中庸塾剣道教室

中庸塾剣道教室

日本武道館武道学園 講師 太田忠徳範士八段を仰ぎ、2006年(平成18年)中庸(ちゅうよう)塾を開塾。34才から剣道を始め、30年で教士7段を取得。中庸塾新聞社主幹。
表千家茶道を習う。弓道三段、趣味はDIY、樹木剪定、
バイク、本業は彫刻および木目込み人形製造業です。

着装(着こなし)でさすがと思うのは舞踊(歌舞伎 / 能 / etc.)の世界です。
立居振る舞いで着崩れることはまずありません。
さて剣道人はどうでしょう。
まず剣道着は胸元をきちっと合わせます。合わない場合は胸紐の取り付け位置
を付け替えます。
背中のふくらみは袴の脇あけから手を入れて下方向引いてさらによった皺(しわ)も
修正してください。
帯を付けます。
帯はただ巻けば良いのではありません。
腰が安定し、姿勢が良くなり、呼吸が整います。
袴は前下がり後ろ上がりが原則です。
袴の脇あけの部分が前後に吊れるようだと正しい着装とはいえません。
前紐は下腹部からやや水平に後ろに回し、臍下(下丹田を意識)にて右からきた紐を ×
にし右に、左からきた紐を左に × にして交差させ、さらにやや水平に臀部に回し蝶結び
とします。
この × の交差が、激しい所作、一日の所作でも、着崩れないものとなります。

( 男子茶道でこのような結びをする場合があります )
腰板のヘラを最初に回した前紐の間に差し込み、後ろ紐を交差した前紐に絡め通し真結び
に締めます、
その端は両脇の臀部に回した紐と剣道着の間に納めます。
刀を差したとき、二回目にやや水平に臀部で締めた前紐が鞘(さや)を支えて、いわゆる
落とし差しとならないというわけです。
腰板は腰に密着させます。これが体幹を支えるのです。
いい加減な付け方だと正座からの礼で腰板が腰から浮いてしまいます。
袴の長さは、足の踝(くるぶし)または足の甲に付くか付かないかの程度です。
昔の侍は登城する際、袴の裾(すそ)が擦れてしまうため短く付けていたそうですが、
剣道でそれをやると、お子様っぽくなってしまいます。
いつでも、どこでも、誰が見ても、美しい姿でいたいものです。
サムライなのですから!

手の内とは「竹刀の握り方、打突したり応じたりするときの両手の力の入れ方、

緩め方、釣り合いなどを総合したもの」とあります。    (剣道指導要領)

柄の部分に歪み計を挿入した竹刀に見立てたもので手の内の実験をしたものが

あります。

熟練者は振り下ろされた竹刀の速度を有効に生かすため、打った瞬間に右手の

「握り」をゆるめ、左手は逆にしっかりと握り締めています。

そうすることにより、竹刀の並進運動の要素を柄頭中心の回転運動に変え、

切っ先の速度を落とさず打撃力を増しているのです。

このことから手の内はいわゆる茶巾絞りの(タオルを絞るような)状態ではなく、

右手は脱力状態、左手は緊張状態となるようです。

「茶巾絞りのように打て」の教えは、形稽古の場合、紙一重(寸止め)で木刀を

止めなくてはなりません。

そこで振り下ろす速度を急激に落として止めるには両手で木刀をしっかり握り

締めなければならないということになります。( 参考 / 剣道の科学的上達法 / 恵土幸吉 )

真剣での戦乱の世の中であれば、その直後の両の手は硬直し、なかなか柄から

指が外れなかったと言われます。

人を斬ったことはありませんので、巻き藁を切るのとでは精神状態は計り知れ

ないものがあります。

日本の戦乱の世、我が邦、我が家、我が子を守るためとはいえ、サムライはひと

を斬らねばなりません。

大義のためとはいえPDSD ( Post  Traumatic  Stress  Disorder  )

心的外傷的ストレス障害になったサムライもいたのではないでしょうか。

手の内を見せる、手の内を明かすとも言われますが、弓道の左手(弓手ゆんで)

の使い方によってその流派や能力が推察されてしまうため、本来、手の内は見せ

ないということなのです。

剣術でもむかしは ㊙ でした。

手の内を読まれないうちに! 手の内、おわります。

 

 

 

伝達ゲームというものがあります。最初の人があるメッセージを次の人に

耳打ちして伝え、最後の人がどれだけ最初にメッセージを伝えられている

かを発表するというゲームです。

 

日本剣道形解説書(以下解説書)p6 太刀の形、一本目の注(1)には、

「送り足で二歩引くことになる。そのときの歩幅は、仕太刀との間合いに

よって大小があることに注意する。」とあります。

【伝達ゲーム】

よくある間違いが、一歩目は小さく、二歩目は大きく引くというものです。

 

解説書p9 太刀の形、四本目の「相打から互いに刀身の鎬(しのぎ)を削

(けず)るようにして」とあります。

【伝達ゲーム】

そんなに削るのという人がいますが、すうっと中段になってしまいがちです。

削るようになのです。

 

解説書 p11 六本目 打太刀は中段、仕太刀は下段から演武は始まります。

【伝達ゲーム】

弟子の位の仕太刀は師の位である打太刀より先に動くことはありません。

ただし「太刀の形 六本目のみ仕太刀から始動します」ではなく、上記のとおり、 

下段をとってから演武がはじまるのです。

 

解説書 p11 六本目 仕太刀は下段から打太刀の両拳の中心を攻める気勢で

とあります。

【伝達ゲーム】

打太刀の鍔元(つばもと)を押し上げる気勢でといわれる間違いが多いいです。

 

解説書 p13 七本目  仕太刀が十分な気勢で立ち上がってくるのでとあります。

【伝達ゲーム】

よく間違えるのは、すべて主導は打太刀にあるという思い違いです。

そこで、打太刀は仕太刀を引き上げるようにとなってしまいます。

 

解説書 p17 小太刀の形 三本目仕太刀は小太刀の刃部の鎺(はばき)で打太刀

の鍔元(つばもと)を押さえてとあります。

【伝達ゲーム】

最近、仕太刀の鎺(はばき)と打太刀の鍔元(つばもと)の十字形が立十文字

なっているそうです。

なぜなら、仕太刀の鎺(はばき)鍔(つば)だけでは外される危険があるという

ものです。

なぜそのようなことになってしまうかは、普段の形稽古において小太刀の二本目

及び三本目の仕太刀が打太刀の「二の腕を押さえる」「腕の自由を制する」不足

あるいは遠慮?によるものなのです。

 

答えは解説書p18の図解(57)の通りです。

 

さらに、仕太刀に制された打太刀の「右肩が上がって」しまう、または「剣先が

床を向いて死んでしまう」ではいけません。

仕太刀が打太刀の自由を制することが出来なければ、打太刀は仕太刀の「胴を斬る

姿勢でなければならないのです。

 

おわりに、日本剣道形指導上の常識およびルールのお話をします。

 

当事者(打太刀・仕太刀)の指導は原則上位の指導者が当たります。

上位の者が当事者の場合は下位の者が口出ししてはいけません。

但しその上位の当事者に依頼されたひとのみ、助言をお願いします。

指導者は指導されるひとの段階をベースに指導をしているからです。

 

近年、その通りすがりのひとに厳しく注意する先生方がいない。

 

柄短竹刀について

竹刀の柄の長さは右手で鍔元を握り、右肘を直角に曲げた状態で

柄頭が肘の内側あるいは外側にくる程度の長さが適当である。

とあります。(剣道指導要領 p37)

では竹刀の鍔に右手人差し指の届かないひとはどうすればよいので

しょうか?

竹刀の柄皮を外し裏皮に返しカット、糸通し穴をあけタコ糸で結びます。

竹刀は柄側または剣先側あるいは両サイドをバランス良く適度に

カットします。結果、竹刀の柄を30cm程度に詰めるというものです。

現在は柄の短い竹刀(所謂・柄短竹刀)は剣道具店でレギュラーとして

販売されています。

柄短竹刀のメリットは左右の拳(こぶし)が前より近くなり支点あるいは

力点さらに作用点も良くなるということです。

特に「面抜き胴」の技の操作には抜群の働きです。

何故かといえば、もともと面抜き胴の技は、左小手(左拳)を右小手(右拳)

に詰めて(付けて)打つという指導がされているからです。

竹刀は日本刀という考え方からいうと、日本刀を握る左右の拳はさらに近い

ですね。

明治兜割りの演武では左右の拳を付けて振り下ろしたそうです。

弘法(弘法大師)は筆を選ばずといわれていますが、実際には書体によっては

筆を選んだことが分かっています。

筆を使い分け、質のいい筆を選び、用途によって筆を選んでいたそうです。

弘法も筆の誤りとなる前に、自分の筆(竹刀)を使い分けたいものです。

 

 

 

 

稽古の始めには必ずストレッチ体操をします。

ストレッチとは伸ばすという意味ですね。

準備運動としてのストレッチ体操は筋や腱に生じる障害の

予防に役立つものです。

特にアキレス腱では、反動や弾みをつけて運動をするひとが

まだまだ多くいます。

筋には瞬間的に大きな力が加わると反射的に収縮しようとする性質

伸張反射があり逆に危険性を高めることになりかねないのです。

もうひとつは根性のうさぎ跳びです。

むかしの指導者に”うさぎ跳びグランド一周!”などと懲罰的な意味

合いでやらされたひとも多いいのではないでしょうか。

多くの学校で禁止された理由は、正しいフォームでやることが難しく、

筋力や体力の出来ていないひとたちの故障者の多発によるものです。

これに代わりほとんどおなじものが鍛えられるのはスクワットです。

① 浅くしゃがむスクワット

② 深くしゃがむスクワット

③ 深くしゃがんでジャンプするスクワット

10回3セットからいかがでしょうか。

ダイエットスクワット、血糖値の下るスクワット。

いろいろあります。

小手打ちの基本は、相手の剣先が上がったときです。

面打ちの基本は、相手の剣先が開いたときです。

ここで掛かり手の大事なことは、攻めに対する相手の

剣先の変化を捉えた打突ということになります。

ここで指導者が注意しなければならないことは、

はじめから一足一刀の間合いではないということです。

木刀による剣道基本技稽古法では、立ち合いの間合いから

直接一足一刀の間合いに入ってしまいますが、いわゆる触刃の間

(遠い間合い)から攻めて相手の剣先の変化を捉えたいところです。

稽古法は基本技ですから、攻めは次の段階ということなのでしょう。

さて、小手面の受け方です。

元立ちは相手の攻めに対し剣先を上げて小手を打たせ、一歩下がって

剣先を開いて面を打たせます。

一歩下がるということは、その面打ちが元打ち(竹刀の物打ちでない部分・

無効打突)となってしまうからです。

小手を打たせた竹刀の状態のまま下がらない元立ちも多いいですね。

ただ中・高校生の小手面は早い!

元立ちは掛かり手が小手から面にわたるとき自分の竹刀の剣先がフリーとなる

一瞬があります。

そこを捉えて自分の竹刀を開く(右にですね)という竹刀捌きをします。

それがなぜ大事なのかは、実戦の場合、相手の小手不十分。

元立ちの右に開いた竹刀は、相手の左面を決めることができるからです。

元立ちの役割とは、ただ打たせるだけではなく、常に掛かり手とのつながる糸

が切れないようにしなければなりません。

一足一刀の間合いの稽古であれば、掛かり手が面で抜けたあとの振り返る場に

その間合で元立ちはいなければならないのです。

 

 

元立ちの左右面を直接打たす切り返しの指導方法があります。

理由は、掛かり手が元立ちの左右面を正しく打たず、元立ちの

竹刀を打っているということです。

これは逆にいうと、元立ちが掛かり手の打つところの左右面の

部位に竹刀を立てていないということになります。

元立ちは初心者、初級者に大きく引き入れるように打たすのと

同じく左右面の部位に竹刀を立てれば問題ありません。

「元立ち・掛かり手、互いの間合いを考えて」と指導すれば良い

ことではないでしょうか。

さらに、正面と左右面45°のこめかみ部位では衝撃の度合いが

違います。

老若男女、上背、体力の差 etc. 過去には女子の頭蓋骨亀裂骨折

という事故がありました。

また、元立ちに対し青少年の、正面から、左面右面左面右面、下がって、

左面右面左面右面左面の最後の左面は足を効かせてとても痛い!

安心安全の切り返しをしてほしいとおもいます。

切り返しで元立ちの大事なことは、左拳を腰の高さで受けるという

ことです。

そうすれば自分の竹刀の物打ちの部位で受けることができます。

物打ちで受けるということは竹刀操作において特に打ち落とす元立ちの

受け方においては次の動作につながる大事なことなのです。

大体、チャンチャンチャンと左拳は腹、右拳は胸の前の剣士が多いいですね。

掛かり手で大事なことは、元立ちの右面を打つときの手の返しを45°に

ということです。

また、下がるとき、はるか彼方にはなれてしまう剣士も多く見受けます。

勢いですか?! それもある意味大事なことではありますが。 

 

 

 

 

2月の最新号を紹介します。

時代劇などでは時代考証というものが必ず行われますが、

なかなか映像として残されていないため、難しいものが

あります。

サムライが帯刀する場合、まず脇差(小刀)を差しますが、

臍前で刀の鐺(こじり・柄の反対側の先端)をあて帯の外

側から二枚目を探り差します。

次に太刀(大刀)はやはり臍前から帯のいちばん外側を探り

差します。

そうすると脇差と大刀の鞘と鞘が当たらずキズつくことがな

いのです。

帯刀で鐺(こじり)の下った落とし差しとならない方法は、

袴(はかま)を着ける時、前紐をうしろに水平に廻したのち、

前に廻した紐を臍下(へそした)で交差します。

交差した紐はやや水平に臀部(でんぶ)に廻し結びます。

この紐の上部に大刀の鞘(さや)を通すと、それが支えとなり

いわゆる、閂(かんぬき/やや水平/抜きやすい)差しとなるのです。

みなさまは神輿(みこし)タコをご存じでしょうか?

お祭り男の肩にできるタコです。

実はサムライの左腰にもタコがあったそうです。

またサムライの歩き方ですが、現代のように手は振りません。

日本人の歩き方自体がそうだったのです。

これは幕末のフランス式軍事訓錬によって西洋式に矯正されて

しまったからです。

黒澤 明監督の「七人の侍」のサムライの歩き方では数え切れない

N G が出たそうです。

中庸塾新聞最新号からもうひとつ紹介します。

野球やゴルフの素振りと剣道の素振りとでは、

その性質がかなり異なります。

野球やゴルフの素振りでは、実際の動きをそのまま

繰り返すのに対して、剣道の素振りは動きの経過性を

重視して大きく振ることが多く、さらに剣道の場合は

空間で竹刀を止めてしまいます。

竹刀を止めるということは、自動車にたとえると、

どんなに急ブレーキをかけても一瞬で止めることは

できないのです。

空間打突を繰り返すと無意識に打突前に竹刀を減速する

ということになります。

また重い竹刀や木刀で空間打突をすると、

打突直前の剣先のスピードが遅くなる危険があり、逆に

有効なのは軽い竹刀や木刀を用いることです。

このとき大切なのは、軽い竹刀の重さを感じながら振ると

いうことです。

私たちの動きの源は体幹にあり、繰り返す動作は【脳】に

インプットされるのです。

ではどのようにすれば良いのでしょうか?

出来るだけ打ち込み台や打ち込み棒を使えば、竹刀を減速

させることなく実戦に近い打ちとなります。

家で行う場合は、消音の工夫をしてください。

 

早速、中庸塾新聞最新号からの記事を紹介します。

構えた状態で、右手を竹刀から離すとどうなるでしょうか?

左手で竹刀を強く握っているひとはその竹刀が構えたときの

位置から動かなかったと思います。

剣道では、剣先で相手の中心を取ることが重要であるとされて

います。

どうすれば自分の剣先を強くして相手の剣先を押さえることが

できるのでしょうか?

この剣先の強さと竹刀を握る強さには不思議な関係があります。

剣先の強さとは剣先の重さであるということです。

原理を知る簡単な方法は、

はかりに左手で竹刀を握らずに剣先を置くと、針は200~250g

を指します。

逆に、左手で竹刀をしっかり握ってしまうと、針はゼロ近くを

指します。

竹刀は握らない方が剣先の重さを相手に伝えることができるのです。

剣先の強さとは重さなのですね。

左手を緩め、左の肩甲骨も緩め、右手は竹刀に添えてください。

自分の竹刀を相手に、剣先の方向に引いてもらってください。

スーと抜ければ【手の内完成】ということになります。