七夕月・私が書いた小説⑮ | HANANOのハーブとアロマのある暮らし

七月最後の木曜日、チャイムが鳴り、門扉

をカチャカチャと開ける音がした。

和室から覗くと、見知らぬ女の子が孝介に

寄り添っていた。

かおりは表にまわり、玄関のドアを開けた。

 

「こんにちは、彼女は役所のバイトに来て

いる子です。今、うちの用地課で用地買収

の資料をまとめてもらっています。

彼女に、お花の先生が僕の亡くなった母に

似ていると言ったら、会いたいと言うもん

で、彼女、つれてきました」

 

「ついてきちゃいました」

 

カノジョツレテキマシタのフレーズが

頭の中をぐるぐる回った。

 

「私、陽子と言います。よろしく」

 

スパンコールがいっぱいついたターコイズ

ブルーのTシャツにシワシワのスカートを

はき、なぜかこの暑いのにブーツをはいて

いた。

 

「これからデートでしたら

お花包みましょうか」

 

「彼女が見学したいと言いますので、

お稽古をお願いします」

 

「じゃあ、そこのフトイとベニバナを

彼女の分も用意してあげて」

 

孝介に言うと、陽子の方を向き、

「どうぞ、おあがりになって」

と言い、スリッパを並べた。

彼女はそれを履かずに、素足のまま

上がった。

 

夏用のブーツとは言え、ブーツの中は

蒸れるのだろう。彼女の歩いたあとの

廊下には、ペタペタとまぁるい足跡が

うっすらとついた。

 

つづく