平安の秘仏 東京国立博物館 | 仏師のブログ

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仏像制作の現場など紹介させて頂きます。
お楽しみいただければ幸いです。

皆さんこんにちは。

今年のは東京のみならず全国的に雨が多いようで、野菜も値上がりしているなど、いろいろな影響も増えているそうですね。

先日のお休みもやはり雨でしたが、日本木彫刻展も終わったため、久しぶりに東京国立博物館に足を運びました。

 

現在展示中の特別展「平安の秘仏」展を見てまいりました。

滋賀県甲賀市に位置する天台宗の古刹、櫟野寺の重要文化財に指定された仏さまが初めて外部に展示され、しかもその数20体という見ごたえのあるものでした。

 

なかでもポスターにもされている十一面観音菩薩坐像は像高三メートルと圧巻で、しかも360度見て回れるという、貴重な体験となりました。

当時の人たちが、どれほど仏様を頼りにしていたかを感じずにはいられない、圧倒的な存在感です。

 

また、個人的にかなり気になったのは、常設スペースに展示していた阿弥陀様です。

残念ながら写真撮影のできないもので、画像も見当たらないためご紹介できないのですが、簡単にご説明いたします。

 

阿弥陀様は宗派によって片足を踏み出しているお姿のものがあります。これは衆生の救いにすぐにでも迎えるというような意味合いだそうです。

今回展示されてあったのはこの足を踏み出したお姿だったのですが、ほとんどの阿弥陀様は足を踏み出しても、上半身はまっすぐ立っていることが多いです。

ところが件の阿弥陀様は、片足を踏み出している様子をリアルにするためでしょう、上半身を少しひねり、さらにわずかに傾いていました。

ほんの少しの変化なのですが、本当に今にも歩き出しそうなお姿で、作られた方の工夫を非常に感じられたものでした。やはりこちらも仏様の姿にかける気持ちの切実さ、真剣さを感じました。

残念なのは、写真撮影ができなことと、「個人蔵」と書いてあったのでひょっとしたら二度とみられないかもしれないということです。

一期一会と思い、この感動は忘れないようにしたいと思います。

 

当時の人たちには、仏様というのは命を預けるくらい頼りにしていた存在だったのだと思います。現代に生きる自分たちには全く同じ気持ちになることはきっとできないことだと思いますが、先人の意思を少しでも受け継いでこれからも修業に励みたいと感じました。

 

 

それでは今回はここまで