【Day41 2025.10.14 カサール・デ・カセレス → カニャベラル 33km】の続き
(1)から読んでね!
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I don’t deserve you.
(私はあなたに相応しくない。)
そんな返信が浮かんだ。
全くお角違いかもしれない図々しい言葉だってことはわかっている。
それでも浮かんできてしまったのだ。
それは私が日本人だからとか結婚してるからとか、物理的にとか倫理的にとかそんなんじゃなくて、なんて言うか、彼にはもっと適切な人がいる。
そう、ヒルケみたいな...
ああ、噛み合ってしまったホックを外さなきゃいけない。
そう思った。
だからTシャツを渡しに行くんだろうか?
それでも、そう思えてよかったと思った。
以前の私だったら、そのホックを掴んで離さないようにしただろう。
それは優しさでも愛でもない。
ただ、寂しいだけの子供だったのだ。
10月14日
結局、何も返信しないまま今日を迎えた。
30km越えの歩きはもちろん、辛かった。
しかし1時間に一回は休憩を取る、水分と食料をきちんと取る、ストレッチをめんどくさはらない、などの対策が功を奏し、なんとか今日の宿に到着した。
チェックインを済ませベットルームに荷物を置くと、私はすかさずフロントに戻ってオスピタレロにTシャツのことを確認した。
彼はサイモンのことは覚えていた。
しかしTシャツはないと言う。
私の任務はあっさりと解かれてしまった。
あなたのことは覚えていたけれどTシャツはないって。
どこか他に心あたりはない?
そう送ると、
気にしなくていい、というボイスメッセージが届いた。
そこからは、これまでと同じようなしょうもないやり取りに戻る。
今日はキャンプ泊なんだ。参加する?
とボイスメッセージ。
動物たちとのディナーと睡眠を楽しんで。
そう送ると彼が牛に餌をやる動画が送られてきた。
なんなのこの動画?
しょうもなさにカラ笑いしてしまう。
ああ、すでにホックは外れたのかもしれない。
あるいは、そもそもそんな感覚すら私の勘違いだったのかもしれない。
全く、メンヘラも大概にすべきである。
それでもなんだか、無くした矢印もTシャツも、昇華されたような気がした。
彼とまた会うことはあるのだろうか?
それは神のみぞ知る。
それでも私たちは笑って会えるだろう。
無くした矢印の代わりに、私はこの旅で、これまでの自分にない新たなアイテムをゲットしたような気がした。
疲れた足をマッサージしながら、晴れ晴れとした気分でノンアルコールビールの缶を開けた。
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そんな今日の旅はこちら↓