蟻地獄の先(世界の旅~ラオス・ビエンチャン編~)第13話 | ちびタンクのひとりごと

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大好きな旅のこと、心理学・スピリチュアル・ヨーガのこと、日々の気づきなどをつぶやいています♪

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私たち3人は,私のフライトの時間ぎりぎりまで,

ピザ屋で存分に楽しんだ。


「さあ,荷物を置いてくつろいで。

日本で彼女がお世話になるんだ。

今日は僕がご馳走するから,なんでも食べてね。

私たちの故郷は,なんでも素手で食べるんだ。

だから,君も今日はそうしてね。

そうだ,手を洗っておいてでよ。」


「手で食べるのは大丈夫よ。

インドにも行ったことがあるもの。

そもそも,ピザだしね。

来る前にトイレに行ってきたし,

ナプキンもあるから手洗いは大丈夫よ。」


「そうか。それはよかった。

そうそう。

さっき航空会社から電話があって,君の使ったクレジットカードの有効期限のことを確かめられたんだ。

勿論大丈夫だって言ってしまったけど,確認してもらってもいいかな?

カードを見てもらえる?」


「もちろん。」


私は荷物からお財布を取り出し,カードの有効期限を確かめた。

勿論問題はなかった。


「大丈夫よ。」


「良かった。」


今度は彼女が興奮気味に言う。


「ねえねえ。今日はすごい出会いになったわよね!

私,本当にうれしいわ!

絶対に,私たちの故郷のセブにも来てね。」


「もちろん!」


「セブはいいよ。

本当に素敵な島なんだ。

みんな家族で・・・。温かくて・・・。

そうだ!今日はお祭りだったね。」


「そうよ~。」


「みんなで集まって,ごちそうを食べて,お祈りをするんだよね。」


「そう!願い事を唱えるのよね。

そうだ!

私たちは今日はセブに居られなかったから,一緒にここでお祈りをしない?」


「それは名案だ。」


「いいわよね?」


「もちろん!どんなお祈りなの?」


「水を使ったお祈りよ。教えてあげる。

水・水・水・・・

うーん,ここではできないわね。

一緒にトイレに行きましょ。」


「ああ,行っておいで。」


「わかった。」


彼女の後を付き,私もトイレに立った。


トイレの洗面台で,彼女は不思議な仕草をした。


蛇口をひねり,水を出す。


それから,

左手で掬った水を器用に左手のひじから下にかけ,

今度は右手で掬った水を左手にかけた。


これを7回繰り返しながら,願い事を繰り返すのだという。


「あなたの願い事はなに?

このお祈りは本当に効くわよ!

出産?」


彼女は笑いながら,私の脇を肘でつついた。


「違うわよ~」


と,私たちは長らくトイレでふざけあったのち,

席に戻った。




「もう,行った方がいい。」


しばらくすると口火を切ったのは従弟の彼だった。


すっかり日は落ちていて,

確かに,フライトのための出発の時間が近づいていた。


私は彼女と深いハグをして,

”メールする,次は日本でねっ”と言葉を掛け合って別れた。


ホテルの方向に向かって私は歩き出した。


と同時に,一応,念のため,

とお財布を確認した。




あるはずのカードがなかった。




振り返ったが,二人の姿は既になかった。



---つづく---