「君、突いて見給え」
その人が思い切って突込んでゆくと、その拳をサッとかわすと、一本拳で相手の二の腕を擦り下げ、ピタリと水月(鳩尾)の上に擬した。そのす早いことはまるで神技に近く、その人が身をひく暇はもちろん瞬き一つする暇もない。もし一本拳が紙一重のところで止まらなかったら、当然その人の息の根は止るところであった。
 あとでその人が上衣を脱いでみると、一本拳で擦り下げた痕が紫色になって二の腕に残っていたといわれる。

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