(1)から読んでね!
カセレスの先も、行けるところまで行ってみようか。
そんな考えが浮かんだ。
この調子なら、1日20km程度でその後ゆっくり休めば、少なくとももう少しは行けるだろう。
しかし直近の問題は、カセレスの先である。
30km以上アルベルゲもバルもない区間がある。
健脚ではない人はみんな、バスやタクシーを使って途中まで行くという。
荷物のデリバリーサービスを使う人も多い。
正直、全工程歩きにこだわる人はそう多くない。
私もみんなから、バスを使え、荷物を送れと言われていた。
でも私は、できれば歩きたい。
リナみたいに割り切れたら楽だろうな。
そう思った。
明日は、二十数キロ歩いてカセレスまで行き、カセレスでもう一泊しようと思っていた。
しかし間の町にアルベルゲがあることがわかったので、あと二日かけてカセレスに行くことに決めた。
後のことは、その時の状況を見て考えよう。
比較的順調に今日の宿につき、諸々のルーティーンを済ませ外のベンチでお茶をしていると、新たな巡礼者がやってきた。
オーストラリア出身のグラントさんだ。
彼は今日、アルフセンから35km歩いてきたのだという。
私が膝を痛めて一週間以上、あのアルベルゲに居たことを話すとかなり驚いていた。
僕も最初のカミーノで両膝を痛めたけど、ゆっくりゆっくり進んだら、サンティアゴまで行けたよ。
同じ町に何泊もしながら進んだんだ。
でも、私はもうヨーロッパに来てから一ヶ月以上経っていて、残された期間ではそんなにゆっくりもしていられないの。
オーストラリアも日本も、ヨーロッパのビザの期間は同じである。
彼は状況を理解してくれて、残りの期間を確かめてからこう言った。
大丈夫だよ。
だんだん膝が強くなるから。
本当?
ああ。僕もそうだったから。
痛めている膝が強くなるなんてあるんだろうか?
わからない。
ヒッヒッヒと笑うおじさんの言葉は若干胡散臭い。
それでもその言葉は小さく輝く、希望の光のように見えた。
みんなに言われた。
一歩づつ、一歩づつって。
それは、かつてカミーノを歩く日本人の友人に、私がかけた言葉でもあった。
一歩づつ、一歩づつ。
時刻は午後5時半。
昨日の夕方は雨がパラパラと降っていたのに、今日は晴天で太陽が眩しい。
明日のことは明日考えよう。
いつだって、辿りついたところが正解なのだ。
ーーー
そんな今日に旅の様子はこちら↓