歯が抜けた。
前歯が1本抜けてしまった。
歯抜けになってしまった。
間の抜けた顔になってしまった。
それにしても、歯がたった1本抜けただけで、こんなにも生活に支障が出るとは。
この上なく、不便だ。
人間の体は、ほんの少し何かが欠けただけで、こんなにも不便に、不自由になるなんて、普段何も気にせず生きている人間の傲慢さを痛感している。
たった1本の歯で、大騒ぎだ。
ただ、世の中には、1本抜けたどころか、残りがもはや数本しかないような歯抜けが山ほどいる。
テレビとかで、見かける。
あれだけ歯が無いと、どうやって食事をするのだろうか?
噛まなくても済むものばかり食べているのだろうか?
肉を食べる時はどうしているのか、いや、そもそも、肉を食べるのだろうか?
繊維質の野菜も大変だ、果物も簡単ではない、煎餅とかおかきはどうするのだろう。
歯がない人は、さて、食べることにどんな思いを重ねているのでしょうか。
噛まずに食べると、胃が痛い。
これはよろしくない。
味もよくわからない。
これは、辛い。
体はいたって何事もないのに、食べることがままならぬ。
1本の歯の偉大さをかみしめる。
噛めないけれど、噛んでみる。
また気にせず噛みしめられるのは、しばらく先のお話になりそうだ。