一粒の麦もし死なずば!たった一人で闘う男への私信と挽歌を込めて | 医者ギライ・クスリギライのための1日10分!医食同源・自然食実践ブログ

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私のかつての職場は、

「大地を守る会」

有機野菜の宅配、その草分け的な存在の会社です。
 

私は大地を守る会を2003年7月に退職したのですが、その後2017年に、オイシックス、らでいっしゅぼーや、そして大地を守る会。

 

有機野菜・無添加食品の宅配・大手3社が合併する形で、「オイシックス・ラ・大地」に社名が変更されました。

最近はプロ野球の球団を持ったとか何とかで、話題になってはいるのですが。

そんな私にとっての古巣なのですが、今年2月22日付で会長の藤田和芳氏が引責辞任するに至った。

このようなニュースを目にしました。
※参考:

 

理由はといえば藤田氏が、福島原発から海に流されている処理水を

「放射能汚染水」

このように呼んで、反原発の立場からX(旧ツイッター)上に投稿を繰り返していた。

 

これが暴言、及び不適切発言と判断され、"根拠薄弱!非科学的!"。

こうした非難の声が相次ぎ、SNS上で大炎上するまでに至ったそうなのです。

 

非難する側は、放射能汚染水を「処理水」。このように呼ぶのが正しく、科学的な言葉の使い方。どうやら、このような主張をしている模様です。

事態を重く見た会社は懲罰委員会を開催し、会長である藤田氏の停職処分を決定。これを機に自ら辞任を申し出た。

このような経緯だったそうなのです。

私は大地を守る会在籍中に、藤田氏の秘書業務をも担当する部署に配属されていました。そのため、藤田氏とは接触の多い立場にあったのです。

それもあってか、今回の報道に驚くのと同時に、

"言葉狩り!"

とでもいうべき現在の日本の言論状況。そのあまりの惨状に、思わず絶句してしまったのが正直な感想です。

大地を守る会とオイシックスとが経営統合するに当たり、オイシックス側が社長に就任。当時大地社長であった藤田氏は会長職に就任する運びとなりました。

その当時に新会社の役員名簿を眺めてみたのですが、設立当初は大地側の重役たちが何人も取締役に名を連ねていたのです。

でもその役員たちも、比較的短い間に名簿から外されてしまっていた。そして会長の藤田氏を除いて、私が知っている役員は一人もいなくなっていました。

これは対等合併というよりはむしろ、オイシックス側の吸収合併。それが実際のところなのだろう。

 

そしてただ一人、会長として残る藤田氏は、大地側にとっては最後の砦とでもいうべき存在なのではなかろうか。


そんなことを想像していた次第です。

今回の藤田氏の辞任で、大地を守る会から連綿と続いてきたはずの良心。それは完全に地に落ち、崩れ去ってしまった。


藤田氏は最後の良心、私はそんな気持ちを拭えないままでいるのです。

私が大地を守る会を退職する際に、藤田氏は、

「君には君の人生がある。それは分かってはいるものの、君が辞めることには到底納得がいかない」

こんな風に言葉をかけてくれました。

 

また体調不良を抱えた状態で、約1ヶ月のブラジルへの海外出張。そこに私が派遣されることが決まった際にも、藤田さん。

 

あなたはきっと覚えていないと思いますが、出発直前まで私の体を心配し続けてくれましたよね。

また多国籍企業にタネが支配されている現状を憂う私は、大地を守る会こそが在来種・固定種の農産物のタネを守る国民運動。

 

その運動の旗振り役になるべきだ!大地を守る会がF1種の野菜ばかりを扱っているようでは

"話にならない!"

そう強く思うに至り、単身、社長室の藤田氏のもとに赴き直談判。これを敢行するに至りました。

その時がほぼ初対面であったにも関わらず、藤田氏は私からの提案に強く共感してくれて、全社を挙げたタネを守るプロジェクトをスタートする。

 

こうした運びになった日のことを思い出すのです。

まあ、このプロジェクトこそが私が辞職を決意するきっかけになってしまったのですが・・・。

ある時藤田氏は私に、

「自分は一人で闘う人間が好きだ。徒党を組むような人間は大嫌いだ」

こんな風に話してくれたのです。

 

旧大地の面々が新会社を去って行く中で、藤田氏はこの言葉通りに、1人最後まで闘い続けていたのではなかろうか?

 

実際にオイシックス・ラ・大地の広報担当が、

 

「過去にも(藤田氏には)複数回にわたり指摘をしていた」
「このような事態に発展するまで厳しい対応を取りきれなかった」

 

こんな風に書かれていることからも推察できると私自身は思っているのです。

※参考:オイシックス会長が辞任。処理水巡り「放射能汚染水」と投稿。責任の重さを自ら判断


それは業界最大手の団体が、食の安全性への追及もそこそこに、経済合理性一辺倒。

 

そこに流れ落ちていく状況に、藤田氏はX上で孤軍奮闘。批判を恐れず流れに抗し、たった1人で闘い続けていたのではなかろうか。


でもそれも今回のことで、刃も折れ、矢尽きてしまった。私は往時を思い返しつつ、そんなことを思っているのです。

 

このことが自然食業界全体の堕落に繋がってはならない。

チカラは微々たるものではあるけれど、1975年に藤田氏とその仲間たちが高い志を掲げて始めた有機農業運動。

その志を有機ではなく、無肥料・無農薬の自然栽培の作物で、この私が継承していかなくてはならない。

 

藤田氏は今年で77歳。私は53歳。職業人としての藤田氏は今回のことで終わりを迎えることになるのでしょう。

 

頼まれたわけでも何でもないけど、藤田前会長に引退の挽歌を送るのと同時に、1人で勝手にあなたの志をこの私が繋いで見せる。

 

春からの農作業に向けて、ますます闘志が湧いてくる。今は自分を鼓舞する意味で、きっと本人には読まれることがないであろう私からの私信。

 

それを挽歌と共に綴っているのです。

 

 

※この歌は加藤登紀子さんの夫であり、大地を守る会初代会長で全学連元委員長の故・藤本敏夫さん。藤本さんと藤田さんとで大地を立ち上げた頃の情景を歌ったものだと聞いたことがあります。


■頑固なまでに!
福島第一原発は、2011年3月11日の大地震を受け、

「メルトダウン」

を起こすに至りました。実際はメルトダウンをとっくに超えて、メルトスルーにまで至っていた。

 

メルトスルーは後で判明したのが経緯になります。

地震で冷却水の電源を失い、発電所内の核燃料棒は制御不能に・・・。

そんな状態に陥ってしまいました。核燃料棒の暴走を防ぐには、海水を燃料棒に直接浴びせかける以外に方法がない。

それをやらない限り、放射性核物質は発電所の外部へと次々に漏れ出て、拡散していくばかりとなる。

こうして大量の海水が核燃料棒にかけられ続けた。これが福島原発事故発生直後からの経緯になるというわけです。

かくしてこれまでに冷却用として使われた冷却水こと・核汚染水の総量は、2023年7月現在で134万m3

国と東京電力は、その他の手段を検討することもほとんどせずに、この汚染水を海に流す。

 

この決定を早い段階から下していました。

「海洋放出ありき!」

この姿勢を長年にわたって変わることなく、貫き続けているのです。

 

こうした頑な姿勢も、国内外から非難を浴び続ける。そのポイントのひとつになるといえるのでしょう。

でもいくら海に流すといっても、放射性核物質が充満した状態の汚染水。これをそのまま放出するワケには参りません。

そこで核種除去システムを用いて、汚染した水を浄化するといった工程を踏む。トリチウム以外の物質を国内法の基準値内にまで取り除いた状態にしてから海に放出する。

このように述べてきたのです。

初めはフランスの核除去システムを採用し、実際に除去作業をしてみたところ思うような結果を得ることができませんでした。

そこで日立や東芝といった国内メーカーが奮起して国産の核種除去システムを開発するに至りました。その名は

「ALPS」

当初はこの秀逸な国産除去装置を用いたので、トリチウム以外の放射性物質は除去できており、すべて基準を満たしている。

こんな風に説明していました。

でもその後に、ALPSを使った処理水に基準値を超えた放射性核物質が

"残留している"

この事実が明らかになりました。

これを受け、2018年10月1日の経済産業省の委員会で東京電力は報告と謝罪とを行い、法令基準を超える放射性物質が含まれていることを公表したのが経緯です。
※参考:『福島汚染水、基準値超の放射性物質 海洋放出に反対強まる公算

2018年8月上旬時点でタンクに保管されていたALPS処理水89万トンの内の84%に当たる75万トン

ここに基準を超えるトリチウム以外の放射性物質、62の核種(セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129、ルテニウム106、コバルト60、アンチモン125)などが含まれていたとのこと。

しかもこのうちの6万5000トンには法令の100倍を超える放射性物質が含まれていたと報告したのです。

また一部のタンクでは、人体に有害なストロンチウム90などのレベルが、基準値の2万倍にも当たる1リットル当たり60万ベクレルが検出されました。

ALPSを使ってみたものの汚染水を安全基準値内にまで処理することはできなかったわけですが、それでも国も東電も、海洋放出!

それ一辺倒の姿勢を崩すことはありませんでした。

海洋放出前には二次処理(同じ工程を繰り返すこと)、三次処理を行い、全ての核種を基準値内に収めてから放出することを強調しました。

こうしてトリチウム以外の29種類の放射性核種を基準値内に収めることができたとして、2023年8月24日に1回目となる処理水が海洋放出されることになったのです。

今月末から4回目の放出を始め、2023年度は合計約3万1200トンの放出を完了させる。

来年度の2024年度には計7回、計約5万4600トンを放出する計画であることが報じられているのです。

※参考:処理水を巡る状況については、以下の動画が分かりやすく明快であると思いますので、興味のある方はご参照願います。


■無限のループ
ALPSを使ってどれだけ核種を除去した!と言ってみたところで、それはあくまで基準値内のこと。

完全に放射性物質を取り除けたものでは

「全くない!」

これが偽らざる現在の状況です。

トリチウムは半減期が12年と短く、人体への影響は軽微である。

海洋放出賛成派はこのように強調しているのですが、それについても識者の間で様々な懸念の声が上がっているのです。
※参考:

 

メルトダウンし、原子炉内部で溶けて冷えて固まった核燃料。「燃料デブリ」といわれるものですが、これを原子炉から取り出し、安全かつ厳重。

そんな具合に撤去した上で格納作業を行わない限り、汚染水は永遠に発生し続けてしまいます。

 

そして発生した汚染水をそのたびごとにALPSを用いて、処理し続けなくてはならない。

それは同時に、ALPS処理した水を無限に海に流し続ける。いま起きている事態はこういうことだというわけです。

 

燃料デブリを取り除かない限り、海洋放出は永遠に終わらない。

でも識者のほとんどが、原子炉内部からのデブリの取り出しは不可能であるとの見解を示しているのだそう。

国も東電も、その具体的方法については何も言及していないのです。

いくら基準値内であると叫んでみたところで、チリも積もれば山となっていく。

 

基準値内の放射性物質は放出のたびごとに、海に拡散され続けていくのです。

さらに今回、福島原発から海に排出される処理水は、核燃料に直接触れた水であることも忘れてはなりません。

核燃料に直接触れた水を海に放出するといった事例は、世界広しと言えども、日本のこの福島原発の事例、ただひとつしかないのです。

それはまさに未曽有の事態。そういわねばならないと思うのですが、いかがでしょう。

 

■ヒステリーの限り!
たとえ海洋放出するために規制基準値以下を達成していても、セシウム137、ストロンチウム90などが完全に除去できていないのならば、それを

「核汚染水」

と呼ぶことに反論の余地は一切ないはずのもの。

 

それは藤田氏がいうところの"放射能汚染水”だって、全く以って正しい言い方といわねばならないのです。

またこれとは別に、ALPSを用いて基準値内のレベルにまで処理をした水を

「処理水」

と呼ぶことだって同様に正しい言い方です。

 

汚染水、処理水、そのどちらであっても科学としては正しい言い方。にも関わらず、汚染水と発言した途端に、

 

"暴言!不適切発言!停職!懲罰!"

 

そして実際に、会長職を辞任にまで追い込んでしまう・・・。

 

このあまりにヒステリックなまでの糾弾行為の裏には、何があるのか?

 

さらなる言論封殺に繋がる道ではなかろうか?

 

私たちそれぞれが事態の是非について考え、声を挙げていく。その必要があるのではないかと思うのです。

 

藤田氏はXの投稿で、「原発は恐ろしい魔物である」。そう述べた上で、今年2月1日に

 

「今回の能登半島地震は、甚大な被害を能登半島一帯に及ぼした。それにしても、志賀原発が稼働していなくて本当に良かった。そして思うのは、珠州に原発があったらとんでもない事態になっていたということである。命がけで珠州の原発建設反対運動に関わった人たちの先見の明に心から感謝したい」

 

と発言しています。私も全く以って同感です。原発と人類とは共存できない。

 

改めて、このことを思わずにはいられないのです。

 

 

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