シモン....シモーン....シモォォォン!!!!
懐かしいですねえ...この名前。
60sから70sの少女漫画において、一体どれだけ多くの作家がシモンという名前を使用してきたことか!!
特に大島弓子作品の中で幾度となく使われてきたような気がしますが、そもそもこのシモンという名の由来について、どなたかご存知の方いたら教えていただけると嬉しいですっ!!
で、そのシモンを事もあろうにペンネームにまでしてしまった(マジか!?)葉月シモン先生。前回の伊予田先生と同じく週刊マーガレットでデビューされ、三冊ほどコミックスを出しておられる葉月先生ですが、実はこの方男性なのですよね....
彼をデビュー作から追っていくと、ラブコメあり、ホラーあり、SFアクションありと、実に多彩なジャンルをこなされておりますが、それらを楽しんで描かれていたというよりも男性少女漫画家として自分はどのジャンルに進めばいいのか、苦しみながらも必死に手探りしている感が作品からひしひしと伝わってくるのですよ!!つうかデビュー当時の私も全く同じ境遇でしたので、な...なんだか他人事とは思えないんですよねぇ。
で、今回紹介する読み切り作品果たされた約束。その恐さときたら、個人的に後年の稲川淳二氏の生き人形話に匹敵するんではないかと思うのですが、それよりまず彼の絵を拝見して一体どこがホラーなの?と思われる方も多いのではないかと思います。
当時流行っていたハイティーン・ブギの牧野和子先生のタッチをベースにしながら、なんとなく白っぽくてデッサンの歪んだ絵、というのが葉月作品の印象(ひよええええ!!先生ごめんなさいっ!!)ですが、実はホラー漫画は画力がヘンに高すぎると逆に怖くなくなる、というのが私の個人的な見解なのです。以前太田出版から復刻された貸本漫画の傑作ホラー、徳南晴一郎先生の人間時計をどなたかご存知でしょうか?あの人物デッサンの歪み方の怖さときたら....いやもう神がかっておりましたっけ。
ではぼちぼちストーリーをば。
主人公の聖子(お聖)には大の親友が五人おります。去年の夏休みにみんなで公園へ行き、来年またここで再開しようと約束を交わします。そしてその中の一人である守に、
いずれ俺が留学から戻ってきたらお前を嫁さんにしたい
そうこっそり告白されていた聖子。1年後の約束の日、駅でみんなと待ち合わせしますが、まだ守が来ていません。
さて、みんなそろったわけだ
守がいないのにもかかわらずみんなはスタスタと歩き出そうとします。
あ、そういえば守は少し遅れてくるって....
二〜三日前彼が電話でそう言ったと聖子がいうと途端にみんなの顔が引きつり、親友の一人である良美が、
そういう冗談はうけないわ やめて
キョトンとする聖子。バンガローに着くと親友の一人が彼女ににこう切り出します。
守は死んだ
俺たちてっきりお前が知ってるとばかりーー
少し前やつの留学先から電話があったんだ
やつの運転していた車があやまって崖から転落して湖に沈んでしまいやつはそれきり.....
聖子は半分笑いながら言います。
やっだもう!だってあたし彼から電話もらったんだもの
それも二〜三日前によ!
わたしたちあなたが彼と付き合っていたの知っていたわ。だからわざと話題をさけてたのよ 傷つくと思ってね....
聖子は呆然とします。
夕方雷が鳴り、外がどんより曇り始める頃....
これは冗談だわ
昔からそうだったじゃない みんな冗談好きで後であれは冗談だったーなんて言って笑い出すんだ
聖子は未だ信じることができません。夜更けに室内でじっとしていると、ふと仲間の一人がこう言います。
守のやつ....本当に来るんだろうか
聖子は言います。
来るわよきっと....あたし約束したんだもの
すると良美は
そ そうね.....幽霊でもなんでもいいわ もう一度さよならを言いたいわね
ザーッと雨が降り始め、時計の針が午前零時をさした瞬間大きな雷が光り部屋の電気が消えます。
きゃあっ!!
落ち着けよ ただの停電だろ
するとどこからか足音が近づいてきます。
窓の外にはぼんやりと人影が....
ま 守だ こ こっちへ来る....
足音はドアに近づき、ノックを始めます。
やめてよ!!いやあっ!!おねがい開けないで!!
恐怖に泣き叫ぶ親友の順子。
守はそこにいるのよ!!
聖子はみんなが止めるのを振り払いついにドアを開けてしまいます!!するとそこにはずぶ濡れの守の姿が!!恐怖に凍りつく聖子!!
あ 足がある 生きているのね
よかった!! やっぱりここにいてくれたか!!
当たり前じゃない!!
守の言葉に泣きながら抱きつく聖子
俺、お前まで失ったらどうしようかと思ったよ
お 落ちついて聞くんだ み みんなが死んだんだ
ヒロの車が事故を起こして.....
その言葉に吹き出す聖子。
もうよしてよ守まで!!良美たちならほらそこに.....
聖子が振り返り指差したそこには.....
誰もいなかったのです。
彼らの乗った車は道路下の小さな湖の中に沈んでおり、彼らは1年前の約束を果たすためにここへやってきたのでした.....
ぎゃーっ!!!!こ......こわあああっ!!!!
伊藤潤二先生や諸星大二郎先生が描かれたらピッタリはまりそうな怪談話!!実際葉月先生はなかなかのストーリーテラーでありまして(絵はともかくとして)どの作品を読んでも面白いのですが、その後ぱたっと作品を見かけなくなってしまい.....
しかし、葉月先生は復活します!!ペンネームを田中しょう(しょう??)に変えて!!その作品がこちらです!!
ひいいいい〜っ!!!!少女漫画で苦悩した挙句に漂着した安住の地がなんと植田○さし系4コマですよ!!あああっ!!シ....シモォン先生っっ!!このすごすぎる変化のほうが私にとっては数段ホラーかもしれないですううっっ!!!!
追記
シモンと聞いて私がもっともズキュンとくる漫画のキャラクターは山岸凉子先生の初期の大名作、白い部屋のふたりに出てくるシモーン・ダルクという黒髪の女性です。寄宿舎を舞台にしたおそらく文学にも匹敵するレベルのレズビアン漫画でありまして、百合モノといえば福原ヒロ子先生を筆頭に色々読んできましたが、ここまで格調高く美しい作品を私は他に知りません!!黒髪ですらっとりりしいシモーン・ダルクのなんともかっこいいことったら!!
ああっ!!今見てもドキドキときめきますっ!!
そのシモーンダルクについて前々から私が思っていることがありまして、三原順先生のはみだしっ子のなかでも私が一番好きなアンジーが(彼は男の子ですが)どこかこのシモーン・ダルクを彷彿とさせるのです。
髪型も近いのですが、何よりお互い大女優を母に持ち、そのことで苦悩しているというバックボーンが同じせいだと思うのです。
そんなわけでひょっとしたら三原先生もシモーン・ダルクを好きだったのかなあ、なんてことを想像するとついつい嬉しくなってしまう私なのでありました。