231.カッコつけの奨め | しづりん絵日記

しづりん絵日記

もがけばもがくほど深みにはまる。世の中を斜に構えつつ、平和に生きよう。


「ポルシェってよく切れる包丁みたいだね。」

小さな後部座席でひっくり返りながらそう言ったのはサーフィンと料理を趣味としたM君だ。なるほど、例えがいい。


夜の赤坂を銀色のポルシェが走る。ポルシェは、フェラーリよりブレーキがいい。バブルの頃、大阪から原宿まで彼女に会いにたった3時間で来てたバブリーなおじさんが言っていた。スピードを出すには、実はポルシェの方が安全というわけだ。M君は言う。


「まぁ、そのおじさんはね、言ってみればお前みたいな奴の事だよ。」


'お前'というのは、資産総額100億円を目指す、ポルシェの持ち主K君のことだ。赤坂の友達のマンションの駐車場に車を停めると言う。こんな所に人住んでるんだっけ?というマンション。


「×××号室の友達のところへ行くんですが。」


すると、2人のドアマンが出てきた。至れり尽くせりだ。駐車場から出口まで案内もしてくれる。高級マンションというのはこういうものか。へぇ、ホテルみたいじゃない。


バブル時期にはずいぶん金を持っている奴が居た。ポルシェに乗っている人もずいぶん居た。大人になると私もポルシェに乗ってたりするのかな、漠然とそんなことを思っていたもんだ。そんな自分もバブリーだったから、一流ホテルに行くのも、一流レストランで食事をするのも、全くビビらなかった。ワンシーズンに着れないほどのスーツを持っていた。けど、最近はどうだろう?


「建築家は一流の暮らしをしなきゃダメだ。」


前川國男の秘書だった人はそう教えられた。丹下健三しかり。所員は食事はホテルでしろと言われた。奥様キラーで有名だった宮脇壇はポルシェで現場に乗りつけて、グッチのモカシンでぬかるみを歩いた。


アンチバブルの今。そういった「格好つける」ことが、逆に「格好悪い」ことのようになっている。けど、本当にそうなのか?やみくもにブランド物を身につける事は確かに格好いいことじゃない。だけど、上等なシャツを着たり、仕立てのいいスーツを着る事と同様、ふかふかの絨毯を歩いたり、丁寧な接客を受けたり、緊張感のある空間体験をしたり。それらは全て建築家にとって、当然の自己投資なのだ。


何故なら、建築家に建築を頼むのは、2人のドアマンに毎回のように接客されているような人種だからだ。


貧乏臭い建築家に、金持ちが建築を頼むというのか?建築家は、常に洗練され、教養豊かであるべきだ。毛玉のついたセーターを着ていても仕事が来るのは西沢立衛くらいだ。でなければせいぜい貧乏臭い「住宅作家」と言われるのが関の山だ。


一流の暮らし。


それは、金を掛ければいいってもんじゃない。だけど大枚はたかないと経験出来ない事もある。たったそれくらいの度胸も無くて、何が建築家だ。バカモノよ。そもそも「格好いい人」とは、「格好つけ続けた」から「格好いい」のだ。
(⇒「168.と174.真のブランディング」を見よ。)


男たちよ。もっとカッコつけてくれ。


だって、、、、。ドキッとする男が最近少ないんだも~んッ!(笑)


しづりん絵日記
あーかいぶ 2006年11月26日21:16