内村光良『金メダル男』 | 空想俳人日記

内村光良『金メダル男』

 著者の内村光良とは、言わずと知れたウッチャンナンチャンのウッチャンである。

内村光良『金メダル男』01 内村光良『金メダル男』02

 以下、本の紹介とともに著者紹介をサイトから。

小学校の徒競走での一等賞をきっかけに始まった「常に一番を目指す」男、秋田泉一。何度失敗しても立ち上がり、あくなき挑戦を続け、思いがけぬチャンスをつかんでいく。その一途な生き方を、高度経済成長期からバブル崩壊を経て平成の今日に至るまで、時代風景と重ね合わせながらユーモアたっぷりに描くエンタメストーリー。

著者等紹介
内村光良[ウチムラテルヨシ]
1964年熊本県生まれ。映画監督を志し83年に上京。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)に入学。南原清隆とウッチャンナンチャンを結成。85年、『お笑いスター誕生!!』でデビュー。現在も数々のバラエティ番組の出演する一方、俳優として舞台・ドラマ出演、また、映画『ピーナッツ』『ボクたちの交換日記』で監督を務めるなど幅広く活動を続けている。

 これ、映画で有名みたいだけど。2011年7月にサンシャイン劇場で上演され大好評を得た、内村光良の一人舞台「東京オリンピック生まれの男」をもとに、内村自身が原作・脚本・監督・主演を務める。


 その原作だよ。読んでみた。
「なんだ、これは。めっちゃ面白いじゃん」。

内村光良『金メダル男』03

 日本中が東京オリンピックに沸いた1964年に長野の塩尻で生まれた主人公は、小学3年生の徒競走一等賞をきっかけに、「絵画コンクール」「火起こし大会」「大声コンテスト」などなど、一等賞を獲ることが生きる糧となるんだよ。 しかも、一度失敗すると、それにとことんこだわらずに、漸進的横滑りして、次なるチャレンジ目標を設定するんよ。
 だから、次々にチャレンジする、体育会系とも文科系ともこだわりのない、チャレンジする次なる目標を読み継いでいくタビに、「なんじゃこれはなんじゃこれはなんじゃこれは」という行進曲が流れてくるのは、ボクだけじゃなかろう。
 読み終えて、はたと、あるページを開いた。そこに書かれているのは、芥川賞や直木賞、ノーベル文学賞を目指すべく書いた『もしも無人島でコモドドラゴンに出会ったら』という小説を小説すばる新人賞や野間文芸賞などあらゆる賞に応募し、みごとすべて落選。そのある章の総評。
《「応募作の中には、無人島の生活を描いたものもあったが、リアリティがまるでなかった」》
 これが、そのままこの本にも言える。いやいや、膝から崩れ下りることなかれ! ボクは、リアリティどうのの前に、「無人島の生活を描いたもの」という、つまり、内容が評した人の記憶に残っているだけでも凄いんではないか、とな。つまり、リアリティなんか、人によってどう感じられるか違うんよ。空想リアリズムもあれば、ノンノンフィクションだってあるんだよ、それだけ、小説は自由なんだよ。だから、この作品は、多くの平穏無事な生活を送るものには「ありえねえ」と思う人もいれば、平穏無事そうに見える人の真の毎日が波乱万丈だったりする人もいるわけよ。
 つまり頑張って生きている人は、頑張っていない人よりも、どんなに浮き沈みが激しくても、生きているわけで、最後に一等賞をめざしたんじゃないけど写真にはまり込んだら、コンテストでグランプリ取ったりするという、ほらフィクションだもんな、じゃない、巡り巡って、心の中に刻まれた多くの経験が生きることってあるもんなんだよ。そりゃ、最後まで、「あかんかった」って人もいるかもしれんけど、結果じゃないことがいつかは分かる日が来るってば。
《光を浴びては闇に落とされ、浮いたと思ったら沈んで、そんなことの繰り返し。》
 光も無ければ闇もない、浮きもしなければ沈みもしない、そんなの「生きてますかあ~。おげんきですかああ~~」。
 それにしても、徒競走に始まり、無呼吸王、小手男爵、火起こし大会、秋の大声コンテスト、体操部、陸上部、高校中間試験、バスケ部、表現部、劇団和洋折衷、自転車世界一周、欽ちゃんの仮装大賞、ピューリッツァー賞、無人島、ダンスコンテスト、漫才グランプリ、歌手、小説家、アクロバットPRショーと、素晴らしい経験値じゃないか。惜しむらくは、例えば、無人島。ルパング島から帰ってきた小野田さんみたいに、講演だけじゃなく、自然塾、無人島塾みたいなのを開講すればよかったのに。

内村光良『金メダル男』04 内村光良『金メダル男』05
内村光良『金メダル男』06 内村光良『金メダル男』07

 あと、時々登場する女性に対する気持ち、いやあ、分かるなア。でも、横井みどりさんの死は、ボクも泣けたよ。小学校の頃から今までのこと、ボクもいろいろ回想しちゃったなア。
 初恋は幼稚園だけど、その子には憧れでほとんど口もきいたことがなかったので、小学1年の時の席が隣の女の子が第二の初恋、つまり真の初恋だったなあ。ボクがアトムのスリッパ履いてたら、どこで見つけたか彼女はウランちゃんのスリッパをはくようになってね、下校するとき一緒に彼女の家の方へ歩いて、その道すがら凄い自慢話して、あり得ない自分を彼女のために造り上げた。後のボクの空想リアリズムの始まりだ。この本の主人公は徒競走で一番になって金メダル男になったというが、ボクは、小学4年だったかな、徒競走でなくマットや跳び箱が並ぶ障害物競走、そこで、マットで前転したら負傷、捻挫で近所の病院に運ばれた。それ以来体育は大嫌いだけど、5年の時、卒業生を送り出す会でリコーダー吹いてたら、先生がボクのリコーダーの前にハンドマイクをずっとね。学校一のリコーダーの名手だった。それから、それから、あとは、自分の心の中で振り返ったよ。自分がこうありたいと思って生きてきた幼少から成年までの間の糧に、沢山の好奇心と沢山の女の子が身近にあったなあ。これだけにしとくね。
 イラストも、昭和っぽっくてステキだよ。


内村光良『金メダル男』 posted by (C)shisyun


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