日本での新型コロナウイルスの抗体保有率は東京都で0.10%、大阪府で0.16%、宮城県で0.03%だと日本政府が6月16日に発表した。最近、ソフトバンクが調べた社員らの抗体保有率も0.43%と低かった。その前に東京都が調査した結果も0.6%だった。コロナに関する世の中の見識や私の見立ては従来「感染力が非常に強いので、ワクチンが完成しない限り、人類の6割以上が感染して抗体を保有する集団免疫の状態になるまで感染が拡大する」というものだった。5月の段階でニューヨークやストックホルムの都市部が20%ぐらいの免疫保有率で、集団免疫に近づいている感じだった。しかし今回の日本の抗体保有率は異様に低い。従来の見立て通りに考えると、日本は集団免疫まで何年もかかることになる。どういうことか??
実は最近、コロナに対する従来の見立てを崩す研究が相次いで出てきている。米国やスイスでの研究だ。それらを総合すると以下のようになる。「人類の多く(40-70%もしくはもっと)は、新型コロナのウイルスが体内に入っても感染しない。既存の他のコロナウイルス(風邪)に感染して得られた免疫が、新型コロナに対する免疫力にもなっているようだ」「その関係なのか、新型コロナに感染した人も、ある程度以上の強い症状に陥らない限り、治癒していく際に体内に新たな抗体が作られない。重症患者だけが、新型コロナの抗体保有者になる」。新型コロナは重症化しない限り、ウイルスが体内に入っても人々が持つ既存の免疫力で退治され、抗体すら作られずに終わる。多くの人は、体内の既存の免疫力でコロナを撃退し、感染すらしないで終わる。感染しないので抗体も作られない。抗体検査しても、抗体保有者が意外に少ない結果になる。新型コロナが既存のふつうの風邪に対する免疫力で退治されるなら、新型コロナはふつうの風邪と同じくらいの脅威でしかなく、ふつうの風邪の一種だといえる。
米国の抗体保有率はニューヨークが高いが、全米でみると3-5%ぐらいだ。中国の武漢は3%で、スペインは5.2%だった。日本では全国民に対する結核ワクチンのBCG接種をしており、BCGは長期的な広範な免疫力の上昇をもたらす。BCGの意外な副作用として人々の広範な免疫力が上がり、新型コロナのウイルスが体内に入っても感染に至らず撃退され、新たな抗体も作られずに終わっている可能性がある。日本の抗体保有率に異様な低さはBCGのおかげかもしれない(中国など、BCG接種を義務づけている日本以外の諸国の抗体保有率はそれほど低くないが)。
感染しても抗体が作られないというと「抗体がないので再感染のおそれがある。新型コロナは人々を何度も感染させて死滅させる恐ろしい病気だ」という恐怖扇動報道になりがちだ。しかし、マスコミや政府が演出する「闇夜の枯れすすき」の誇張を剥いで考えると話が逆になり「新型コロナは、人々の既存の免疫で退治できる程度の低い脅威の病気だ。ふつうの風邪の一種だ」と考えるのが自然だ。
新型コロナに感染しても重症化しないと抗体が作られないことが多いというスイスでの研究結果をふまえて考えると、感染者統計と抗体保有率との間のつじつまも合う。日本では多くの場合、入院が必要なほどの重い症状にならないとPCR検査の対象にならず、感染者統計に載らない。統計上の感染者の多くが、ある程度以上の発症者だ。そして、感染後に新型コロナの抗体を保有するのも、ある程度以上の発症者だ。東京都の統計上のこれまでの感染者数は5600人で、東京都の人口(970万人)の0.06%にあたる。東京都民の抗体保有率は0.10%であり、両者は大体同じ水準だ。そこそこの症状で発症しても肺炎になっていないとPCR検査してもらえないので、発症したのに感染者として扱ってもらえないまま治癒して抗体保有した人が都民の0.04%いたという仮説が考えられる。スペインでは抗体保有率が5.2%と発表された。スペインの統計上の感染者数は30万人で、人口(4700万人)の0.63%だ。抗体保有率が正確なら、中程度以上に発症した人が統計の8倍以上いたことになる。もしくは抗体保有率を精査するともっと低い数字になる。
これまで、新型コロナとの関係について人々を区分すると以下の4つだった。(A)まだウイルスが体内に入ったことがない人。(C)ウイルスが体内に入り感染したが無症状のままの人、その後治癒した人。(D)ウイルスに感染し発症したが軽度な人と、その後治癒した人。(E)感染発症し重症化した人、その後治癒した人、死亡した人。そこに、今回の米国とスイスの研究をふまえると、新たに(B)ウイルスが体内に入ったが既存の免疫で撃退し感染しなかった人、が加わる。(B)の人はかなり多い。人類の半分もしくはもっといる。抗体保有率の異様な低さや、BCGの効果などを考えると、日本などいくつかの国々では、人々の90-99%がこの区分に入るかもしれない。
(B)の区分の人々は、抗体検査やPCR検査で見分けられない。既存の区分において(B)は、これから感染する(A)だと思われていた人だ。だが実際には、(A)の人々はこれから感染しうるが、(B)の人はもう感染しない。次にウイルスが体内に入ってきても、既存の免疫力で再び簡単に撃退できる。新型コロナ専用の抗体がなくても再感染しない。人々の大半が(B)であるなら、(A)の人々の大半も、これからウイルスが体内に入ってきた時に簡単に撃退し、(B)に仲間入りする。雑駁な推測になるが、日本など多くの国は現時点で、総人口のうち、(A)が10-20%、(B)が50-70%、(C)が10-20%、(D)が5%以下、(E)が1%未満でないか。(B)から(E)の合計が60-80%になると集団免疫なので、日本など多くの国は、すでに集団免疫になっている。
ワクチンの必要性も大幅に低下する。ワクチンが必要なのは(A)の人々のうち、将来(E)に入るかもしれない人だが、そのような人はとても少ない。そもそも(E)の死亡者のほとんどは主な死因が新型コロナでなく別の既存の持病であり、コロナ危機が起きなくても近々死ぬ人だった。
ヒトや動物の免疫の仕組みはまだよくわかっていない部分が多い。人が生来持っている自然免疫や、既存の風邪で獲得された免疫、BCGなど既存の予防接種による免疫強化が、人々の体内での新型コロナの撃退に役立っているという話は、コロナ危機の進展とともにぽつぽつと出てきた。それらの仕組みを確定的に検証することは、免疫自体のシステムの全容が完全に解明されない限り困難だ。今のところ(A)の人と(B)の人を見分ける検査も存在していない。PCR検査も抗体検査も、 完全に見分けられるのは(E)の人だけで、(C)(D)の人は陽性になったり陰性になったりする。(A)(B)の人は陰性になり、(A)と(B)を見分けられない。
新型コロナの実体を解明する作業は、ふつうの風邪の実体を解明することに似ている。ウイルスの伝播力は強いが発症性が弱く、多くの人は数日内で治癒するので、感染したかどうか、発症したかどうかの判別が困難だ。その意味でも、新型コロナは風邪の一種だ。「人々の多くが無発症で感染する。感染したら無発症でも他人を感染させるので全員の外出自粛が必要だ。マスクをしていない奴はけしからん」という従来の見立ては間違えだったことになる。実際は「人々の多くはウイルスを体内に取り込んでも感染しなかった。感染していないので他人にうつすこともない。外出の自粛やマスク必須は病理学的な理由からでなく、政治的・儀礼的な理由によるものだ」である。コロナ危機は史上最大の馬鹿な噴飯ものの話だ。
ウイルスを取り込んでも感染しなかった(B)の人が誰なのか、何人いるのか確定できない以上、(B)の存在を反映してコロナ対策を作り直すことが難しい。コロナ対策はもともと非常に政治的で、トランプの米国が日欧などに都市閉鎖を強要した不正っぽい経緯がある。これから各国が急に(B)を意識した政策転換をするとは考えにくい。史上最大の愚策である各国の都市閉鎖・外出自粛・社会距離・マスク義務は、(B)の存在が見えてきたことでさらに愚策になりながら延々と今後も続く。
米国とスイスの研究は、以下の通りだ。米国カリフォルニア州のラホヤ免疫学研究所の研究者たちが、新型コロナ発祥前に集めた、既存の別のコロナウイルス(ふつうの風邪)に感染した11人の血液サンプルを調べたところ、その半分(40-60%)から、今年の新型コロナのウイルスを防ぐ免疫作用を持つ「T細胞(免疫システムの中心的な存在)」が検出された。ふつうの風邪の感染で形成される抗体が、新型コロナに対する免疫力を兼ね備えているらしいことがわかった。ふつうの風邪にかかったことがある人の多くは、新型コロナウイルスが体内に入っても感染(ウイルスを定着、増殖)させないか、感染しても限定的なかたちに制限できる。この既存の免疫作用が、新型コロナが蔓延しているのに感染や発症をしない人が多い世界の現状につながっている。
また、スイス・チューリッヒの大学病院の研究者たちが、病院で新型コロナ感染者(と後でわかった患者)に濃厚接触してしまった医療従事者109人を調べたところ、新型コロナの症状があった92人のうち、11人しか抗体(IgG)が作られていなかった。コロナに感染しても、ほとんどの人には抗体が作られないまま治癒する。109人のうち、(1)無症状でPCR検査も陰性だった人が17人で、この全員にIgG抗体が作られなかった。(2)症状が出たがPCRが陰性の人が71人で、この中の3人(4%)にだけIgG抗体が作られた。(3)症状が出てPCRも陽性の人が21人で、このうちの8人(38%)にIgG抗体が作られた。感染時にまず作られるIgA抗体も、(1)の2人、(2)の4人、(3)の8人にしか作られなかった。発症しても本格的にならないと抗体が作られないことがわかった。
チューリッヒの研究所はまた同じ病院の56人のコロナ発症者も調査し、56人のうち23人(41%)しかIgG抗体が作られていなかった。56人のうち、(1)軽症者が19人で、この中の5人(26%)だけIgG抗体が作られた。(2)重症者が37人で、この中の18人(49%)にIgG抗体が作られた。重症化しても長期的なIgG抗体が作られるのは半数にすぎない。医療従事者と患者を合計すると、165人中34人(21%)にしかIgG抗体が作られなかった。カリフォルニアの研究と合わせて考えると、軽症者や無症状を中心とする残りの人々(79%)は、もともと体内に持っていた既存の風邪の免疫で新型コロナを撃退したことになる。
米国やスイスの研究は対象数が多くなく、広範に検証されたものでもない。コロナ危機の政治歪曲性もあるので「そういう説もあるが真偽は不明で、政策の根拠に使える代物でない」と一蹴されて終わるだろう。しかしその一方で、日本などでの抗体保有率の異様な低さとあわせて考えると「重症化しないと抗体が作られない」というのは一蹴しにくい事実だ。そして、自然の道理から考えて、重症化しないと抗体が作られない理由は、人体が、新型コロナをそれほどの脅威でないと認識しているからだろう。ヒトにとって重大な脅威なのに、感染時に人体が新型コロナの抗体を作らないことはあり得ない。
「新型コロナはただの風邪だ」と言うことは従来「暴言」「他の人を感染させる危険な妄想」とされてきたが、実はそうでなく事実に近いのだと言えるようになってきた。大きな問題はウイルスでなく、多くの人々が歪曲話を軽信して洗脳されてしまったことである。そもそも今回の話を見つけたのは、米マスコミが「フェイクニュース」と非難中傷するオルトメディアのサイト「オフガーディアン」が、この件についての分析記事を出してくれたからだ。実のところ、政治経済の話も含めて、今やマスコミこそが「フェイクニュース」である。
最近「第2波の感染拡大が起きる」と世界的に喧伝されている。だが米国では、検査数を増やしたので感染者が再拡大しているだけだという指摘が出ている。新型コロナの統計はこれまでも各国でいろいろ歪曲されてきた。「第2波」は新手の歪曲と疑われる。