東京ミネルヴァ法律事務所の破産を巡る「果てしない闇」  闇株新聞 | 日本の国益を守る 日本の歴史・文化・伝統を守る

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過払い金請求訴訟で派手なコマーシャルを繰り返していた東京ミネルヴァ法律事務所が6月24日、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。そもそも法律事務所の破産などあまり聞いたことがないが、負債総額は51億円に上る。東京ミネルヴァ法律事務所は代表弁護士が6月10日に第一東京弁護士会に法人解散と預り金流用を報告し、同弁護士会が破産を申し立てたものである。

 事件の主役は東京ミネルヴァ法律事務所でもその代表弁護士でもなく、旧・武富士の札幌支店長だった兒島(こじま)勝氏が2004年に設立したDSCである。ちょうど士業の広告が解禁された時期で、DSCも弁護士事務所などの広告代理店ということになっていた。

 また当時のサラ金など貸金業者は出資法の上限金利(当時は29.2%)を適用し、貸金業法の上限金利(金額により15~20%)との差額はグレーゾーン金利として黙認されていた。

 貸金業を監督する金融庁は2006年2月に貸金業規制法改正に取り掛かる。紆余曲折はあったものの最終的に、公布後3年をめどに出資法の上限金利を20%に下げ、貸金業法の上限金利と同一とする内容で2006年12月20日公布、2007年12月19日施行、上限金利は2010年6月18日までに引き下げることになった。

 ちなみにこの2005~6年当時、金融庁総務企画局課長補佐としてこの貸金業法改正に関わったのが森まさこ・現法務大臣である。

ところがこの法改正だけでは過去に上限金利を超えて支払った金利まで遡及して請求できないように思われる。そこで持ち出されたのが最高裁の昭和39年と43年の判決で、上限金利を超えて任意に支払った金額は(貸金業者が認識しなくても)元本に充当され、元本が返済されていればそれに支払った利息は返還請求できることになる。さらにその返還金に対しても利息(5%)が支払われるとの最高裁判断(2011年12月)も加わった。

 ここから過払い金返還訴訟は弁護士事務所のドル箱となる。また大手サラ金会社は次々と経営危機に陥り日栄や武富士は破綻、アコムは三菱UFJフィナンシャル・グループ、プロミスは三井住友フィナンシャルグループ傘下となり、同じようにドル箱となる。

 そこで先ほどのDSCである。旧・武富士の支店長だった創業者の兒島氏が顧客リストをごっそりと持ち出し、過払い金返還請求は弁護士しかできないため弁護士を集めて東京ミネルヴァ法律事務所を2012年に設立させた順番である。そして社員を派遣して経理を完全に掌握し、その人件費、集客の業務委託費、コマーシャル代理店手数料、家賃、サーバー、ロゴの使用料など「収入以上」を吸い上げていたことになる。

 さらにDSCは2014年11月に東証二部上場のRVHに議決権の20%を3億円で売却し、RVHの新株と新株予約権を合計5億円引き受けてそこから回収している。この新株発行価格と新株予約権行使価格は230円ほどで、見せかけは高収益会社のDSCの持ち分利益が計上されるため(現金は1円も入らない)RVHの株価はすぐに1500円近くまで上昇し、ここでも兒島氏はボロ儲けしたようである。

 2015年2月に兒島氏とDSCは脱税で告発され、また兒島氏は別に経営していた貸金会社の違法金利で逮捕されたこともあり、2015年4月にはDSCの全業務をリーガルビジョンが引き継ぎ、兒島氏のかつての部下が社長となる。またRVHもリーガルビジョンとなった持ち分を(たぶん)2億円で、兒島氏の関係する人物のペーパーカンパニーに売却しているが、実質オーナーは一貫して兒島氏である。ちなみにRVHはその後、もっと馴染みのない美容業界に多額の資金を投入し、本年になってそっくり売却して多額の損失を計上するなど典型的な「漂流企業」となっている。

 そして兒島氏が東京ミネルヴァから吸い上げた金額は130億円とされる。東京ミネルヴァは売り上げの他の「顧客の預かり金」を31億円流用して支払ったことになるが、実際は兒島氏が派遣した経理部員が勝手に支払っていた。また別途リーガルビジョンに20億円の未払いがあるそうで、合わせて51億円が負債総額となる。

 これはどう考えても「カタギ」の仕事とは思えない。東京ミネルヴァ以外に兒島氏に吸い上げられていた弁護士事務所もあるはずで、何よりも兒島氏以外にも「同業者」がいたはずである。全体で過払い金請求が「闇」に吸い上げられた金額は、想像がつかないほど大きいはずである。

 そして最大の問題は、そもそも政府(金融庁)が主導した貸金業法改正が弁護士業界を潤し、破綻した大手サラ金会社を捨て値で傘下に入れてドル箱にしたメガバンクがあり、その中で巨額資金が「闇」に吸い込まれているとなるといろいろ都合が悪いことである。

 その結果、この問題は「単なる一法律事務所の破綻」として粛々と処理され、みんなの記憶から消えてしまうはずである。「闇」に消えた巨額資金は永久に追及されないことになる。