第十五章 The Second  departure 7 | GOLDSUN SILVERMOON

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西洋占星術 紫微斗数占星術を使って運勢を観てゆきます。


今日の午後から自由時間。

大陸に渡って久しぶりのゲランの街。約8か月ぶりだ。
私は旅の買い出しをしようと部屋で革のドレスに着替える。
長い旅になりそうだから薬草やら、いろいろ買い足さないといけないのだ。

それにいつもならメイから「買い物(あくまで彼女の衣装とか。)つきあって~」
と声を掛けられるのだが・・・、メイは何故かさっさと行ってしまった。
何か買いたいものでもあったのかなぁ?とさほど気にしなかったけど…。


根が生真面目な方の私は、暇を持て余すのが苦手で。
先に用事を済ませようと財布を持って宿の外に出た。
すると外の柱に寄りかかって誰かが佇んでいる。


そう、誰かというと・・・

「買い出しだろ?付き合う。」
「・・・休んでいていいのに。」

リーディが待っていてくれたのだ。

しかし私は可愛くない返事をしてしまう。
半分本心、半分照れ隠しだ。
でも、嬉しい。

「ゲランの街は俺の方が詳しい。」
「はいはい分かったわ」


懐かしいゲランの町
何気にリーディは詳しかったりする。
まず彼のブロードソードが(魔法剣を使ったので)ボロボロだったので
買い換える。良くここの店主のおじいさんに剣を造ってもらっていたらしい。

「若いの、久しいの。髪切ったんだな・・・お前さんがここに来たばかりのころを思い出すよ」
「そうだな。」
「そこのお嬢さんは?なかなかの別嬪さんだが、その姿に似合わずに
背中に背負っている槍がかなりの名品じゃな?」

やはりドレスを着ていると槍使いには思われないらしく、私はちょっと戸惑った。

「あー・・・察してくれよ。でもすごいんだぜ?槍の腕。ついでにこの槍も俺の仲間が作った。」
「ほぉ・・・見事じゃのぉ。」

リーディはしれっと言うが、心無しか顔が赤い。
私は黙ってお辞儀をする。

「その様子じゃ探し人は見つかった様じゃな」
「・・まぁな。」



剣を買い替えて、ある程度雪の準備のものも買い揃え
あっという間に陽が落ちてきた。

何故か、宿に帰ろうとした時に彼は向こうの通りに出るのに遠回りしようとしたのだ。
さすがに私だって目の前の道を通った方が近いと気が付いて、彼に付いて行かずに
その通りに入った時・・・

「あ・・・・」

そうそこは、初めて彼と出会った場所・・・。
娼館が連なる裏通りだった。

当時昼間だったからこの通りは人気は少なくて、私とキャロルは
何も知らなかったせいで・・・女衒に襲われた時に。
リーディに助けてもらったんだ。


今はちょうど夕刻より少し早い時間。
冬に近づいているせいか少し早い日の入り前のせいか
ちらちらと客引きの女性たちが立っていて。
お目当ての客と接吻を交わしている女性もいて
私は居た堪れなくなった。

そう、私は・・・スフィーニの城での束の間の休息時に
今一緒にいる彼にされたことを思いだしてしまったのだ。

恥ずかしくて私は追いかけてきたリーディの顔を見ずに「戻ろう」といった。
そして踵を返して早足で歩く。

「ちょ!待てって」

リーディが追いかけてくると、恥ずかしさのあまり足取りが速くなっていて
手首を捕まえられた時は黙ってしまった。

「はぐれると危ない…。お前此処で最初危ない目に
遭って学習してないのかよ?」
「…。」

前だったらそういう風景に見舞わっても、
最初は厳しく注意したり。

そのうち私と打ち解けてきたら注意した後
「お前さんには刺激強いか?」とニヤニヤしていたのに。

何故か今回は一貫して真剣な態度だから…。
私はどうしていいかわからなくなってしまった。




*                    *                   *
  




ステラの手を引っ張って宿に戻る。
一旦彼女の部屋に入り買った荷物の整理を始めた。


変な話・・俺はあの通りの女たちの様子に
あてられてしまったようだ。


そして今、目の前にお互い想い合っている女。
薬草や干し肉や乾燥ナッツをより分けながら
彼女を見てしまう。

アイツにはちょっと刺激が強かったのか
まだ顔が赤い…。


ああいう反応も煽られる。

着ている服もしっかりした装備ではなく
冬用の革のドレスだが上半身はタイトなデザインで
(雪などが入らないように。)身体の線が良くわかる。
髪も長い三つ編みに編んで降ろしていて。
色町来ている男共の目を引いていた。


スフィー二で一度キスをしてから、
俺の中のタガの一つが外れた気がしていた。


「終わったわ。そっちは?」
手際よく保存の効く野菜もまとめて
ステラはこちらを見る。

「うん。終了」

そう考えつつもしっかり手を動かして
俺たちは買い出ししたものの整理し終えた。

「・・・。」

ステラは黙っている。
何か、気まずそうだ。・・・解り易過ぎる。
逸る気持ちはあるが、ここはひとつ俺が
そ知らぬふりをして助け舟を出した。

「どっか出掛けないのか?夕食まで一刻ほどあるけど。」
「…日が短いし。部屋で休んでようかと」
「珍しいな。」

大抵ステラはメイと一緒に買い物に付き合うか、
コウと一緒に買い出し(先程俺と一緒に行った旅の物の買い出し)
キャロル一緒に教会だ。

実のところ俺たちはあまり一緒に行動をしたことが無い。
俺もひとりで本を読んでいるか、武器の手入れか
酒飲みに行くか(たまにメイコウも付き合う。ステラもいる時もあり)
滅多にないけど寝てるか、だ。

その時からお互い意識し過ぎていたのかもしれない。
メイ・コウが仲間になる前は3人だったから、そうでもなかったけど
8か月前にここからエストリアに渡った船では、キャロルがルシュフォード夫人に付いていたので
自然と二人でいることは多かった。大体バカみたいな悪態付いた会話だ。
色気もクソもなく、でもそれをお互い楽しんでいた節はあった。

正直密室で二人きりは、恥ずかしながら
俺も余裕があまり無い。
勿論、億尾にも見せないが・・・。


ちょっと試してみるかな。


「俺も、少し休むか」

そう呟いた時彼女は少し怪訝そうな顔をした。
どういう意味で驚いたのだろうか?