統合失調(9) | 阿波の梟のブログ

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  • 統合失調症と暴力など
    • 上海交通大学医学院は魚油の摂取と統合失調症患者の暴力行為の減少の関係を報告した[510]
    • 親に暴力を振るった統合失調症当事者の支援者は、暴力が起きる前に、健康的にエネルギーを発散できるように支援することや、親子間の関係調整を行うことで暴力の発生を予防し得ると考えられる[511]。また、暴力の発露は、リカバリーのきっかけになる可能性を秘めていることを視野に入れて関わることが望まれる[511]
    • 日本で2005年から実施されてきた心神喪失者等医療観察法に関する統計によると、心神喪失などの状態で殺人、強盗、重い傷害事件、強姦、強制わいせつ、放火にあたる他害行為をして不起訴、起訴猶予、無罪、執行猶予になり、同制度で処遇を申し立てられるのが全国で年間約360人程度であり、そのうち医療観察法指定入院医療機関で治療を受けることになる者は全国で年間おおよそ240名程度で、そのうち約80%が統合失調症圏とされる[512][513]
    • フィンランドの研究によると、統合失調症の患者が殺人的暴力を行うリスクは、一般人口に比べて男性で8.0倍、女性で6.5倍と報告されている[514][注釈 80]
    • 社会経済的状況が困難な統合失調症の入院患者の67%に、暴力行為の経験があったとされる[515]
    • 若年成人の21%に入院前に暴行もしくは自殺企図があったことが明らかになっている[516]
    • 米国で行われた大規模調査では、統合失調症が大半を占める精神疾患を抱える者の再犯率について、15%が2年以内に有罪判決を受け、6%が暴力的攻撃で有罪となっている[517]
    • 1970年から2009年までに行われた統合失調症患者における暴力や犯罪リスクを扱った20研究(18,423人分)のデータをメタ分析した結果、統合失調症およびその他の精神病では、一般人口に比べて暴力のオッズ比が男性で1から7倍、女性で4から29倍と算出された[518]
    • 統合失調症犯罪者が明確な誘因なく生起した犯罪においては、明らかな質的論理構造変化(思考障害)が存在し、統制の欠如した感情反応性が犯罪生起の間接誘因となっていた可能性が示唆された[519]。また、情性欠如の進んだ群では、発達水準の低さ、衝動性、知的水準の貧困、共感能力の貧困が示唆された[519]
  • 治療抵抗性統合失調症の研究
    • 治療抵抗性の統合失調症患者がクロザピン投与により徐々に幻覚体験や強迫観念に対し距離の取り方を覚え、作業所への通所回数が増加してきている1例を経験した[520]
    • クロザピンの治療継続率は導入1年後 81.7%、2年後 78.6%と高く、クロザピンの服薬アドヒアランスが良いのは治療効果が高く、患者がその効果を実感し、病識も形成されるからと推定される[521]
    • クロザピン治療に関して当事者からは「通院限定型クロザピンモニタリングシステム」創設への期待、治療抵抗性統合失調症についての正確な診断を前提として無効例に関する情報提供を踏まえた上での共同意思決定の重要性、クロザピン治療に関して当事者にもわかりやすい情報提供の必要性が述べられた[522]
    • クロザピン治療は患者も治療者もより多くの労力と覚悟を必要とするため、日本においては適応患者のごく一部である約800症例にしか用いられていない[523]
    • 実臨床で治療抵抗性統合失調症患者が呈する臨床像は、非常に多彩であり経過と共に病像も変化し、また、治療抵抗性統合失調症の診断基準は操作的で、一部の側面への偏重も指摘される[524]
    • 治療抵抗性統合失調症患者の5割以上にドパミン過感受性精神病(DSP)の関与が推定されており、長半減期型非定型抗精神病薬はその安定した体内動態から不安定な陽性症状・易再発性を特徴とするDSPに対して有用である可能性がある[525]
    • ブロナンセリンは、従来の抗精神病薬の中でも非常に強いドパミンD2受容体への結合親和性を持ち、強い抗精神病効果が期待される薬剤であり、治療抵抗性統合失調症患者にも優れた効果を発揮するとの報告も多い[526]
    • ルラシドンは十分な治療期間を確保すれば治療抵抗性統合失調症例に有効である可能性が示唆された[527]
    • 治療抵抗性統合失調症例では、適応されるクロザピンが、依然使用しにくい状況にある本邦においては、とりわけ気分安定薬であるバルプロ酸による増強療法の果たす役割は大きいと推測される[528]
    • 治療抵抗性統合失調症に対する抑肝散の有用性が報告されている[529]
  • 医療観察法医療の研究
    • 医療観察法制度による強制医療では、統合失調症による病識の低さ、治療同盟の構築の困難さもあって、医療そのものが外傷体験として受け止められ、通院や服薬のアドヒアランスを低下させる可能性がある[530]。薬物療法としては治療抵抗性統合失調症であれば、すみやかにクロザピンの適応を検討すべきとされる[530]
    • 医療観察法による強制治療においては、対象者の意味ある作業に着目することは、対象者との関係を構築し、ケアの進展を図るうえで有用であることが示唆された[531]
    • 医療観察法病棟での治療意欲の乏しい対象者に対する作業療法は、専門的多職種チームによる社会復帰に向けた治療の導入部分を担い、作業を介して対象者と関係性を結び、自己効力感を向上させ、主体的な治療への参加を可能にすると考えられる[532]
    • 統合失調症の医療観察法対象者に生活行為向上マネジメント(MTDLP)[注釈 81]を用いて関わり、指定通院医療機関の作業療法士と情報共有し、対象者の就労移行を支援した結果、対象者はやりがいを感じられる仕事に就くことができており、MTDLPの有用性が示唆された[534]

近縁疾患編集

詳細

この節の加筆が望まれています。

  • 統合失調型パーソナリティ障害(旧称:分裂病型人格障害)- 統合失調症の患者の親族に多く、統合失調症の陽性症状に似た状態である。
  • 統合失調感情障害(旧称:分裂感情障害)- 統合失調症と気分障害(感情障害)の症状が合併した場合である。
  • 非定型精神病 - 錯乱があり、意識変容も見られる。症状は激しいが予後はいい。
  • 類破瓜病 - 異常体験や人格崩壊は目立たない。単純型に類似する。
  • 接枝統合失調症 - 知的障害者が統合失調症を発症した場合である。
  • 妄想性障害
    • パラフレニー - 人格崩壊が少ない妄想型である。
    • パラノイア - 妄想型に類似するが、妄想の内容が異なる。悪役のような妄想がある。進んでしまうと悪魔ではないかと思ってしまう。悪魔主義的で支配者でありたいとする激しい気性がある。
    • 敏感関係妄想 - 関係妄想を主症状とし、その原因が患者の敏感性格[注釈 82]にあるもの[535]

脚注

参考文献編集

マニュアル
  • American Psychiatric Association (1980年). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition (DSM-III)..
  • American Psychiatric Association (1987年). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition-Revised (DSM-III-R)ISBN 978-0890420188.(翻訳書は アメリカ精神医学会(著)『DSM-III-R 精神障害の診断・統計マニュアル』高橋三郎訳、医学書院、1988年。ISBN 978-4260117388
  • American Psychiatric Association (1994年). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM-IV)ISBN 978-0890420614.(翻訳書は アメリカ精神医学会(著)『DSM-IV 精神疾患の診断・統計マニュアル』高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳、医学書院、1996年。ISBN 978-4260118040
  • American Psychiatric Association (2000年). Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition, Text Revision (DSM-IV-TR)ISBN 978-0890420256.(翻訳書は アメリカ精神医学会(著)『DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル(新訂版)』高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳、医学書院、2004年。ISBN 978-4260118897
  • Lois Choi-Kain(著)「シゾイドパーソナリティ障害(ScPD)」。Sandy Falk(編集主任)(編)『MSDマニュアルプロフェッショナル版 - The trusted provider of medical information since 1899』(2018年5月版〔初版1899年〕版)、MSD(Merck Sharp and Dohme)、2018年、「シゾイドパーソナリティ障害(SCPD)」頁。2021年12月5日閲覧。
 
臨床ガイドライン
 
医学論文
 
その他