東京砂漠模様(汝の敵を愛せよ) | 裸足のピアニスト・下山静香のブログ

裸足のピアニスト・下山静香のブログ

オモテの顔はクラシックピアノ弾き。

音楽・芸術を軸に、気になること好きなことを徒然なるままに。

この時期、夜の急行電車内はさらに殺気立つ。

数回咳をした自分の横の男性を、鬼の形相でにらみつける人。乗り込んできた男性に身体を押されたのが気に入らず、これまた憎しみの視線ビーム、やられた方も負けずににらみ返す。こういうときは人の目をガチンコで見られるんだなぁ・・・。目の前で繰り返されるこんな情景を私は冷静に観察しながら「この人、今日会社で何があったんだろう」「家の中ではどんな態度をとってるんだろうか」と想像を巡らせる。


とにかく、今日23時をまわってから乗り込んだ車両には初っ端から、殺伐とした空気が流れていたのだった。到着は5分と変わらないのだからわざわざ急行なんかに乗ることもなかった、と思っても、出口はどんどん塞がれていきもう出られない。大体、他人様とこんなに身体を密着させたり息がかかるほど顔を近づけなければいけないなんて、異常ではある。が東京の電車というものは、何十年もこの状態を抱えて走ってきているのだ。20年前と違うのは、皆のストレスが充満した車内に、携帯電磁波の網がかかっていることだろう。この電磁波攻撃に脳もやられてるんじゃなかろうか。そしてこの混みようでは、誰も「とりあえず携帯」という個の世界に逃げ込むこともできずに苛つくしかないのでは。


急行最初の停車駅。かなりの人が降りようとドアのほうに流れる(こんなに近いのだから各駅で帰ってもよさそうなのに、何故このような苦行を選ぶのであろうか)。と、その流れに逆らい足を踏ん張っていた“降りない人”が、1人が通った瞬間に引きずられてよろめいたのだった。振り向いたこの引きずられた男、殺気だって「いっちゃってる」目をしている。嫌な予感。


案の定、彼は降りようとしていた相手の襟足をつかんで振り向かせ、無言のうちに小突きあいが始まったのだった。殴りあいになりかけながら、ホームに降りた2人。そしてドアは閉まった・・・。

あのあとどうなったのだろうか。こんな些細なことで、傷害や殺人事件が起こったりしているのだ。醜いものをみてしまった、と小さく溜息。

満員電車には、ひとつ落語でも流してみたらどうだろう、などと思った夜だった。