松村先生はまた前と同じように、スックと立ち上ったまま彫刻師を見据えている。彼は、今度こそはと、十分の構えでジリジリと詰め寄っていった。五間、四間、三間、二間、もうひと息というところで、彫刻師の足はまるで釘づけにされたように止ってしまった。
 そして眼と限が尺寸の聞で激しい気瞬と共に交錯した。
 そして——彫刻師の視線は、松村先生のらんらんと開く眼光に魅入られたように、一瞬光を失った。だが、その松村先生の眼から自分の祝線を外すことができない。もし、一寸でも相手の限をそらしたら、いきなり恐しいものがやってきそうな気がするのだ。絶体絶命だった。
「ヤーッ」

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