東京フクロウ14 | 小説のブログ

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柏原玖実といいます

「もちろん。警察(サツ)より確実」

翔はそう言ってウインクしてみせた。

 

『ジェイ』はその手のクラブだ。ガキは来ない。そこのボスはヒロムの父親の息がかかっている。

 二人は店に入ると顔なじみのバーテンに声をかけた。

「ヒロムさん」

バーテンが笑顔を見せる。

「いつもの席、空いてる?」

「ご案内します」

裏口に一番近いボックスの席に座る。

「ヒロムじゃない?」

「よお」

 一人の女がヒロムにそう声を掛けた。ヒロムの昔ながらの客である。

「座りなよ、最近連絡無いから心配してたよ」

「ありがと、ヒロム。えっと、翔君だっけ?久しぶりだね」

翔は笑顔で会釈をした。その瞬間、携帯のマナー音が鳴った。圭太からの空メール。

「ヒロム!手入れだ」

 翔はヒロムに耳元でそう呟くと、女への挨拶もそこそこに外に飛び出した。

 

「翔、コートを裏返せ!」

ヒロムが駆けながらそう怒鳴った。翔は頷いた。派手なコートはサツに見つけられやすい。

 タクシーに飛び乗る。翔は空中庭園の家までの道のりを告げた。二人は車中から後ろを振り返った。追う人間、追われる人間、二つの思いが交差している。新宿はいつもこうだ。こういう街だ。

 

 二人は翔の空中庭園の家についた。ヒーターを点ける。

「ヒロム、何か飲むか、」

そう言い掛けて翔はハッとした。身体中から震えているヒロム。新宿でヒロムの名前を知らない奴はいない。そのヒロムが怯えている。