コンサルタント業務に従事していると、
ゆっくりしたピストンの運動を解く場合でも、
「圧縮性流体」機能
を用いて、シミュレーションしようとする人をよく見かけます。
ピストン圧縮運動
おそらく、それでもシミュレーションできますが、
精度も落ちると思われますし、時間もかかりますので、
エンジニアリング的には、間違いです。
まず、圧縮性流体の正しい定義は
マッハ数=V/c (V:流流体の代表的な速度、c:音速)
を用いて、分類されます。
以下の圧縮性の定義より、
遅い流れの中の圧縮現象、
例えば、ピストンの運動がある空気の圧縮現象は
流体は、流体運動によって、流体が圧縮されるのではなく、
外部からの力や運動で、圧縮されているだけなので、
非圧縮性流体として取り扱い、
状態方程式を加味すればよいだけです。
解説:
状態方程式
密度:圧力の関数
例:断熱圧縮の状態方程式
ここに、ρ:密度,ρ0:基準密度,p:圧力,p0:基準圧力
pa:絶対圧力オフセット,
γ:比熱比 (γ=cp/cv:空気なら1.4)
(大気圧からのオフセットなら101,325(Pa))
密度:圧力と温度の関数
例:理想気体の状態方程式
ここに、ρ:密度,ρ0:基準密度,p:圧力,p0:基準圧力
Ta:絶対温度オフセット
(摂氏(℃)なら273.15)
R:気体定数(R=8.31(J/mol・K))
密度:温度の関数
例:ブジネスク近似式
ここに、ρ:密度,ρ0:基準密度,T0:基準温度,T:温度
αp:温度膨張係数
解説:
マッハ数による流体の分類
M < 0.3:非圧縮性流(incompressible flow)
流れによる密度の変化をほとんど考える必要がない。
0.3 < M < 0.8:亜音速流(subsonic flow)
なお、M<0.8の根拠は
流れの中に翼を置いた場合、翼面上に衝撃波が現れる速度領域まで。
0.8 < M < 1.2:遷音速流(transonic flow)
音速前後の流れで、高亜音速と低超音速からなる。
諸量がマッハ数に対して非線形に変化する領域
1.2 < M < 5:超音速流(supersonic flow)
流れ場は線形となり、波動型方程式の解を使って解析される。
5 < M:極超音速流(hypersonic flow)
物体前方にできる弓形衝撃波(bow shock) が物体にかなり近づき、
この衝撃波と物体との間の領域である衝撃層(shock layer)内で、
物体表面から衝撃波に向かって流れの諸量が急激に変化する。
(注)音速については、以下参照