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荷物を手元で確認できた私は,やっと心を落ち着かせ,
既に残り少なくなったマッサージを楽しんだ。
トータル1時間ほどのマッサージはほどなく終わり,
さっさと着替えを済ませロビーに降りる。
しかし,彼女の姿はなかった。
待ちくたびれて,どこかに行ってしまったのだろうか?
海外での口約束ではよくあること。
特に不審だとは感じなかった。
しかし,こんな状況の場合・・・
やはり何か犯罪に関係する?
でも,大切なものはすべて手元にある・・・。
思考をぐるぐると駆け巡らせながら,ホテルを出る。
すると,
「はーい!」
と,向こうから手を振っている彼女が見えた。
「カモン!カモン!」
彼女自身もこちらに向かいながら,私を呼び寄せた。
渦巻いていた思考はまたまたあっさり遠のいて,
私は彼女に駆け寄った。
「よかった~。
待ってもこないから,行き違いになってしまったかと思っていたの。
あの店で従兄弟とディナーをしようと入ったのよ。
行きましょう」
私は彼女について,店に入った。
その店は,世界的に有名なピザのチェーン店。
ラオスでは決して安い店ではない。
店では,彼が人気のないテラスの4人席を取っていた。
「おー,会えたんだね。よかった。
さあ,座って座って。荷物を置いて,くつろいで。
お腹すいたでしょ。なんでも食べて。」
私は二人の笑顔にほっとして,
なんだかこれまで,あれやこれや思案したことがばからしくなった。
急にお腹がすいてきて,
遠慮なくカルツオーネを注文した。
その時,この後の24時間,
なにものどを通らなくなることに,
私は全く気付いていなかったのだ。
---続く---