高出力 レーザ技術の研究
○前田真吾*、鈴木祐仁*、千葉健太郎*、川口健太*、中澤利之*
1.研究の背景及び目的
近年、航空機のステルス化並びに巡航ミサイル等の高速化、低高度飛しょう化等により、艦船や地上重要防護施設への攻撃等の経空脅威が増大している。これらの脅威に対して、従来の対抗手段である艦(地)対空ミサイル等による対処では、目標の発見から撃破に至るまでの対処時間が短くなるため、防護可能覆域が狭くなると予想される。
これらの脅威に対抗するためには、瞬間対処性が高く、複数の目標に対しても繰り返し対処できる高出力レーザによる防空システムの構築が有効である。
このような防空用高出力レーザシステムを実現するためには、移動する目標に高出力レーザの照射を可能とする装置を試作し、高出力レーザシステムの構築に必要な各構成要素技術を確立するとともに、目標への照射効果を確認することにより、将来の防空システムとしての成立性を確認する必要がある。
そこで、平成22年から平成28年まで、防空用高出力レーザ兵器に関する研究(以下「本研究」という。)を実施し、各種対艦(地)ミサイル等に対処可能な近接防空システムを見据え、将来の防空システムとしての成立性を確認するためのプロトタイプシステムを構築した。図 1 に将来の防空システムの運用構想図を示す。
2.研究内容
本研究では、レーザ発生方式に化学励起ヨウ素レーザを採用し、最大出力 50kW 級のレーザシステムを実現した。図 2 にレーザ出力の一例を示す。
また、当該システムを用い、最長 1,000m 先に固定した目標に対する照射効果を確認した。図 3にレーザ照射時の一例を示す。
さらに、移動する目標に対する追尾機能を確認することで、精密追尾技術を確認した。
3.まとめ
出力 50kW 級のレーザシステムを用い、離隔した目標に対する照射効果を確認するとともに、精密追尾技術を確立した。
当該研究成果をベースとして、平成30年度から新たな研究を実施している。
*電子装備研究所電子対処研究部 電子戦統合研究室
近年、ドローン・ドローン群、迫撃砲、無人機、水上ボートテロによる脅威は増している。将来的にレーザー砲による迎撃が有効な対抗手段となる。
米国では30kw級のLow'sの水上艦への試験搭載が始まり、実用化目前である。
日本でも58kw級の高出力レーザーシステムの実験が2010~2014年度まで行われた。
高出力化と小型化を両立可能な化学励起ヨウ素レーザ、高出力レーザの大気伝搬特性等の把握、移動目標上にレーザ光を指向・照射する技術等が確立され、我が国のレーザ技術は、いちはやく50kw級で実験するなど、世界的に見ても最先端である。
高出力レーザーの実用化は、高出力化が大きな要素でありますが、如何に目標を追尾し続け、照射し続けるメカトロニクス的精度も重要な技術となる。この精度に関しては、日本にアドバンテージがあるという話だ。
新島で行われた実験では1km先を高速で移動する目標に対し数センチ単位の誤差しかなかった。数センチ単位の誤差であれば目標を撃破可能であるが、同じ出力であれば誤差が少ないほど照射時間はより短く済む。
詳細は⇒ レーザー技術~物理学が生んだ未来の兵器~ 参照
高出力レーザシステム
高出力レーザシステムのイメージ図
高出力レーザシステムの迎撃フロー
高出力レーザシステムは、高出力で集光性に優れたレーザ発生装置、移動目標にビーム照射可能な追尾照準装置及びビーム指向装置等で構成されます。迎撃フローに示す様に、赤外線カメラで高速目標を追尾し、高出力レーザ光を集光させ、撃破するまで追尾・照準・照射します。
http://www.mod.go.jp/atla/densouken.html
米国では既にステルス機が運用開始されており、今後、諸外国においても航空機のステルス化が進展することが予想され、ステルス機が近距離接近し発射される精
密誘導弾等の脅威は早晩現実のものとなると考えられる。
また、巡航ミサイル、ハイダイブ型ミサイル等の拡散及び高速化、低高度化、高精度化も進展しており、艦船や基地等の地上重要施設等は大きな脅威に曝されることとなる。
防空用高出力レーザシステムは、近距離に接近するまで発見が困難なミサイルや真上から飛来するハイダイブ型ミサイル等の脅威に対しても対処できる有効な防御兵器となる可能性がある。
また、防空用高出力レーザシステムに係る技術は、米国において多額の費用と長い期間をかけ、火器、誘導武器に続く装備の実現に必要な技術として鋭意研究開発が行われているが、最先端技術であるため、我が国への情報開示の可能性は低いと考えられる。
2018年度よりいよいよ実用化事業が始まった。
2018年度(平成30年度)防衛予算 その4 高出力レーザー砲 2017/9/4(月) 午後 10:40
新研究は、瞬間対処性が高く、精密誘導弾等のみならず、近距離から発射されるロケット弾等への対処が可能な艦船搭載型及び車両移動型の近接防空システムの実現を目指すと思われます。
高出力レーザシステムは、対処時間が限られる近接した脅威に対しての瞬間対処性及び複数の脅威に対しての多目標対処性を有することから、近接防空用として少なくとも100~150kw級になると思われます。
新たな研究は、化学レーザーではなく、公募で固体レーザー方式のひとつである「ゼノフォノンライン励起新型高出力Yb:YAGセラミックレーザー」が選定された。
防衛装備庁で進められてきた「高出力レーザーシステム構成要素の研究試作」では、化学(ヨウ素)レーザーを使用したシステムの研究が進められてきたが、米国等では固体レーザーが主流になっている。防衛装備庁も2018年以降の研究開発においては固体レーザーを基本としたシステムを計画しているようだ。
固体レーザーは気体レーザーと比べて活性中心の濃度がはるかに高いため、比較的小型ながら高い増幅利得が得られ、また発振出力も大きいという特徴を持つ。
将来的に瞬間対処性が高く、精密誘導弾等のみならず、近距離から発射されるロケット弾等への対処が可能な艦船搭載型及び車両移動型の近接防空システムの実現の見通しを得ることができる。
高出力レーザシステムは、対処時間が限られる近接した脅威に対しての瞬間対処性及び複数の脅威に対しての多目標対処性を有することから、近接防空用としての有効性は認められると評価でき、我が国の防衛技術基盤を強化し、もって防衛力の質的の向上に資するものと位置づけられる。
光波自己防御システムの研究は、既に平成24年2012年 には完成評価された事業だ。 輸送機等の大型機及びヘリコプタに対する赤外線誘導方式の携行型地対空ミサイルの脅威に有効に対処する兵器であるが、2011年(平成23年度)まで開発が続けられてはいる。
ミサイル技術の進展により、既存の妨害装置に対し、優れた対妨害性を有する赤外線誘導方式の携行型地対空誘導ミサイルが出現していることから、これらのミサイルに適切に対応し、誘導をレーザー照射により妨害する本システム防衛省が独自で研究開発を実施したものだ。
C-2への搭載が待たれるところだが、説明員の方に質問をした。
「例えば、レーザーポインターにも反応するのですか?」熱源があれば反応するとのこと。「それでは、レーザーポインターを照射している暴力集団にレーザーを照射できますか?と、聞いたところ・・・ 説明員「それは・・・・」 まあ、答えにくいし、説明員の方も考えていないかもしれない。
国内に生息する基地外の暴力集団がレーザーポインターを航空機に照射したら、照射し返してやるには最適な装置ではないか?反日の基地外暴力集団に、おもいっきり光波自己防御システムで、お仕置きしてやりたいですね!
マイクロウェーブ兵器については、連続波のマイクロウェーブ兵器と電磁パルス兵器の2通りがある。防衛装備庁技術シンポジウム2018では、陸上装備研究所の電磁パルス兵器のみ展示され、高出力マイクロ波については、配布された電子装備研究所のパンフレットに載るだけなのだが、参考までに記事に載せます。
これが理想のミサイル防衛だ!元陸将が提言【ザ・ファクト×元陸将・用田和仁氏 2/2】
【国防緊急提言】現代軍備の劇的転換!電子戦・マイクロ波兵器で日本の得意技を生かせ![桜H30/11/19]
核爆発が起こると半径数百キロから1000キロ以上の広範囲に強烈な電磁パルス(EMP)が伝わり、電子装置やコンピューターシステムを機能麻痺することは知られている。
新たな脅威に対処する方法として、その電磁パルスを人工的に照射する方法が考え出されてます。高出力マイクロ波を遠距離に届けて目標の外殻や電子装置などを焼き切るといった方法で、その機能を奪い、弾道ミサイルや巡航ミサイルの機能を無力化させることが有効であることが認識されています。
具体的には高出力マイクロ波を、対象物のアンテナや電磁的隙間等から侵入させ、電子機器を故障、破壊させるるのだが、 その電子機器への電磁波侵入は
FrontDoor Coupling と Back Door Coupling の2つに分類される。フロントドアとはアンテナからの侵入のことをいう。バックドアは電磁的な隙間外部との接続信号ライン、電源ライン等からの侵入のことをいう。電子機器を壊す指標である電界強度は前者で 2kV/m、後者で 15kV/m といわれています。
従来 のミサイルや火砲による防御に対して、瞬間対処 が可能であり、弾数の制約がなく、低コストである 等の利点を有する。
ATLAでも高効率かつ小型化が可能な新型電子管増幅器を研究開発しており高出力マイクロ波瞬間対処が可能なアクティブ・フェーズドアレイ (APA)から高出力マイクロ波を送信し、高エネルギー防空対兵器の開発研究が行われている。
限定的ながらF-22やEA-18GにはHPMを照射する能力があるとされています。
F-2後継機やEA-18G新電子戦機、将来の護衛艦にはその能力を付加し、将来的にはICBMも破壊できるレベルになると期待されている。
EA-18Gグラウラー電子戦機を自衛隊が導入検討? 2018/1/8(月) 午後 0:43
参照http://www.mod.go.jp/atla/research/ats2015/image/pdf/P19.pdf
電磁パルス兵器として陸上装備研究所で開発中なのが「電磁パルス(EMP)弾」であり、2018年度防衛予算でも14億円形状されている。
説明員の方は美人なご婦人が担当されており、どこぞの大学の教授やら開発技術者らしき人がひっきりなしに、話しかけており、2日目にようやくお話を聞くことができた。
ATLAで開発しているEMP弾は電池型だそうです。以前 旭日化成が中心となって開発研究をしたEMP弾は爆弾型で、爆弾の爆発力を電力に替え、一回しか電磁パルスを発生することはできませんでしたが、(私が旭化成の研究のことを知っていたので、少々驚かれていた)電池型だと何回も電磁パルスを発生することができる。
下の写真が、その実験装置
パルスパワー電源は、軍事や慣性核融合を目的に、世界中の発電電力規模の大型な装置技術として発達してきたが、日本では医療用や半導体、水処理、殺菌要など民生用でかなり高い技術水準に達しており、電源としてのノウハウは蓄積がある。
次に、EA-18Gグラウラーが電磁波を使って敵の防空網や指揮通信システムを無力化する電子戦用のシステムを持っているか?という疑問をぶつけてきた。
高出力のマイクロ波にしても、照射側の航空機が電磁パルスの影響を受けると思いますが、EA-18Gグラウラーがある程度のレーダー通信網を無力化できるという報道についてどう思いますか?
説明員の方曰く、EA-18Gグラウラーが核爆発で発生するような大量のEMPを発生させたなら、いかに耐EMPシールドを施しても、発生させた途端に墜落してしまうので、日経新聞が報じたように、通信・指揮系統を破壊するのは、電源ライン等からの侵入するBack Door Couplingではなく、FrontDoor Couplingで電子機器を壊す野ではないかと思われるとのこと。
一方EMP弾は電源ラインや銅線にEMPから過電流でショートさせ焼き切る Back Door Couplingである。
ロケット弾は、無誘導かと聞いたところ、微妙な反応であった。まったくのロケット弾ではなく、途中の中間誘導はありそうだ。
ただ、EMPを発生させれば自らの電子機器に影響が出る、もちろんEMP発生装置にも出るので、シールドで防いでいるとのこと。
開発状況は、上の図の上の巨大なEMP発生装置を小型化している最中だと言う。
爆発で電磁パルス攻撃 試験設備が初の本格稼働、威力確認
【産経ニュース】クローズアップ科学 2018.12.16
初めて本格稼働した、核爆発による電磁パルス攻撃の試験設備。アンテナの下にパルスが降り注ぐ=相模原市緑区
■上空で核爆発
上空で核爆発を起こし、広範囲で電子機器に被害を与える「高高度電磁パルス(HEMP)攻撃」に備えた試験設備が12月、国内で初めて本格稼働した。昨年秋に北朝鮮が攻撃を示唆したことで対策の必要性が認知され、民間企業がスイスから導入。北朝鮮の非核化が進まない中、最悪の事態に備えて防衛省や重工業、電力会社など幅広い関係者が高い関心を寄せている。
■強力な電波の一撃
HEMP攻撃は高度30~400キロの上空で核爆発を起こすことで行う。このとき熱線や衝撃波は地上に届かないが、同時に生じたガンマ線は地球の大気を構成する窒素や酸素などの分子に衝突。分子に含まれる電子がはじき飛ばされ、大きな磁場が発生することで、強力な電波の一撃である電磁パルスが地上に襲いかかる。
これにより、5万ボルトもの電圧がパソコンをはじめとした電子機器にかかり、ディスプレーや電源、IC(集積回路)などの損壊を招く恐れがある。人工知能(AI)をはじめ、電子機器に依存する現代社会にとっては無視できない問題だ。電力会社などの公共インフラが被害を受ければ都市機能もまひしかねない。
■実験でパソコンの一部が焼損
このたび稼働した試験設備は、スイスにある電磁パルス測定機器大手の「モンテナ」社製で、電磁波測定業の「EMCJ」(相模原市緑区)が数千万円で導入した。全長約15メートル、高さは最大3・6メートルだ。
端にある20万ボルトの高圧電源から20本のアンテナが伸びており、瞬間的に電流を流すことで、アンテナの下の空間にHEMP攻撃を受けた場合と似た環境を再現できる。
関係者向けのデモンストレーションでは、デスクトップ型パソコンに電磁パルスを照射したところ、電源が切れて画面が真っ暗になった。その後で再起動したが、USBの差し込み口は焼損して使えなくなった。
試験できる物品のサイズは縦2メートル、横約1・5~2メートル、高さ1メートル弱。これはアンテナの下の空間に収まる大きさとなる。
設備導入の経緯について、EMCJの村上薫代表取締役は「昨年秋の北朝鮮の件を受け、電子機器やデータ管理の会社などから問い合わせがあり、需要の高まりを感じた」と話す。
一方、見学に訪れた防衛省の担当者からは「航空機などを丸ごと試験することはできないのか」といった声も上がったという。ただ、それには設備を大型化する必要がある。
既に米国には大型爆撃機や艦船を、韓国にも自動車を丸ごと試験できる設備が存在するが、日本では電波法の制約で実現が難しい。電波を外部に漏らしてはならず、「電波暗室」という特殊な建物の中でしか使えないからだ。そのため、戦闘機や護衛艦などの試験は部品ごとに行う必要がある。
■日本での対策はこれから
同じような試験設備は米国や韓国だけでなく、欧州主要国や中国などにも存在する。しかし、日本では電磁パルス攻撃から身を守る意識が低く、10年ほど前に防衛省が一時的な試験設備を設けて実験を行った程度だ。その後はまともな試験設備がなく、特に一般社会での対策はほとんど取られてこなかった。
電磁パルスに詳しい専門家によると、防衛装備品ですらHEMP対策を備えているのはイージス艦に搭載するシステムや地対空誘導弾パトリオット(PAC3)など、米国から導入した一部のものにとどまるという。
例えば航空自衛隊の主力戦闘機「F-15」の場合、米国で使われている機体には対策が施されているにも関わらず、日本向けに製造された機体からは外されているとの話もある。
今回の本格稼働について防衛省関係者は「これでHEMP攻撃を防ぐ性能が証明できる。試験環境が生まれた意義は大きい」と話す。(科学部 小野晋史)
レールガンの展示について、昨年同様の展示であったので、現状あまりすすんでいないのかと思った。昨年どうしてもレール部分の劣化が激しく、実用化がかなり厳しいようなことを話をされていた。
ところが、大きな声では言えないが、実用化に向けとても大きなブレイクスルーがあったという。新聞等には発表は私の知る限り発表されていない・・・
レールの低エロ―ジョン化(低磨耗化)に大きな結果が得られたとの説明であった。
説明員の方に、では日本が最先端ですか?と聞いたところ、研究の初期段階にJAXAで基礎研究が行われていた頃は日本が先行していたが、研究費が違うので、ここ数年は後塵を拝していたとのこと。BAEシステムズ社とジェネラル・アトミックス社が32MJ砲は、口径90mmで約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)で打ち出している。
レール部分は、従来から銅を基本材料として使用してきたが、銅主体のレールでは、二十数発発射すると、レールは大きくな摩耗し、交換の必要性が出ていた。
ところがタングステン70%、銅30%のレールを試したところ大きな摩耗の低減に成功したという。
現在公表されているのは下の広報ビデオのみ
上記ビデオのアナウンスによれば、3メガアンペアを超える大電流が流れれば原理的には10kg 以上の質量の飛翔物を秒速2000m 以上(時速7200km/M5.88)の初速で発射することが可能となります。これにより従来の火砲よりも弾丸の飛距離や命中精度を飛躍的に向上させることができる。
今後2019年度中にフィールドテスト、飛翔体を打ち出すテストを開始する予定
飛翔体については、電機子の材料がアルミニウムで20グラムの重さ、長さ44ミリ、幅16ミリのもの。研究ではこれまで、磁気センサを使った飛翔体速度の測定で、砲身内部の飛翔体の速度が毎秒2.7キロメートルまで加速させることが可能となったという。
陸上装備研究所が保有する研究用レールガンは、電磁加速装置としては、パルス電源のコンデンサバンクエネルギーは1MJで、静電容量が4.8mF、砲身の長さが2メートルで、砲身のレール間の距離が16ミリとされているが、シンポジウムでは35mm
の飛翔体が展示されている。
35mmの飛翔体を打ち出す装置が実際には存在していると考えるのが普通の思考だ。
説明員の方は、飛翔体を実用化に向けて新たに動き出すようなことをお話していました。