【Day42 2025.10.15 カニャベラル →グリマルド 8km】のつづき
(1)から読んでね!
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レストランに午後1時過ぎに着くと、ランチは1時半からだった。
バーカウンターでノンアルコールビールを飲みながらランチの開始を待つ。
時間になると注文を聞かれレストランブースに案内される。
前菜はシーフードサラダ、メインは店員のお姉さんおすすめのコリジョン・サルサ(?)にした。
飲み物は、ワインにするか水にするかと聞かれる。
メニューに含まれているのだ。
ワインと水が同じ価値なのがスペインのすごいところだ。
禁酒していたが、こうなるとワインをいただきたくなる。
ワインをお願いすると、テンプラリーニョとガルナッチャのハーフボトルが提供された。
食事は素晴らしかった。
シンプルなシーフードサラダは、トマト、ブラックオリーブ、オニオン、グリーンペッパー、カニカマ、たこ、えび、ムール貝で構成さえていた。
味付けはオイルとお酢とバルサミコ。
いずれの酢もキツすぎず、まろやかな味わいだった。
グリーンペッパーとオニオンのシャキシャキとした食感と香りがアクセントとなり、ムール貝の甘味が全体を包む。
久しぶりに美味しいと思えるサラダだった。
メインのコリジョンサルサは、豚の肘の煮込みにポテトフライが添えられたものだった。
十分煮込まれた豚は骨離れが良く、中までしっかり味が染みている。
サルサとはスペイン語でソースという意味らしい。
ちょうどよい塩味と、何種類もの野菜を煮込んで作られたのであろうソースが、説明し難い旨みを生み出している。
そのソースが少し染み込んだポテトも美味しい。
大きすぎると思ったお皿もぺろりと平らげてしまった。
デザートにはフランがでた。
日本で食べるプリンより硬めで、素朴な味わいである。
甘さは控えているので、ゆるめの生クリームとよく合う。
多分、大きなバットか何かで大量に作って、切り分けられるのであろう。
無造作に斬られた長方形のフランは、表面は少し硬めで細かい気泡もありぶつぶつとしていて、中はぷるんという感じ。
その食感の違いも面白かった。
大満足な食事を終えると、久しぶりのアルコールで飲みきれなかったワインは持ち帰りにさせてもらい、宿に帰った。
終わった洗濯物を干すとその写真を撮ってサイモンに送った。
洗濯したよという意味だった。
どこにいる?
と返信がある。
町の名前を告げると、彼からも彼がいる町の名前が寄せられた。
サイモンは荷物をキャリーカートに乗せて運んでいるため、そんなに早く進まないと言う。
それでも私がいる町からはそこそこある。
彼の進み以上に、私の歩みは遅いのだ。
それでも、私はいつか追いつけるだろうと思っていた。
サンティアゴまでは、まだそれなりにある。
足に自信がついてくれば、もう少し長く歩けるはずだ。
Tシャツはその時に渡せば良い。
そう、サンティアゴまでに。
彼からボイスメッセージが届いた。
計画を変更して、サラマンカに着いたらポルトガルに行って、そこからサンティアゴを目指すことにしたんだ。
だからサラマンカまでに会えることを願ってる。
それを逃したら、もう会えないんだ。
え???
なんで?
なんでポルトガルに行くの?
友だちに言われたんだ。
この先、この道は10月末でアルベルゲが閉まって天気も悪くなるし山ばかりになる。かなり厳しい歩きになるって。
それで、いくつかオプションはあるけど、ポルトガルに行くことに決めたんだ。
そんな。
ショックで言葉がでなかった。
君を待って、ゆっくり歩いている。
そう送られてきた。
しかし彼のいる町からサラマンカまでは、もうそう遠くない。
いくらゆっくり歩いても、彼が数日止まらない限り、私の足では追いつけないだろう。
そして同じ巡礼者だからわかる。
彼が私のために止まったり、計画を変更することはないということを。
私がそうしないのと同じように。
なんて言っていいかわからない。
あなたが前を歩いていたから歩けたのに。
あなたが行ってしまったら、どうやって歩けばいいの?
私が送ったメッセージに、彼からの返事はなかった。
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つづく