表面的な薄い師弟関係しか生みださなかったとしたら寂しい限りです。

 寺子屋師匠の教育力に学びながら、今一度、師弟の厚い人間関係を取り戻していきたいものだと思っています。