映画《ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件 ・・・そして》 | 裸足のピアニスト・下山静香のブログ

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なんということか、東京上映はもう終わってしまった?ようなのですが・・・

映画《ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件 ・・・そして》、私は先月、試写で観させていただきました。

監督は、現在テレビ制作会社でADとして働いていらっしゃる伊藤めぐみさん、28歳。全日本テレビ番組制作社連盟(ATP)の、若手映画プロジェクトに企画を応募し、見事採用されて映画制作が実現したものです。あのイラク戦争のとき、伊藤さんは高校生。人質となった日本人3人に対して「自己責任」バッシングがおこったことに関しても、違和感を抱き続けていたそうで、あれから十年が経った今、事件の主役となってしまった人たちの「今」を追いながら、イラクの現実、そして日本の現実を映し出すドキュメンタリーを制作されたのです。


アメリカがイラク戦争を始めた当時、イラク支援でファルージャにいた日本人3人が、地元の武装グループによって拘束され、日本政府へ自衛隊撤退を要求するための人質とされました。このとき日本では、あるきっかけでバッシングが吹き荒れたのですが、この映画ではそのからくりも明かされます。人間心理の恐ろしさも感じますが、それは他人事なのではなく、いつ自分がその波にのまれるかわからないという危機感をもつべきなのかもしれません。

人質となった3人のうち、カメラマンとして世界を飛び回っている1人を除いた2人の方の現在の姿を取材していますが、今もたった一人でイラクに通いながら支援活動を続ける高遠さん(女性)への密着では、テレビや新聞といったメディアでは報道されない、ショッキングな事実が映し出されます。今も紛争が絶えず、イラク戦争当時使われた化学兵器の影響による先天異常児が生まれ続けている、イラクの人々の悲痛な叫び。

「これが民主主義なのか?!」 

・・・こちらの胸に痛く刺さります。なぜかといえば、ここで起きている(終わっていない)悲劇は、私たち日本人と決して無関係ではないのです。

「日本の人たちは、世界に対して無知だ。世界で起きていることを知ろうとしない。でもそれは、報道しないメディアの責任なんだ」というイラク人医師の言葉には、頷くほかありませんでした。夕方のニュースで取り上げられるのは、ローカルな話かグルメネタばかり。先日も、「今入ってきた速報です!」何かと思えば、どこぞで車が店に突っ込んで2人けがした、とか。もう怒りを通り越して、呆れてしまいます。これでは、いつまでたっても日本は「世界の田舎者」のでしょう。ときに、無知は犯罪に等しいのです。


ともあれ、ぜひ多くの方に観てほしかったこの映画。東京での上映スケジュールを勘違いしており、記事アップが遅れてしまって申し訳ありません。地方でも公開されますので、もし機会がありましたら、ぜひご覧ください。

この作品を制作されたスタッフの方々、テレビ用番組では作れない内容の企画を通したATP、そしてバッシングが再燃する可能性も否定できないなかで出演された方々に、敬意を表したいと思います。

そして、イラクの人々に平和が訪れることを願ってやみません。

http://fallujah-movie.com/