「今の若い者は・・・」
思わず口にしてしまうフレーズです。
“自分もついに言うようになったか!”
とそんなことを、思ったりもします。
若者を語るとき、セットになるのが
「教育問題」
犯罪が若年化・凶悪化するなか、教育のあり方により一層の注目が集まっています。
“学校が!”、“親が!”、“政治が!”
と日々叫ばれていますが、
学びの本質に迫る議論は少ないように思われます。
教育とは、なにも子供や学生に限ったものではありません。
老若男女、すべての人に必要なことがらです。
そこで今回は、自然な学びのメカ二ズムを知ることで、
医者を遠ざけ、クスリを拒む
そんな生き方のエッセンスについて考えてみます。
■教育の本質は?
「今の若い者は・・・」
というフレーズは、
古代エジプトの文書やバビロニアの『ハムラビ法典』にも書かれているそうです。
世代間のギャップは数千年経っても
“変わらない!”
そんなことが言えそうです。
教育とは英語で「EDUCATION」。語源はラテン語、
その意味は
「引き出す」
というものだそうです。
答えはどこか遠いところにあるのではなく、
自らの「内」にある。
その本来持っている力を最大限引き出していく。
その活動のすべてを「教育」と呼ぶ。
そうしたニュアンスが込められているのですね。
でも実際の教育現場はどうかというと・・・、
「暗記力を競っている」
それが実情ではないでしょうか?
■一行も読まずに
もちろん変わってきているのでしょうが、あまり大差がないことも事実。
興味のあるなしに関わらず、教科書をたくさん、
そして正確に覚えた子供が
“優秀”
の刻印を押されるようになっている。
大学入試のための「文学史」はその際たるもので、
一行もその本を読まないのに、
タイトルと年代、作者名のみを丸暗記
させるのですから。筆者もさすがに
“これはおかしい!”
と、受験時代に感じたわけです。
本来備わった能力を引き出すことが学びの本質。
その本質に迫る近道は、
「脳の仕組みを知っておくこと」
そのメカニズムが分かれば、使用方法が分かる。
こうした次第になるわけです。
そこでカンタンに説明してみます。
■未知と既知の遭遇
脳には1000億本を越える
“神経細胞”
がひしめき合っています。
そしてこの神経同士が繋がりあうことで、
新たな技術や知識
は養われていきます。
神経と神経とをつなぐことで新たな能力は培われていく。
神経と神経とをつなぐ役割は、先端部分の
「シナプス」
と呼ばれる部分が担っています。
シナプスとは「つなぐ」というギリシャ語で、これが繋ぎ手となって
“神経と神経とを結んでいく”
のです。
シナプスは1000億本の神経細胞、その一つひとつに
「1万個ずつ」
備わっているといわれます。
総数は「1000億本×1万個」、ものすごい数字になりますね。
学んだことを習得するとは、神経と神経とをつなぐこと。
それはすでに
“知っていること”と“新しい情報”とをつなぐ
ことを意味するのです。
既知と未知とが出会うとき。
そのことで新たな知識は定着し、やがて知恵に至るのです。
■学習とは何か?
でもそのつながりは、あまりにもろい。
細くて頼りない状態だから、そのままでは簡単に切れてしまいます。
習ったことを
「すぐに忘れる」
忘却のメカニズムとは、このつながりの弱さにあるのです。
情報を脳に定着させるのに、必要な習慣は
“反復学習”
です。最低7回の反復がなければ定着しないと考えられているのです。
だから1度聞いただけでマスターできたり、うまく話せるようになったりすることは、
脳の構造上、
「困難!」
といわねばならないのです。
■運命の分かれ道とは?
人間同士も、はじめは何だかよそよそしい。
でもひざを突きあわせていく中で、次第に気心が知れていく。
脳の神経もこれと同じで、繰り返し学ぶことでつながりが強化されていくわけです。
そうか、学習とはそういうものだったんだな。
でも、それなら暗記教育も
「間違っていないのでは・・・?」
と思われるかも知れません。
たしかにそうなのですが、効果的な学習のためには、
“絶対に欠かせないことがら”
があるのです。それが、
「興味」と「目的意識」
この2つが不可欠なのです。
■教え方ばかりが・・・
脳の働きを最大化するためには、興味があって、
しかも目的が明確でなければなりません。
自分はどうなりたくて、
“このことを学ぶのか?”
“どうしてこの学びが必要なのか?”
こうした意識こそが、運命の分かれ道となるのです。
脳の構造を理解し、それに沿って学習を行えば、
自然に備わった本来の
「素晴らしいパワーを発揮!」
してくれるというわけです。
現在の教育現場では
“いかに教えるか?”
ばかりが強調され、
「いかに学ぶか?」
については、ほとんど抜け落ちているのが現状です。
興味があるなしに関わらず、ひたすら膨大な暗記の量ばかりを競っているのが現状です。
無条件に、ただひたすら詰め込んでいるのです。
■道の完成に向けて
「学ぶ」の語源は
“まねぶ”
先人から真摯に学び、それを反復することで独自の世界を切り拓いていく。
日本の伝統芸能ではそれを
「守・破・離」
といった言葉に込めました。
「守」とは師匠の教えを忠実に学び、寸分の狂いもなく稽古を重ねる段階です。
「破」とは身についた技術や知識をベースに独自の改良や工夫を重ねていく段階です。
「離」とは、師匠のもとを離れ、自らその教えを発展させる段階です。
習ったことを徹底的に反復し、自分なりのティストを加え、
教えから独立していく。
そのことで、
“道は完成する”
と伝えられているのです。
反復を旨とし、プロセスを経て旅立っていく。
これは脳の構造からみても無理がない。
極めて合理的な学習方法であることが分かります。
体で覚え込む
知識が知恵に変わる
それはこういう構造だったのですね。
今回は脳の自然な構造について考えてみました。
■自然食業界キャリア15年のOBが綴る