【Day86 2025.11.28 タリファ→アルヘシラス 33km】のつづき
(1)から読んでね!
ーーー
目的を終えた私は食事に出かけた。
33km歩いたのだ。お腹が空いている。
混雑するバルに入ると隣のおじさんが美味しそうな肉料理を食べていた。
とりあえず生ビールを頼み、店員さんの隙を狙って翻訳機で“隣の方が食べていた料理を注文できますか?”と聞くがnoと言われてしまった。
スペインは食事を提供する時間が厳格である。
そんなところだけ厳格なのが腹立たしい。
仕方ないので早々に切り上げてこの時間も食事ができる店を探した。
Google mapで出てくるのはアラブ料理店ばかりだ。
繁華街にある評価の良い小さなモロッコ料理店に入った。
アラビックの問題はアルコールを提供する店が少ないことだ。
案の定、その店もアルコールは置いていなかった。
他の店を探すのが面倒になった私はそのまま鶏肉のクスクスを頼んだ。
本格的なモロッコ料理を食べるのも良い経験だろう。
出てきた料理はクスクスの上に炒めた玉ねぎ、じゃがいも、キャベツ、鶏肉に大量のレーズンが乗っていた。
酢豚にパイナップルはありかなしか、みたいなもので、レーズン自体は嫌いではないのだが、私は食事にこの甘いレーズンがどうしても受け入れられなかった。
結局3分の1ほどを残して店を出て、また広場に向かった。
広場には大きなクリスマスツリーのイルミネーションが置かれていた。
ベゴによればマドリッド以外のほとんどの町は今日、点灯式をするのだそうだ。
何時かはわからないが、きっとそのうち点灯するだろう。
広場に戻るとイルミネーションの点灯はしていないが教会が開いていた。
中に入るとすでに数人の人がいた。
これからミサが始まるようだ。
誰かにクレデンシャルにスタンプを押して欲しいと頼みたいが、誰が教会の関係者かわからなかった。
ミサに参加すればわかるのだろうが、お腹もいっぱいで座っているとウトウトしてしまう。
こんな状況でミサに参加する気は起きなかった。
Google mapによれば教会は明日の午前中も開いている。
スタンプはその時もらえば良いだろうと私は教会を後にした。
教会を出てもツリーは点灯していなかった。
少し町を散策する。
ムスリムが多いからだろうか。
この町は子どもの多い家族連れが多い。
ヨーロッパとアラビックが混ざったこの町の夜は独特の雰囲気を醸し出していた。
ぐるっと回って広場に戻ってもツリーは点灯していなかった。
広場のベンチでは楽しそうにおしゃべりをする面々や、側転をする子どもたち、動画を撮る若者グループなどで賑わっていた。
それでも点灯式の割には人が少ない。
もう19時を過ぎている。
20時まで待つのは辛いなとchat GPTにこの町の点灯式の時間を聞いてみると、なんと来週の木曜だと返ってくるではないか。
やれやれである。
スーパーでビールとおつまみを買って私は宿に戻った。
私は偶然にも歩いて来ることになったこの町に何かを期待していた。
奇跡みたいな何かが起こることを。
ドラマみたいな何かが起こることを。
しかし何もない滞在だった。
むしろ何か一抹の寂しさを覚えた。
私の旅は、物語は、もう終わったのだ。
日本に帰ろう。
そう思った。