「南無三!」とくだんの壮漢が一歩ひき退ろうとした時には、右の手首がグイと先生の物凄い握力で締めあげられてしまったのである。
 壮漢は息も詰る思いで、額から油汗を流している。先生はそれでも振向こうともせず右手を後に廻して、壮漢の右手首を掴むと何事もなかったような顔付で、その家の玄関から勝手知った奥座敷へ通ると、呆気にとられている女中達に酒肴を命じた。

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