「76歳の思い “良い人間関係” ( アドラー心理学に学ぶ)」
高齢になって思うのは、人間関係とは若い頃よりもずっと“静かな営み”になっていくということだ。怒りをぶつける気力も、競い合う必要も薄れ、ただ穏やかに人とつながりたい——そんな願いが年齢とともに強くなる。しかし、穏やかさは自然に訪れるものではない。自分の心の扱い方を学ぶことで、ようやく手に入るものだと感じている。
アドラー心理学は、「人間の行動にはすべて目的がある」と語る。怒りも、落ち込みも、距離を置くことも、実は自分が望む何かを達成するための“道具”だという視点は、老いた私にも新鮮だった。感情に振り回されるのではなく、その目的を見つめることで、関係は驚くほど軽くなる。
さらにアドラーは、縦の関係から横の関係へと転換する重要性を説く。支配と服従の関係では、怒りや不満が生まれやすい。だが、尊敬・信頼・協力・共感を基盤にした横の関係では、相手を操作する必要がなくなり、心は自然と落ち着く。私自身、家族との関係でこの視点を取り入れてから、会話が柔らかくなったと感じている。
良い人間関係を創るために、アドラーは三つの条件を挙げる。自分を受け入れること。世界を信頼すること。誰かに貢献している感覚を持つこと。 高齢の今、できなくなったことを嘆くより、今日できた小さな貢献を喜ぶ。その積み重ねが、関係を温かくし、人生の後半を豊かにしてくれる。