前回エリノアについて書いたところご好評をいただいたので、その続編?として取り上げたい作品に楳図かずお大先生のみにくい人という短編があります。ていうかタイトル全くひねりなし!!先生ったらドS!!
楳図先生には女性の美に対する恐ろしいまでの執着とその葛藤が描かれた作品がたくさんある事で有名です。代表的なものはおろち(特に姉妹というお話)ですが、小品ながらインパクトではこちらの作品の方が上かも知れません。いやはるかに上。
以下あらすじを含みますのでご注意ください。
みやこ高校には最大の謎と言われている大の仲良し女子二人組がいます。
高校きっての美女阿利砂ミカと高校きっての醜女(しこめ)石川土子。
う...楳図先生、顔が醜いのは仕方ないとして花の女子高生に土子という名前はいかがなものでしょうか!?つ・ち・こ・って....!!
土子はミカに対する憧れが強い反面、彼女の美しさに憎しみをも抱いていました。
そんなある日駅のホームでミカの後ろに立っていた土子は無意識に彼女をつきとばしてしまいます。しかも誰にも気づかれずに。線路に転落したミカは命こそ助かりますが顔にひどい怪我を負ってしまいます。
家に閉じこもり怯えていた土子。そんな気分から1日も早く抜け出したくて貯めたお金を握りしめ整形外科の門をたたく土子。おいおい土子....!!
手術は見事に成功。看護婦にもこんなにうまくいったのは稀、とお墨付きをもらえるほどに美しくなった土子。(つちこつちこしつこい私)
一方事故で醜くなってしまったミカはお岩さんのようなルックスで土子にこうせまるのです。
(いったいだれがわたしをこんな顔にしたの!ねえ土子さんおしえて!あなたは知っているでしょう?)
ひえええ、怖い怖い!!
激しく執拗に問い詰められ罪の意識に苛まれた土子はついに真実を打ち明けます。
(ゆるして!わたしがあなたをつきおとしたのよ!)
その瞬間ミカは包帯を取り、醜い顔をベリベリとはがし始め(おいおいおい)
(これはお面よ
でもあのときあなたにつきおとされて顔を強くうったときは一時的だけれどこんな顔になってしまったわ)
これにて二人の友情にピリオドが打たれますが、ラストにナレーションでこう語られます。
土子がみにくい顔のままならミカは許したにちがいない、
美しい顔をえることはできたけど土子は常に暗い気持ちを、ミカは人を陥れようとする犯罪の心をもっていた...と。
むうう〜エリノアといいこれといい救いのないお話ですな。
タイトルのみにくい人、は、容姿のことではなく心の有り様を指していたのですね。
私には一つ気になる事があります。
ストーリーのキーとなる土子の整形手術ですが、そもそも彼女は以前から費用を貯めていて、たとえあの事故がなかったとしても手術はしたと思うのです。
美少女になった土子を見て、果たしてミカはそれまでと同じ友情を保つことが出来たのでしょうか?
ミカは土子を引き立て役か、あるいは醜女の土子をペットのように愛らしいと思っていたかどちらかではないかと私は思うのです。
しかし、なにより驚くのは楳図先生の容赦のなさ。
女心の醜さというテーマは普通の男性は生理的に辛くてなかなか描ききる事ってできないと思うのですよ。
楳図先生はかるーくそのあたりを超越しておられる。
この部分こそ先生が天才たる所以ではないかと思います!!
そしてエリノアにもこの作品にも言える事なのですが....
何度もストーリーを追っていると醜いと言われるその二人のルックスがなんだかとんでもなくチャーミングでキュートに思えてきてしまうのです。どうして??
そもそも人っていわゆる完璧な美しさにはどこか抵抗がありますよね。
欠点やコンプレックスこそ真に愛すべき部分だと思うのです。とはいえその辺りに限度ってもんもありますけど。
最後に私は特にこのシーンの土子さんが一番好きです♡