「指南はせぬ。第一、お前も空手何某といわれて人に知られた修行者ではないか。今更何必要があって指南を受けようとするのか」
「別に必要はありませんが、北日に聞く先生の御指南ぶりが拝見したいと存じまして——」
 身分が違うので言葉づかいは鄭重だが、当時、那覇、首里を通じて武勇絶倫といわれたこの彫刻師の限には、国主の武術指南役として、当り前なら手合せするなど不可能な松村先生の手の内を、一度見たいという後輩に対するような見下した素振りがあった。激し易い青年松村先生は、それを見てとってキッとなった。

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