『望星』1月号 | 裸足のピアニスト・下山静香のブログ

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オモテの顔はクラシックピアノ弾き。

音楽・芸術を軸に、気になること好きなことを徒然なるままに。

考える人の実感マガジン『望星』、1月号発売中ですベル

今号の特集は、「陰を慕いて 陰翳礼讃を実践する」。

谷崎潤一郎の随筆『陰翳礼讃』は、外国人が日本の精神を語るときによく引き合いに出してくる、いわば“基本の書”ですが、現代の生活においては、日本古来の「陰翳」はもはや見る影もないのであります。

いきなり話がそれるけれど、私、昨今のイルミネーションとやらにはあんまり魅力を感じないのだ。考えてみると、LEDが使われるようになってから特に、そう感じるようになったようで。(けぶるリスボンの町で見た、裸の豆電球だけのイルミネーションは、今も心に残ってるからなぁ・・・) もちろん、省エネは大事、エコは素晴らしい。かといって、蝋燭、行燈、提灯の世界になんて戻れないわけだから、これでいいのだよね。でもね・・・なんというか、そう、エロスが感じられないんだな。エロスってのは生だけど、そこが欠如するのはやっぱり悲しくなってしまう。

とにかく、ここを掘り下げてくれるのは、さすが『望星』ひらめき電球


まず、山折哲雄氏の話をまとめた「湿気と陰翳が育んだ日本の精神」。つい先日ある会で、友人が「日本人の多くが、3.11のことを忘れ始めている」と発言し、私はそれを受けて「忘れるのがうまいのは、日本人の特性だからね」と皮肉交じりに続けてしまったのですがあせる・・・山折さんも、そのことを指摘しています。そして、90年前の関東大震災後に、日本の知識人がどのような問題意識を持ち、日本という国にいかなる警告を発したのかをしっかり検証して、問題点を描きだすことが必要ではないかと思うようになったとおっしゃっています。そこで山折さんの頭に浮かぶのは、寺田寅彦、和辻哲郎、谷崎潤一郎だそうで、非常に興味深く読みました。

さらに、照明デザイナー、体内時計・生体リズムに関する研究者、美術史家、写真家、建築史家・・・といった方々による、「陰翳」について様々な示唆を与えてくれる話が続きます。


ちなみに、今回「陰翳」を特集することになったのは、私の演奏会内容がひとつのヒントだったとお聞きし、嬉しかったです。曲間のトークの中で、「黒は無なのでない。無限に奥行きがあって、多弁な色なんだ」みたいなことをお話ししたからかもしれません。トークの原稿って書かないから、本番で何を話したのか残っていなくて、定かではないですが。


最後に。今月号では、『ジャック白井と国際旅団』(川成洋著・中公文庫)の書評をさせていただいています本

http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/index.html