REALIZE 8 | GOLDSUN SILVERMOON

GOLDSUN SILVERMOON

西洋占星術 紫微斗数占星術を使って運勢を観てゆきます。

銀の髪の少女は、9歳のころから母に槍を習っていた。

もともとの運動神経も相まって、彼女はメキメキと力をつけてゆく。
そしてムヘーレス大陸の東の国軍事国家ベルヴァンドが優秀な騎士の卵を
探すために催した、ムヘーレス一の戦いの王者を選ぶ大会に出場した。


ただそれは師である母には内緒だった。



「コンラッド。あなたのお父さんにもバレない様にして。」

悪戯っぽく笑う彼女の笑顔にほだされて、約束通り
選手エントリーの際に偽名を使って彼女をエントリーさせた。

ウェーブの薄茶の髪、ノーブルな雰囲気から
とても彼がそんなことするように見えないだろう。

彼の父親はスザナの領主であった。有力者である父は
今回のベルヴァンド主催のこの大会にも開催街の代表として
大いに関係のある人物だ。

師である彼女の母は娘をとても大事にしていた。
厳しく躾けられたが、彼女が目立つことを良しとしなかった。
常に何かに追われているようだったと少女は思っていた。

けれども彼女は、自分の力を一度試したかったのだ。
学校の男子には大抵勝てる。街で暴漢を取り押さえたこともあった。

騎士になるつもりなんてなかった。女性は対象ではなかったから。
ただ、ずば抜けて強い女子ならカルサイトに入団できる人もいると聞いたが・・・。
彼女はとにかく、自分の力量を知りたかったのだ。


*                   *                     *



銃で撃たれて瀕死の重傷を負いながらも
彼女は、「母には言わないで」と彼に言った。

しかしそんなこと聞けない、彼女の母セレスを探しに行こうとした矢先に
医者に言われたのだ。 魔法を使える人物を探してきてくれと。

カンドーラを着ている彼は、どんな人物か見当はつかなかったがある意味目立った。
スザナの街ではあまり見ないからだ。しかし彼は見逃さなかった。

ゴトラの裾の唐草紋様を・・・。


必死の思いで頼みこんだら、躊躇しつつも彼は承諾してくれた。
自信が無さ気だった。しかし、彼女のうめき声を聞いた瞬間
急に虚ろだった碧い瞳が力づいたようになり、呪文を詠唱してくれた。

最初は芳しくない感じだった。彼が躊躇したのはそのせいだったのか。
でも彼は自分の中の何かと闘っていた・・・そして何度かの詠唱で・・・

彼女の傷は・・・ようやく塞がった!


*                     *                    *


コンラッドは、スフィーニの少年に何度も頭を下げた。
「・・・ありがとうございます・・ありがとうございます!」

小柄な少年は静かに首を振り、微笑んだ。

「いや、きっかけをくれたのはあんただ。彼女の命もあんたが救ったようなもんだ」
「・・・とんでもない・・・でもこの子は」
「大切な、子なんだろう?」
「・・・。」

コンラッドは少し赤くなった。
それを見届けて、クスリと彼は笑った。

「おかげで俺も、救われたんだ。」
「?」
「いや、何でもない・・・。」

そして静かに眠っている彼女を一瞥して、
「急ぐので」
と一礼して去って行った。


数十分後―


彼女が目覚めた。

「・・・私・・・」

―そうだ・・・撃たれて。

もう死んでしまうと・・・思った。
でも、誰かが救ってくれたんだ・・・。

胸に感じた温かい光、憶えている・・・。

「ステラ!気が付いたの?」
周りには友人たちの声が。
そして・・・

「ステラ・・・よかった・・・。」

ステラがその呟きの方に顔を向ける。
そこには兄のように慕っている彼が、脱力して
しゃがみこんでいた・・・。


「・・・ごめん・・・無茶言って心配かけて・・・。」

ステラは静かにベッドから起き上がろうとした。

「まだ、安静にしてないとダメだよ!」

コンラッドは顔を上げてその行動を止めようとするが、
彼女はにっこり笑った。

「もう、平気・・・。」

そしてベッドから立ち上がると、コンラッドに問うた。

「私を治療してくれた人は?」
「ああ・・・数十分前にもうここから去って行った。」
「どんな人だった?」
「・・・うん・・・カンドーラ着ていたよ。」

ステラは直感した。

―きっと私が壇上で、一瞬瞳が合った人だ・・・。
ゴトラで顔を殆ど覆っていたけど・・・碧い瞳・・だった。

―ただその瞳を見た時に、何故か私はショックを受けた。
初めて見た人なのに・・・




―ドウシテ、サミシイ「メ」ヲ、シテイルノ??