2025.9.6
マラガで映画のような恋の話を聴いた。
時代は全共闘時代。
中学の同級生だった二人は、大学生になると疑いもなく恋に落ちる。
しかし時代や家族を取り巻く環境の波に、その恋が実ることはなかった。
やがて二人はそれぞれの道を歩き始める。
彼女は別の人と結婚し、一男を設ける。
彼も別の人と結婚し、二子を設ける。
何よりも大切な気持ちは宝箱にしまったまま。
順調に見えたその生活に翳りが見えたのは彼女の方だった。
彼女は夫との生活を訣別し、スペインで自立することを決意する。
あの宝箱は、ここマラガに持ち込んだ。
また開ける日が来るとも知らずに。
それはマラガでの生活が安定した日々の中で起きたことだった。
彼女の夢に彼が現れるようになったのだ。
何か、伝えたいことがあると。
一度ではない。何度も。何度も。
彼女はどうしても彼とコンタクトを取りたいと思った。
しかし長い時を経て彼の連絡先はわからなくなっていた。
マラガに来て約20年、思いを通わせていたのは40年も前のことなのだ。
マラガから日本にいる彼の連絡先をたどるのは不可能に近いと思われた。
それでも諦めず、あらゆる手段を尽くした彼女に、やがて一通の手紙が届く。
ゆっくりと、再び開いた宝箱から物語りの続きが動き始める。
「それで、どうなったんですか?」
予想以上に長くお邪魔し、ご迷惑ではないか気になっていた。
それでも胸が締め付けられるような展開に、その先を聞かずにはいられなかった。
御年76歳になられるご婦人の純愛の、なんと美しいことか。
私の頭の中には、回想シーンに入る映画のカットが鮮明にイメージできていた。
事実は小説より奇なり。
それは奇でも恋でも愛でも、冒険でもなんでもそうなのだろう。
語られる物語に魅了され、人々は主人公に憧れる。
しかし、実際に生きるのは容易くない。
それは自分の人生を生きると決めた人にだけ許された特権なのだろう。
彼女の生き様には、そんな覚悟を感じた。
こんな酔狂な旅をする私も、あわよくばそうでありたい。
手紙を受け取ってから10年。
壮大な時間と空間を跨ぐ、二人の美しくも切ない恋の物語は、未だ続いている。
物語はまだ終わっていない。
いつか物語の結末を読める日が、今から待ち遠しい。
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