レジェンド矢代まさこ先生の漫画スクラップ三冊を某古書店で見つけた超ラッキーな私 | きたがわ翔のブログ

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漫画家です。
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おとといの午後、漫画家のおざわゆきさん笹生那実さんと中野でランチする機会がありました。

おざわさんといえば現在傘寿まりこで大ブレイク中ですが、彼女のひらがなの名前を目にした途端、私の頭の中で今を去ること30数年前、ぶ〜けという少女漫画誌にておざわさんが漫画家養成コース第十六回、十五歳で一席を受賞され、”学ちゃんシリーズ”という作品を数作発表されておられた事をぱぱーっとまるで走馬灯のごとくに思い出したのでした。(おいおい走馬灯って....)

 

 

私も含め、たいていの漫画家は自分のデビュー当時の未熟な作品なんてなるべくなら記憶から抹殺したい!!と考えるのが常ではないかと思うのですが...すみません!!何度も書きますが私は意地が悪くも作家のデビュー前後の瑞々しい作品が大好物!!しかもおざわさんは私とほぼ同期で同じ中学生デビュー、なおかつとってもかわいい絵柄だったのでやたら印象に残ってたのですよ!!

 

私はたまたまぶ〜け漫画家養成コースの一回から四十回位までをファイルして保存しており(たまたまか?)それをおざわさんが是非拝見したい!!とおっしゃっていたので、共通の友人笹生さんと共に私の仕事場がある中野までわざわざお越しいただきました。その節はどうもありがとうございました。とても楽しかったです。

 

七十年代漫画の生き字引である笹生さんとクソオタの私に挟まれて、正直おざわさんてば正気を保てたかな?(こらこら!)とやや心配になりましたが、どうやら楽しんでいただけたようで一安心。私の方も頭身短めの学ちゃんが実は999の哲郎を意識していた、などという劇レアなお話まで本人聞けたりしてクソオタとしてはウハウハ!!(死語)

 

でもってこのところお会いする機会があるたびにコミックス未収録の貴重な矢代まさこコレクションをコピーして持って来てくださる笹生さん、こちらも本当に本当に感謝しております。今回いただいた少年マガジンに掲載の”フォルテシモで飛び立て!”と”白い犬が燃えた日’も、すごくよかったですっ!!特にフォルテシモ...の後半からラストにかけての異様なまでのハイテンションは、女流作家初の少年誌進出を果たした先生の強い意気込みがビシビシ伝わってくるようでとっても感動しました!!

 

白い犬...は人間の集団心理の怖さ、醜さがテーマのきびしい問題作。....にもかかわらず、笹生さんご指摘の通り表紙にある煽り文句が、

 

さあ、ほのぼのとした心あたたまる感動をあじわおう。

 

....ってオマエ中身読まずに表紙のワンコの絵だけ見て適当に書いてるだろう!!当時のマガジン編集者!!!!

 

そんなこんなでまたしてもに矢代作品に酔ってしまった私は翌日、未だ山のようにある未読の矢代作品を少しでも古い雑誌から漁れないかと某古書店へふらりと向かったのでした。

 

人間生きてるとたまによく不思議な偶然に出会う事があるのですが、この日、私はものすごーーくツイていました!!

 

古雑誌を扱っているビンテージ館へ行く前に下の階にあるレトロ少女漫画のコーナーに足を踏み入れると、ふと下の棚に積んである古い漫画のスクラップが目につきました。そのスクラップのタイトルを見ますと.....

 

矢代まさこ集その一その二その三

と、あるではないですか!!

 

ぎやああああああああ!!!!!!(失禁)

 

ちょいとちょいとマジですかお客さん!!(意味不明)

私より上の世代のマニアの方が雑誌から切り取ったと思われる矢代先生の漫画のスクラップが売りに出されていたのですよ!!しかも一冊300円!!さ....300円ってアンタ....ヤフオクに出品したらおそらくもっと高額で落札されたろうに....(余計な心配)

 

そ...そりゃ、今の若い方々はほとんど矢代先生をご存じないと思われますが、漫画クソオタの私にとってこれは喉から手が出るほどの貴重なお宝中のお宝!!鼻血ブーとはまさにこのこと!!これって私の普段の行いが良かったからなのかっ!?って絶対ちがうと思うけどな!!そんなこんなで迷わず三冊ともゲット!!三冊ゲットしてもお値段千円以下!!いやほんとマジですか!?

 

 

興奮冷めやらぬまま家に帰って中身を調べますと、

 

 

 

選集一

 

ファニー掲載の純愛シリーズ6編

 

ひとときだけ...

6月は、もの思う

永久花の死

ひぐらしの季節

風が通りすぎる

何処の波に

 

連載作品

ブラジルブラジル!全8話

 

イルカのくる島

 

デラックスマーガレット掲載読み切り4話

 

シークレット❤︎ラブ

トムピリビに会った?

ジュンの奇妙なホリディー

狐狸山夜話

 

 

選集二

 

COM掲載の短編シリーズ12編

 

蝶々の泣いた夜

笑かわせみにいえない話

歌うたう里子

わが名はボケ猫

クモの糸1〜3話

ここちゃん

5匹と2人の物語

シャボン玉1〜3話

影を落とした.....

セント.レニの街

熱・すすき・白い闇

まり子の涙

 

 

選集3

 

COM掲載長編傑作シリーズ4編

 

ノアをさがして

風のある絵

ノミの歌

駄犬の目

 

別冊マーガレット掲載

 

アミーのパチンコ

 

COM掲載読み切り

 

ひいらぎ

エミのストールのこと

うそつき鏡

 

 

どうです!?すごくないですか!?当然すでに読んでいる作品も多かったですが、何よりレアなのは虫プロが出版した伝説の漫画雑誌、ファニー掲載の未読の矢代作品がほぼ全てそろっているということ!!だってファニーはねえ...現在ではリリカと並んでほとんど手に入らんのですよ!!

 

 

 

選集2まで読み終わって....ふうう、なんだかもうため息しか出ません。矢代先生、これら全てを二十代前半でお描きになっているのですよね....その筆力の凄さときたらもう.....。

 

読み切り作品トムピリピに会った?は、以前こちらで取り上げた西谷祥子先生のジェシカの世界を思わせるせつない作品。自分が創り上げた夢の世界に住む少女とそれを守るおじさん。彼の死により少女はその存在を胸に強く生きる決心をしますが、狂気の世界に行ってしまったジェシカと比べるとまだ少し救いがあるような....

 

そしてこういう作品が生まれる時代背景にはやはり当時は今よりも男尊女卑が強かったせいなのかな、と思います。きっと可愛らしい少女の夢を大人の男が鼻で笑うような。

 

そもそも作品の中身を読まずに適当な煽りを書かれるのも、少年誌において矢代先生が女性作家だから、所詮中身は甘ったるい話だろうみたいな決めつけがあったとか?だとしたら言語道断ですよ!!

千明初美先生の大傑作、ちひろのお城といい、この手の作品は自分的に涙なしでは読めません。

 

 

セント.レニの街も自閉気味の少女の物語。でもこちらを読んで思い出すのはあすなひろし先生のサマーフィールドからきた少年かなあ。

 

そして今回久しぶりに名作中の名作シャボン玉を読み返し、昔からモヤモヤと気になっていたことが判明しました。

そうなんですよね、このお話のオチ、実はおおやちき先生のキャンディとチョコボンボンとよく似ているのですよ。いや、正確に言うとキャンディ...がシャボン玉に似ているのですよね。

 

絵柄の方向性は真逆でありながら、おおや先生は中学生の頃若木の貸本に短編が掲載されたことがありまして、その頃若木の看板作家が矢代先生だったことを考えるとファンであってもおかしくない.....

 

そういったクソオタならではのねちっこい洞察を繰り返しながら読んでいますと、しばらく私にとっての娯楽の中心はこの三冊になりそうです。もう永久保存版に決定!!この選集をこしらえたどこかのマニアらしき方に私から心よりのお礼を申し上げますが、このようなレア本を一体どうして手放されたんだろう?

もしや本人に何か....

 

とか色々考えているとおちおち眠りにもつけません。