七夕月・私が書いた小説⑯明日で最終回 | HANANOのハーブとアロマのある暮らし

 

一週間前の孝介は、かおりに一番近かった

はずだ。かおりは、まだ雷の日のあのぬるい

唇の感触も、祇園祭の夜の取り合った手の

感触も忘れてはいなかった。

 

何の連絡もなく、孝介が突然連れてきた

彼女を目前にして、気が動転してしまい

声は上ずっていた。

 

しかし、孝介がかおりと一線を引きたいと

彼女を連れてきたことだけは認識した。

 

ふたりが帰り際、見送りに庭に出ると、

白く大きな曼荼羅華が咲いていた。

陽子は珍しそうに、花びらや葉を

クチュクチュと触っていた。

 

孝介は裏に回り、柴犬のゴンと遊んで

いた。

 

かおりは、

「陽子さん、この花がお気に入り

でしたら、お切りしましょうか?

朝になるとしぼんでしまう一日花

ですが」

 

「種ももらっていいですか?」

陽子はまだ熟していない皮を強引に

むき白い綿に包まれた種を見て

 

「おいしそう」

とつぶやいた。