心の声を聞く静かな時間 | しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

しずえばあちゃんの回想録 “We Can Do It !”

教師生活35年、子供3人。
パワフルに生き抜くしずえばあちゃんの
子育て論、教育論、人生論を綴っていきます。

人生の後半で取り組んだ漢字学習についても
情報を発信していきます。かんじクラウド株式会社 http://kanji.cloud

今年の大河ドラマ「光る君へ」の人気はどんなものだろう?

定番の戦国武将・天下取り物語には飽き飽きしている。

幕末の動乱のあらすじもほとんど知っている。

目新しいところでは、維新の経済界・渋沢栄一の「晴天を衝け」だっただろうか。

 

今年の「光る君へ」はずいぶん趣が違った。

世の男性たちには不評な女性中心の世界で、

うちの主人もむずむずしながら我慢して観ているようだ。

 

ましてや、千年も前の大まかな記録しか残っていない平安貴族の日常だ。

わずかに残る藤原一族の官職と家系図、そして、古今和歌集などから、

ほとんどが想像で肉付けされているに違いないと思われる。

 

百人一首さえよく知らない私にとって、分かりにくい世界である。

おまけに藤原の姓ばかりで、下の名前の漢字をどう読めばいいのか分からずに、

人間関係で混乱している・・・。

ほとんどの人がそんな思いを持ちながら、観ているのではないだろうか?

 

ところが、回を重ねるうちに、あらすじを追うよりも、

ある雰囲気を伝えられていることに気付いた。

 

月を眺めて思いを馳せる姿。

夜の暗闇に空(くう)を見つめてぼーっと物思いにふけっている様子。

小川のせせらぎ、風が揺らす葉音、山や木々の様子、自然の些細な音が耳に入ってくるようだ。

人口が少なかったであろう人々の姿を、観察・洞察する様子。

 

そこには自らの口で雄弁に語る言葉はほとんどない。

胸の内をナレーターの誘導で語ってくれて初めて分かる心の動き。

 

現代に生きる私たちの有り様と何と違うことか!

本来の人間ってこういうものだったのかもしれないと、改めて感じ入っている。

 

現代の私たちは、なんと多くの音に囲まれて過ごしていることか!

その音は雑音だけでなく、テレビなどから意味ある言葉をシャワーのように浴びて、

しかも、それに対抗しようとして、あるいは越えようとして、

頭に浮かぶ思いや考えを必死に声に出して表現している。

それが社会生活を生き抜く必要不可欠な手段であるかのように。

また、時折ぼーっとしていい時間なのに、

ちょっとのすき間を惜しむかのように、スマホの情報を見たり、ゲームをしたり・・・。

私も完全にそんな生活を過ごしている。

 

最近、日曜の夜に「光る君へ」を観る度に、自分の精神生活の貧しさを感じてしまう。

黙って、ぼーっとして、物思いにふけって、自分の心の内を探り、心の言葉を聞いてみようか。

 

若い頃、スマホやネットはなかった。

テレビは家に一台しかなくて、観る時間は少なかった。

音や情報は極端に少なかった。

自然たっぷりの田舎生活で大自然の様子を無言で感じ、感動して、理科を専攻した。

さらに高校や大学時代は盛んに胸の内をノートに書きなぐった。

論理的な思考も、矢印を使ってキーワードを流すように書いた。

 

そんなことが今の時代に再現できるだろうか?

かなり難しいように思えるが、

物思いにふけったり、ぼーっとする時間を増やしたりしてみようかな。

そんな場面の心の中は「無」ではなく、

あふれるような「言葉」がまだ流れていることをうすうす感じているから。

 

そんなことを最近気付かせてくれた「光る君へ」の世界、心して精いっぱい観てみようと思う。